詩人:明希 | [投票][編集] |
幾重に重なる色彩と
目の前の白いキャンパス
筆には情景を集めて
思うままに絵を描く
それは鉛筆の真っ黒な絵で
かりかりと連ねてく
想いは白と対をなす
「ここにいるよ」
キャンパスは呟く
有言無言の二色の世界
フィルターを経て
ただ一色
見慣れた景色はただ黒く
目に馴染んで居る
一閃
光が零れフィルターは
透けて消える
見落とした色彩の
世界の喘ぎを耳にした
空は青い絵の具で
街路樹は萌葱色に
そうして染めた僕の眼さえ
何色なのかも判らない
筆には情景を集めて
キャンパスには
描く君を有りの侭に
連ねた虹色は果ての夢
知りゆく色は道標
筆が捉えた色彩の名を
漸く僕は覚えていく
下書きの世界に
一筆を重ね々々たならば
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檻に閉じ込められた
鉄格子の柵は
太く冷たく
檻の中は
意外に広ク
シガミツイタ柵を
軸として
半径は3メートル
他は何も見えない‥‥
真っ暗な‥‥‥‥闇しか見えない
小さな小さな名も無き世界
50音は
手枷となり
足枷となり
縛り付けるのか
それでさえ
括られた苦痛なり
それでさえ
縛られた違和感なり
何かに
縛られなければ‥‥
生キテハイケナイノ?
声は
確かに疑問符を投げかけてくる
ある日の僕は
スタンドに立っていた
エンターティナーの居ない
先に向けられたマイクフォンは?
観客の居ない
席に置かれたパンフレットは?
そして僕は壇上に立ち
何かを
叫んだなら―‥?
その声は
確かに響いた
そして音の無い空間に
ぽつり、と落ちただろう
檻の中で
そんな事を考えていた
無力だ、と呟く声さえも‥‥
いつかは音を失ってしまうんだ
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卓越した感情の前に
人は屈伏する
評論や理屈で刻んでも
理性が本能を
根本的に上回る事はない
言葉や音楽は
ある種の魔法だと
そういえば昔誰かがいってたっけ
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手を伸ばすと
届く距離
依存や執着
そんな言葉に
程遠い距離
触れ合えば
キスをして
じゃれ合って
時には 体を重ねて
なんとなく
一緒にいて
それは 幸せさ
儚いと解っていても
好きだと
囁いてみたり
抱きしめてみたり
この瞬間が 幸せ なら
それで十分
だけど
もし君が
僕を好きだったら‥?
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あれも
これも 欲しがり
何でも
望んで 捨てる
弄んで
壊して 何度も
飽きて
繰り返す
そしてまた 欲しくなる
手に入れられぬものを知って
強欲に気付く時に
追い求めるか
諦めるか
それは人次第だけれど
買ったCDの中から
好きな曲を選ぶ時
お気に入りがありすぎて
選ぶ事さえ苦痛だとか
持つ事は
好きな気持は
持たざる者は
好きになれない事は
苦しくて
それでもまだ
何かを望んでる
錯誤する感情が
一瞬の痛みでも
突き刺さる感触は
忘れられない
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くわえた
底入れの端末が
時代の速度を
示すやうに
ジリジリと
音を立てて
形を失いて
足跡を残して
消えてゐった
灰色の空
低い空
指先から昇る
煙は霧の如し
空に浮かぶ
闇雲は
肺をくすぶる
曇らす霧の様
空に同化する
視線の先を
くゆらせた
紫煙と暗黒が
心の憂鬱
見えませぬか
望んでも
望みきれぬ
差は距離と
計るには
遠すぎる
近いものほど
距離はなく
近すぎる所以
手には届かぬ
思ひ出を
比べながら
君を思ふ今日
指先の芸術
灯す朱
御線香
代わりにと
空を見やうて
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クローゼットの奥の暗闇には
