詩人:さみだれ | [投票][編集] |
思うことはたくさんある
夢はどこに行き着くのか
現実に追いつけはするのだろうか
沈むブルー
いつも境界はない
混ざり合っていくのだ
あなたの目には惑いなく
しかも真摯な心を胸に閉まってある
落ち着きのあるその心を
それはブルー
自分を追いまわし
逃げた道を染めていくのだ
虚ろなる夜はいつもある
いつも知らないふりをした
あなたの心に私はなれないのだから
歩くブルー
境界は無きに等しい
それを見ないうちはまだ
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彼の心に
隠れた魔物が
爪をたてて
何か食べている
甘いのかもしれない
苦いのかもしれない
口をすぼめて
舌を冷やして
彼の心の
廃墟の街に
魔物が一匹
孤独に苛まれ
彼の心に
戸惑うあなた
爪を噛んで
精一杯の思考
"つらいのかもしれない
悔やんでいるのかもしれない
唇を噛んで
手を震わせて"
彼の心の
真っ白なところに
指先が触れそうな
触れられないような
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ずっと会えない
わかっていたなら
もっと愛せていたし
話もしたし
これでいいのだとしたら
あなたはたぶん
十分幸せだったと言うのだろう
続きのない幸せなんて
さみしいのに
あなたはたぶん
一瞬だから大事にできると言うのだろう
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商店街に住んでいた友達は
小学生の頃
隣町へ引っ越した
四人で遊んだ児童館は
今も相変わらずだっていうのに
学校へ向かう途中にある橋
そこから見える何でもない景色が好きだった
水面を並んで泳ぐ鳥や
遠くに見える山や
船がぷかぷか浮いている岸
何もかもが当たり前で
手に届くようで届かなかった
世界はあまりにも不鮮明で
アナログな上に歩けば足が痛くて
そう
毎日帰るのが嫌だった
いつまでだって遊んでいたかった
世界はあまりにも刺々しくて
無機質な上にほんのり温かくて
そう
毎日帰るんだ
いつまでも忘れないと心に決めて
ずっと帰るんだ
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時計仕掛けの男の子は
朝焼けの頃眠りについて
ぜんまい仕掛けの女の子は
伝う涙に錆び付いて
動かなくなりました
天よりのびる光の手が
大地に根を張る季節にも
電池の切れた男の子は
目を覚ますことはありません
海より流れる白い風が
居場所を作れと言うものの
歯車の止まった女の子が
家に帰ることはありません
人が三回生まれ変わろうと
魂はないと決められた彼らが
死ぬことはありません
人がひとりもいなくなっても
魂はないと知らされた彼らが
生きることはありません
時計仕掛けの男の子は
朝焼けを知らず
ぜんまい仕掛けの女の子の
涙は乾かぬままに
宇宙が果てまで膨らみきっても
魂はないと信じ込んだ彼らが
目を覚ますことはありません
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仮面の下に隠した思いなんて
伝わるわけがない
魔法のペンで書いた言葉に
命は宿らない
その心に刺さった針を
見せびらかすばかり
そうして増えた針に
いよいよ身の危険を感じて
いつだってそうだ
肝心なことには見向きもしないで
気の枝を振り回して
楽しいと思わなくちゃいけないと
強迫されてるんだ
さて、ファウストが立ち去ったところで
ようやく舞踏会を再開できる
さぁ、みなさん楽しんでください!
最高の舞台と
最高の音楽
滑稽なるファウストに!
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昼のような喧騒と
夜のような脱力と
風に薫る君の髪のにおいを
書き留めておこう
まだ見ぬ海の向こうに
また太陽が昇っている
胸に抱いた摘みたてのレモン
なくさないようにと
君は過去を思っては
赤い空のふもとで
涙乾かすことも忘れて
揺れる世界を見ていた
僕が夜に生まれたなら
朝まで楽しいお話を
君が昼に生まれたなら
今は眠ってる頃だろう
風が薫る君の夢のなかで
書き留めておこう
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北風は冷たくその身に吹き
あなたは海の向こうに思いを馳せた
豊かな心を刈らすことは
今はよくない
あなたは行かなくてはならない
今日買うべきものを買い
食べたいものを食べ
疲れたら眠らなければならない
不確かな明日のことを追いやって
枯れる前に摘もう
今はまだ美しいままの姿で
飾りつけよう
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夕暮れの町に
忽然と姿を現し
猫に化けて
闊歩するのは
月よりの使者
人は気づかないうちに
心のあり方を書き換えられ
乗っ取られてしまう
その何気ない行動は
支配された証
会話に含まれたそれは
伝染していくだろう
しかしそれは朝焼けには敵わない
目を奪われ
心が分解され
散っていく
人が気づかないうちに
昨日を夢のように思うのは
支配されていた証
心の書き換えによる副作用なのだろう
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剥がれ落ちた鱗
空からでも海からでもなく
人の手を伝っては
虹色の輝きは薄くなり
今ではもう
満月に反射することもなくなった
たくさんの人が嘆く
それはね
たくさんの人に出会ったから
そうやってたくさんの人の思い出になって
鱗は影になったんだよ