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minの部屋


[15] 青の王国
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潮音、拡やかな幸福
海の縁に腰かけていた
中埠頭は青くあり
ごうごうと鳴るごとに
背骨のきしむような気がして
足首をさらう水音で紛らせている


波間に叫ぶようなことばを
持ち合わせてはいない
甘く柔らかな舌は
飛沫との混濁に置いてきたの
群青のぬくみが喉笛に達するとき
首を持ち上げるは逆立ちの眼
じくじくと潮が浸みる
塵芥/とプラスティック片の半透明/海鳥に還る様を/それはとても/広大な円を/えがく/えがいて/渦巻い/て/瞼を閉じる/許して呉れます、か


海の果てには
幸福が在りますか
静止し口許のほころび
指先で繕いながら水音をきく
ならばここが いっとう
こうふくな
ばしょ


現像液にひたしたような君が
ゆうらと海に写った
ファンをまわして
ごうごうとした反響に
定着するのを待つ
水面を四角くすくいあげて
ふところに仕舞うことが
正しかったのか、は、わからない
待ちくたびれの、戯れ
忘れてしまうことに酷くおびえていた
許して呉れますか
ことばは何も残せずにいる


海の縁に腰かけていた
コンクリートに踵を擦り付けて
鈍群青の外気と海を混ぜ合わせる
中埠頭は青く在り
ごうごうと鳴るごとに
海鳥の旋回を強くする
潮音、拡やか
幸福の海


2007/10/18 (Thu)

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