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クトゥグアの部屋  〜 新着順表示 〜


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詩人:クトゥグア [投票][編集]

あんなに高かった月が
朝方にはもはや消えている

月を隠していたはずの雲が
一杯の酒の間に遠くに流れている

どんなに高く飛んだところで
月の欠片もついばめない鳥たち

檻の中で牙を磨く虎
反射する月は寂しく眩しく

灰色の棺桶の隙間を歩く
夜光虫は今日も月を見上げている

三日月に腰掛けたお姫様
そこじゃ王子様の手は届かない

なんて寒い夜だろう
月まで透き通るほどの空気だ

太陽はお前を気にしちゃいない
月がどれだけ愛そうとも

満月の下に人は皆等しく
密告され囚われ処刑され

俺が月を覗き込む時
月もまた俺を覗いているだろう

2013/10/12 (Sat)

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詩人:クトゥグア [投票][編集]

愛はないと信じていた
今もきっと信じてはいない
誰かの為に生きる事はできないし
俺の為に生きて欲しくもない
数えきれない数の女を抱いても
数えきれない恨みを抱えても
特になんとも思わない
俺はどうやら人間も嫌いらしい
不完全なパーツ探しに手間取り過ぎて
錆びて朽ちた蓄音機のように
取り返しはつかない
ワンミニット33回転と45回転
そのどちらにも収まれなかったら
零れ落ちた難民はどこへ行けばいいのだろう
泣いているのは誰だ?
俺だ
頼りない都会の月の真下で
雨降りの都会の真ん中で
失った物を探す日々です

2013/10/12 (Sat)

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詩人:クトゥグア [投票][編集]

俺の夢は考古学者だった
小3からずっと夢だった
いつかはアンデスの遺跡の発掘に携わるのだと思っていた
でも家は貧乏だった
電気もガスも止められるような
奨学金とバイトだけじゃ大学に行けないと分かった日から俺の人生は死んだも同然
生きる希望もなにもない
結婚して遺伝子を残すつもりもない
それでも親は俺に将来どうするの?と聞いてくる
死んでもいいんだよ別に
必死に守る価値がある人生じゃない
行く道全て糞まみれ
街を歩いて人の波を眺めれば、こいつらの人生はなんて輝いているんだろうと惨めになってくる
だから夜にしか街には近付かない
壊れちまった大切が、俺の道を塞いでいる
この手足の意味を奪うぐらいに重く大きく
どんなに立派な言葉でも
どんなに優しい言葉でも
心の物理は聞く耳を持たない
健全ではない俺の魂よ
いつかどこかへ還るだろう
遠くはない
すぐ側で死神が笑っているなら早く抱きしめてくれよ
後悔はないよ
カーテンを揺らすほどの僅かな風
俺なんて実際にはそんなものだった
煙草の灰まみれの布団さえ気にならない
飯を食ったのは何日前だ?
もうどうでもいい
静かならどこでもいい
俺は俺が嫌いな訳で
耳に手を当てた時に聞こえる心臓音さえ気に食わない
やり直す事も望まない

2013/10/12 (Sat)

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