詩人:長月 | [投票][編集] |
動かぬ岩に 向かって
流れてゆけ 轟々と
まばたきを する間に
彼と交わり
君の体は 二つに裂ける
再び 自分へと環るとき
君は変わっている
岩は 相変わらず
動かない
詩人:長月 | [投票][編集] |
巻貝に耳をあてれば
血脈が言う
疾く疾く疾く
水平線を見上げれば
月が手招きする
サァサァサァ
重ねても 重ねても
切り取られていく 砂の城
少年の日に 建てた
私の砦
──いいえ、まだ、私は逝かれません。
詩人:長月 | [投票][編集] |
太陽に腰かけたら
ごらん
眼下に広がる 緑の海を
田に舞う 小さな紋白蝶を
あの 美しきものに
押しあいながら 追いすがる 青い波が
僕ら詩人の手のひらだよ
蝶々は 細い指の間を
ちらりちらりと 跳び抜ける
嘲るならば いっそ笑いたまえ
その風にうねる僕たちは 美しい
哀れむならば いっそ泣いて
その雨で潤して欲しいものだ
讃えたいならば 太陽にお願いしてくれないか
空しく手を伸ばす 僕らを
せめて 柔らかく照らして欲しいと
いつか 君と
田に舞う蝶々を 眺めながら
あぜ道を 無心で 歩きたい
詩人:長月 | [投票][編集] |
もみじが一葉 母から ちぎれた
ちっちゃな手のひら うら おもて
時に 旋回しながら
ゆっくり 落ちた
こんな小糠雨の日であったから
踏みしだかれて 泥にまみれた手のひらが
数々 横たわる中へ
ああ あの枝は 悲しかろう
ぼくは 今しがた地についた
その子を拾い上げた
風に揺られて
枝がほうとため息をついた
詩人:長月 | [投票][編集] |
ぼくの いとしい みどりごの
ふっくらと ちいさな てのひら
ぼくよりも ずっと ちいさいのに
やんわりと にぎりしめた きぼうは
ぼくよりも ずっと おおきい
そのえくぼを のぞけば
ぼくと まるでおなじ かたち
なのに まるでちがう みらいが
まちうけているなんて
おもわず 両手で
そっと つつみこんだ
詩人:長月 | [投票][編集] |
きみが あるく
あどけなくも しんこくなかおで
きみにとってそれは
あたりまえなんかじゃない
いっぽずつ 未知へと ふみだすのだから
おそれがないはずは ないのに
きみは ひたむきにしんじている
そして
ゆっくりと あしをだす
ぼくにできることは なにもない
ただ
きみの ゆうきをうけとめよう
きみがころんで おどろいたかおをしたら
そのときは ほほえんであげよう
それは だんじて 失敗ではないのだから
さあ おいで
まずは ここまで
たびは ながいよ
ゆっくり おいで