走り去ってゆく後ろ姿「追いかけてきて」と言ってくれてもこの足が許してくれない。瞼を閉じて、ゆっくり耳を澄ます聞こえてくるのは絶望という悲しき泣き声。その涙を拭ってやれるのはその震えた肩を抱いてやれるのは…。君が崩れ落ちる前に君が粉々になってしまうまえにけれど僕の腕はどんどん腐ってゆく。君にとって必要なのは僕の腕じゃない。君にとって必要なのは僕という存在じゃない。逃げ去ってゆく後ろ姿「助けて」と言ってくれてもこの手が許してくれない。
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