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たかし ふゆの部屋  〜 投稿順表示 〜


[1] 何かに包まれる
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優しさなのだろうか
つんとした香りの、視線
泣きすがる母
謝る父

誇らしさではない
優しい香りの花々、しかし誰も愛でようとはしない
誰も、その花の名前など知らない

何故、夜が明けるのか
何故、、朝という希望が来るのか
静寂に包まれてなお、答えは定まらない
静寂に包まれてなお、得ることも出来ない
真夜中の国道
テールランプの波
水のような不確かな世界の中で
繋がり、包まれているという
たしかな優しさ

2015/01/31 (Sat)

[2] 行方
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季節に追い抜かれたあとは
いつも、見失ってしまう
記憶の中でのみ
何かが輝いているのに
目が覚めれば、一年後の未来が来ることに微かな怯えを感じている

風にどよめくシュロの樹の葉
波のさざめき
落日の光景
イルミネーションと、寄り添う恋人たちと、雪
迷い、立ち止まり
ほんの少しだけ前に進む、僕ら

2015/02/02 (Mon)

[3] ニューヨーク三番街
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へこたれない心と、シナモンロールの甘い香り。

2015/02/02 (Mon)

[4] 午後に喪う
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何も知らないようにしていた
知識は邪魔にはならない
しかし
知らないほうがいいことが多すぎる

八重洲口から真っ直ぐ歩くと
本当は、きっと昭和通りをまたがないのかもしれない

世界は変化し続ける
残酷な結果ばかりを見せる
逃げ場なしの万華鏡
グルグルぐるぐる

今しがたすれ違った知らない誰か
いつの日か
知らない人ではなくなるような
代償に、愛のすべてを分かち合った大切な誰かを、忘却へと送る
知らず知らずの間に

世界は廻る
やがて午後が来る

別れた後の静寂と
おぼろ気な彼女の残像
その声の記憶だけで、感じ続ける世界

2015/02/02 (Mon)

[5] トーキョー・スカイ・ウォーカー
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慌ただしさと
喧騒だけが
この街の夜明けを告げる
紺色は薄れ
白みを帯び
曇天になり
限りない青を見せる

目黒川のせせらぎが聞こえるのはいい
五反田
通りの向こう側に
コンクリートの新しさと、始まりという希望

顔さえ知らない誰かの声を追って
東京の空を歩く

鳥の声
伸びきった街路樹の枝先に降り立つ朝

2015/02/19 (Thu)

[6] 偶然の輪廓
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触れた手の感触を覚えているのに
顔を思い出せない
安直な会話だったはずなのに
メールの中身を思い出せない
何故だろう

自作したカクテルの味がイマイチで
メロウソーダと
適当に名前をつけておいた
水槽の中のディスカス
適当な世界に生まれてきた
適当という名の奇跡
あるいは、偶然とも

忘れるのではなく
追体験して折り合いをつけなさいと、誰かが言った
輪廓はとても大事なものなのに
輪廓のままでしか、思い出すことが出来ない
それを
誰かはきっと美しいと言う

無責任な誰かの無責任な言葉が、心を抉る
それはきっと偶然なのだ
この世の大概のものは
ただの偶然の塊なのだ

息をして
吸って、吐いて
偶然、僕らは生きている
まごうことは無い
道の中で出会い、別れたあなた
道の中でこれから出会う、だれか
偶然さ
ただ、人によって価値は違うのだとしても

2015/02/19 (Thu)

[7] ヒッピー讃歌
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音を愛して
歌を愛して
そうやって、楽しんでいるだけなのに
かつて、俺達は犯罪者のように扱われたんだ
オトナは歌謡曲を聞くくせに
ロックはタブーなんだとさ

音楽は偉大だ
旋律の一つひとつに宿る優しさ
平和のためのもの
ただの脱け殻
無心の境地
ただ、それを愛しているだけ
それが、たいていの全て
言いたいことは山ほどあるけれど

俺たちの音楽には何が宿っているのだろう
ラブ・アンド・ピース
たったそれだけだとしても
怒りに満ちた俺たちの歌は
こんなにもちゃんと綺麗なんだぜ

2015/02/19 (Thu)

[9] グラデーション
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遠く
シナモンロールの香りが漂う浜辺で
バラバラになっていた景色を心に刷り込もうとして
上手く行かずに、波の音を聴いている

不完全な円を描き続けて
僕らの色はボヤけて
いつの間にか混ざりあっている
事故のように

騒然と鳴り続ける無名の音楽
未だ鳴りやまない誰かの言葉
この世の全てをわかち合う、赤紫の僕ら
感じる時は、いつも、となり


2015/02/25 (Wed)

[10] 世界の隅のワンダホー
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道外れのマクドナルドで
すれ違った女の子の肩から
何かモヤモヤが溢れていた
伝えたい何かを隠すことで自我を保つ
僕らは、いつも言葉の支払いで何かが足りない

給水塔の上で
世界のすべてを見届けようとする老人の、声ではない声が
遮断機の掻き消すような音さえ飛び越えて
名も無い詩人に届いている
その時に音がする
心から何かがこぼれた時の音に似ていて
世界は、ただ淡く単調さを増していく


世界
片隅のトーテムポール
空の青さ
からっぽのポエット
一握りのワンダホー

七色の言葉たちが
今も世界を漂いながら、




光る

2015/03/03 (Tue)

[11] 雨とブルー
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テールランプが泳いでいるのを、ベランダから、ただ遠目に見ている
今朝がたから降りしきる雨
シーツに染み付いた匂いの主の肌の温度と
冷め行く僕の体温とをグラフにして遊んでみる
ただ、さめざめと雨の音だけがする

安直な夜を安直に過ごした
先週の朝も、確かこんな雨の朝で
その時、僕らは二人でくるまっていて
抱き合ったまま
それぞれ想いに更けていた
何故抱き合うと気持ちが良いのか、
という、つまらない疑問はあっさりと解けた
気持ち良いのは外側でなく
内側から来る体温の温もりなのだ


どうしてこうなったのかを
煙草をくゆらせながら、考える
僕らは、ただ二人でいようとして
それ故に関係がおかしくなって
納得のいかぬまま
僕は激しさを堪えきれず
彼女は想いを伝えきれず
最後に、傘をさしてつつかれた背中の
指の感触だけが残っているのに
もう、彼女の声も顔も、雨のまばらに消えかかっている
雨は洗い流すのではなく
きっと、ボヤかすだけで

ちん、と電話が鳴る
雨と電話の音が鳴り響く中で
僕は受話器に手も触れず
ただ、煙草をくゆらせている
意固地になって、くゆらせている

2015/03/04 (Wed)
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