怪物が潜んでて
ある筈のない実体に
指先は怯えてる
夜になれば
嫌でも思う事
微かな震えが
思考を拒否する
闇に呑まれぬように
必死で
恐怖を解放すべく
扉を開けた時
何も残らない事実を知り
安堵と共に諦めを知る
慣れを覚える
憎まれない生き方より
いつ殺されるか
怯えていた過去の方が
本当は生きていて
死を想う今日より
死を躊躇ったあの日は
螺旋に絡めとられた
時間の中でも
ずっとずっと綺麗だった
当たり前だと信じてた
明日に裏切られて
ただくだらなく
平和だった一瞬前まで
いつの間にか
持っていた希望は
裏返しになる
対をなした絶望が
「やっぱりな」と
呟いた時には
既に闇の中に居た
いる筈のない怪物は
何故か心に根付いてる
今目の前に居る君が
明日笑ってられる保障はないのに
幸福を信じていたら
失った今日が
とても憎いと思えたよ
身近な誰かでさえ
救えない
そんな想いは
もうこりごりだ,,,
信じる事に怯えて
絶望を愛した
光が怖くなって
闇へ逃げ出した
クローゼットの奥の暗闇には
まだ怪物が潜んでて―‥
ある筈のない実体は
心に巣くって蝕んでいく
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後ろを振り返る時
子宮まで還り
鼓動に合わせて
生きるリズムを知って
まるで酔魔にご寵愛
色魔に犯されて
包んでくれる温度
体温は同じなのに
熱りは肌が知ってる
再生の儀式を繰り返し
心臓まで貫いて
快楽は貪欲に求め
苦痛は極限まで味わって
戻れ 戻れ
時間は戻らないから
廻れ 廻れ
あたしを
時代に託して
アナタが
映したものならば
あたしだって
いつかは
それを見るハメになるのよ
写真に収めたワンシーン
如く
フラッシュバック
嗚呼。
響いてくる鼓動を
身に覚えたなら
それは
此れからも
今迄でも
本能で知っていた事
辿る血脈を
思い出して
余計な考えを失い
芯奥を知る
快楽の果てに
生が始まるのだわ
それを望み悦んで
生まれたのだわ
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白い光が眩しくて、目を覚ました。
それはカーテンの隙間から、そこから覗ける空もまた白かった。
頭痛に見舞われて、手を当てた額から、長すぎる前髪をかきあげて横目に見た姿。
隣に佇む君を一目見て、僕は微笑む。
ただ、それだけの感情でしかないけれど、それ以外を特に必要と思う事もない。
抱える程の裕福より、たった1つ、僕が僕達である為に、かけがえのない何かを、
この手の中で確かに感じてる。
そう、1つあればいい。
他の何かを犠牲にして、取り憑かれても、血を吐いても、僕達には何かは残らない。
その中で
崩れるように流れていく糸をたぐり寄せながら、
天に昇りたいと願いながら、
闇の中で見た光を、点を見据える。
傍らの君は静かだった。
静かに目を覚ました。
僕は喉元にかけた指先に力を込めていく。
何も映さない眼は、僕を捉えてはいないのだろう
でも認識はできていた
その眼を見つめながら、首を絞めた。
辛くとも、涙が出ないから
無抵抗の中、君は苦痛に歪む傍らで微笑ってみせた。
日に陰が差す。
闇の中の白、白の空間に佇む黒。
真っ黒な闇を纏い、歩く僕の頬を
乾いた心を濡らすのは涙ではなくて―――儚い雪だ。
空間はやっぱり白い。
力を失って愕然とする僕を、今度は君が眺めていた。
表情は微笑っていた。
君もまた、かけがえのない存在なんだ
頬に差し出された手に、
僕はようやく涙を流していた事に気付く。
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定まらない翼で空を旋回
くるくる廻る、残影と螺旋律
空を目指したら飛翔
上昇し地上を見下ろす
還る場所は存在しない
空を舞い、混沌を舞う
彷徨う者達
雁字絡めに縛りつけられ
地に膝をつく、空を仰ぐ
項垂れる頭に足枷の鎖
枯れた大地に罅割れた身体
重圧に囚われた大気の牢獄
喚いて呻いて何も残らない