左手首に邪魔な銀色

肌に硬く触れて冷たい

ねえ それを外してよ

胸の音が聞こえないから

帰り道 背中を見ていた

意外にオレンジがよく似合う

振り向いた顔は 影で見えない

笑っていたのかもしれないけれど

誰に愛を囁かれても
あたしは毎日泣いていた

幸せなふりでは拭えなかった
淋しさが いつも胸に沈んで
あたしはやっぱり 独りぼっちで

本当の愛を知らないんだと
みんなが笑ったけれど
もう他人なんて 欲しくはないの

誰にでも抱かれることはできるけれど

もう誰も
愛せはしないよ
信じられはしないよ

どうせ 独りでしかないなら
本当に独りのほうが ずっといい

小さく弱い このぼくが

でかくて強い あいつらに

食べられないようにするには

毒を持つのが 一番かんたん

背筋を伸ばして
笑顔を作って
見苦しくないように

出来るでしょう
我慢しなさい
子供じゃあるまいし

なんでもないこと
それだけのこと
皆が喜んで受け入れる
当たり前のルール
人としてのルール

身なりは清潔に
言葉は美しく
不快にさせないように

迷惑かけないで
やらなくちゃいけないの
そういう決まりなのです

なんでもないこと
それだけのこと
皆が喜んで受け入れる
生きるためのルール
幸せのためのルール

着たくもない服
履きたくもない靴
持ちたくもない鞄

こんなにも惨めなのに
それでいいと褒められて

正義と常識と正常に気が狂いそう
どうしてまともでなくちゃいけないの？

誰かが満たされる為には
誰かが壊れてしまうのに
どうしていつも私が傷つくことが
世界にとって当たり前なのだろう

悲しいことは考えないでいようね

失くしてしまった昨日も
失くしてしまう明日も

止めることなど出来ないから
備えるものなど何もないから

いっぱいお話して笑っていようね
いっぱい抱きしめて幸せであろうね

いつか必ず泣くのなら
いつか必ず死ぬのなら

今は
悲しいことは考えないでいようね

結婚した人もしなかった人も
就職した人もしなかった人も
学歴があった人もなかった人も
みんな首吊って死んじまった

金があった人もなかった人も
資格があった人もなかった人も
能力があった人もなかった人も
みんな飛び降りて死んじまった

才能があった人もなかった人も
美貌があった人もなかった人も
努力した人もしなかった人も
みんな手首切って死んじまった

五体があった人もなかった人も
夢があった人もなかった人も
未来があった人もなかった人も
みんな薬飲んで死んじまった

煙草が好きだった人も嫌いだった人も
アニメが好きだった人も嫌いだった人も
歌が好きだった人も嫌いだった人も
みんな舌噛んで死んじまった

犬が好きだった人も嫌いだった人も
猫が好きだった人も嫌いだった人も
蛇が好きだった人も嫌いだった人も
みんなガス吸って死んじまった

怠惰に生きてた人も
真面目に生きてた人も
傷つけて生きてた人も
傷ついて生きてた人も
愛されてた人も
愛されなかった人も
愛さなかった人も
愛した人も
みんなみんな自分で死んじまった

何を目指しても変えられないなら
何を手にしても止められないなら

生きるために必要なものは何だ


幸せな人生って何？

家がある
食べ物がある
家族がある
恋人がある
友達がある
仕事がある
五体がある
貯金がある
趣味がある
歌がある
毎日笑ってる

今が幸せであれば
死にたいわけがないと
誰が言えるの

明日が見えないことに
絶望なんてしないと
誰が言えるの

自分が幸せであれば
死にたいわけがないと
誰が言えるの

他人を傷つけていることに
絶望なんてしないと
誰が言えるの

彼が傷ついていないと誰が言えるの
彼女が死なないと誰が言えるの

目に見えない患者は見捨てるというなら
あなたも私と同じでしょう

あした幸せになるために

今日泣いてがんばる人間

あしたなんて来ない気がするから

嘘でも今日笑って生きたい人間

この部屋は どうしても私に似ている

臭く 汚れ 腐り 蛆が湧き

変われない、変われないって

泣きながら死んでいく