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[5] 帰路、初冬
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寒水石を撒いたような
しんと張った朝を
踏みつけるとき
その音は確かに、
あたしだけのものに
なっているのだけれど

柔らかな雪が
肩に濃淡をつけて
立ち止まってしまいたい、のに、
振り向く前に
外灯を消されたことに
気がついて
慌てて、睫毛にかかる雫を払う

じっとこらえてきた思いは、
吐く息の白さに
まぎらせて
伝えられると、
思った。

袖がじっと重くなるのを
見てられなくて
逃げ出すように、
今日も、また
足音だけを響かせる、帰路

2006/11/25 (Sat)

[4] あの日泣いていたのは
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眠りから覚めると
窓の外には白い海が
ぼんやり広がっていた

胎動にも似た、
列車の揺れと
くぐもった、アナウンス
思わず、瞼を閉じるその奥
夢の残像。

君の言葉は瞬く間に
消えてしまったのに
あの日のヴィジョンが
いつまでも
あたしの眠りを妨げる

泣きたくなったら、おいで
と君は言った、けれど
泣けなくなったら
どうすれば、いい?

冬の海が好きだと笑った
そんな横顔ばかりを
ふいに思い出す、夕刻

2006/10/21 (Sat)

[3] 海の花
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その骨張った
あなたの指で
手折られることを
夢にみながら

鉛色した浅い浅い
海にこの身を
捨つる覚悟

猫によく似た海鳥が
白い花弁に狂う
その前に
どうぞあなたが
手折ってください
ハクモクレンは
さしも知らじな
私の祈り
燃ゆる想いで
姿を変える

群青色の深い深い
君の眠りに風が吹き
白い花弁が
舞い散る
その前に
どうぞ私を
見つけてください

2006/10/18 (Wed)

[1] かえりみち
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自転車、の後ろで
君の温度 抱きしめたら
その優しさが
心拍数 跳ね上げ
信号で止まる、たびに
なぜか泣きたくなった

アスファルトに映る
二つの影を近づけたくて
そっと顔を 傾けたら
頬がシャツに、触れる。
向かい風
見慣れた町並み
すべてが 息を止めた。
風になる、今夜

この溢れそうな気持ちを
余裕の笑顔でかわす
そんな君を、
それでも君を、

この瞬間だけは
背中に、あたしを
感じていて。

風になる、今夜

2006/10/18 (Wed)
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