詩人:宵待ち話 | [投票][編集] |
アイツはきっと分かっていた
私の考えていることを
私の結論である、この黒い部屋のことを
私の出した答えは、拒絶と納得
私は結局のところ
他人のことが分からない
「楽しい」や「嬉しい」だけではなく
「悲しい」や「苦しい」さえ共有できない
もちろん
それは私だけが他の全てと違うのではなく
全てが全て違う
私はその一例に過ぎない
人と人との結合原理は愛という
私は結局のところそれを理解できず拒絶し
拒絶することで
人が人が
YとXが一緒に居るような世界に納得した
アイツはきっと
私のそんな浅さかな考えなんか全てお見通しのくせに
馬鹿みたいに泣き叫んで
私の名前を呼ぶ
だから、やめてくれ
私はもう
この舞台から降りたんだ
もう私の役割など何一つとして無い
それなのに
なぜ
私は歌っているのだろう?
それも自分の為じゃない
馬鹿みたいに私の名前を呼び続ける
アイツなんかの為に
なぜ、この全てを拒絶した黒い箱のなかで
こんなにも
歌うことが出来るのだろうか
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歌が聴こえた
耳を澄まさなければ
逃してしまう程の小さな歌
風に乗って
少しずつ
部屋を満たしてゆく
僕はゆっくりと
なにも考えずに
日常の音に紛れて
微かに
だけど
確かに聴こえて来る
小さなを歌に
心を傾ける
始まりと同じように
小さな歌は唐突に終わり
ある午後に不意に訪れた
とても澄んだ時間が終わった
僕には考えなくちゃいけないこと
考えたいこと
考えたくないことがたくさんあった
けれども
今はまだ
もう少しだけ
この暖かい涙を流していたい
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窓を閉めた
私はもう助からない
なぜなら
私がそう信じているからだ
言葉の上でなら
希望もあるし
それで作った未来だって
見えなくはない
そうさ
絶望なんかしちゃいない
私は私のまま死んでゆく
この部屋を真っ黒に塗ったのだって
私の意志だ
そうしたいから、そうした
私は、それだけで動いている
だから
私は窓も閉めるし
ドアも閉めた
私は死ぬ
そうしたい、と思ったからだ
だから私は助からない
はじめから
何一つ、助けを求めなどしていないのだから
なのに
それなのに
部屋にはアイツが居た
私は私のミスを生涯を掛けて後悔する
窓にも
ドアにも
カギを付けるのを忘れてしまった
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ある晴れた日
ひさびさに窓を開ける
部屋から出て行くのは空気だけで
僕の悩みは一向に出てゆく様子はない
君は何と言っていたか
こんなにも中途半端で
何が中途半端なのかも分からず
悩む僕を見て
君は何と言ったのだったか
言いたいことは無限にあるハズなのに
口に出す勇気もなく
僅かに出した言葉すら
間違っていたかも知れないと
悩む僕を見て
君はどう言ったのか
君の言葉はしっかりと聞いている反面
君の言葉の真意が
どうしても分からなくて
それでも
知ったような顔をする
僕を見て
窓を閉める
白い部屋は途端に静かになる
そのせいか僕の頭の中も静かになる
ああ
思い出した
君は僕を見て言ったんだ
『格好いいね』
僕は少し怒ったフリをしたけど
本当はとても
嬉しかったんだ
次に君が訪ねてきたら
このことを伝えようと思う
どれだけ
言葉に出来るかは分からないけど
何故か
この気持ちだけは
君に伝わるような気がするんだ