詩人:さみだれ | [投票][編集] |
さて
共感したがりのあなた
あなたの心に形があるとすれば
それは他人とはまた違っている
ほんの少しの違いでも同じだとするあなた
あなたの器は大きいのでしょうか
それとも個性を欠いただけでしょうか
あなたは流行り廃りにひどく敏感になりすぎて
ついに個性を失ってしまう
あなたは万人の群れの
同じ色の
たくさんの米粒の
それはもう目立たない
いてもいなくても気にならないもの
そんなあなたに共感しようものなら
私はこれから先あなたと同じ色になってしまう
それだけは死んでもイヤだ!
/境界をなくした
誰かが線を踏んで
かき消したんだ
無理やりひとつになろうと
それはレイプのようなもの
殺人より忌み嫌う
誰かが入り込むんだ
共感共感共感共感共感共感共感共感共感共感共感共感共感共感共感共感共感共感共感共感共感共感共感共感…
ある朝目を覚ますと
隣に猫がいた
黒くて爪の長いやつ
そいつは目を覚まして
"にゃ〜"って鳴く
私はゴロンと背を向ける
背を向けた私の背中に爪を立てる
これは何だろうか
"共感して"と
私に言うように
猫のほうに向く
そして一言「おはよう」とだけ返した
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アホな女
アホな男
アホな老人
アホな子供
アホな犬
アホな金魚
アホなすずめ
アホな神様
頭でっかち雲の上
意識過剰ほしの集団
コンビニ、カラオケ、クラブにホテル
アホな幽霊
物音忍ばせ
真っ赤な電車
終電逃し
朝まで奔走
乗客道連れ
そんなアホなと
血管沸騰
これは恋だと
決めつけました
ダッチワイフが
決めつけました
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つれないね
どこかよそよそしい
黄昏のよう
どこかたどたどしい
波打ち際
スコップがゆられて
君はうつむき
水平線へ
ゆれないね
なんだかぎこちない
ブランコのよう
どこか落ち着かない
街灯の下
ベンチに縛られた
君はうつむき
胸の中
躍る夢を
見られずに
アスファルトの色
涙の色
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私は言う
これが本能なのかしら、と
鏡の前の鏡の中の鏡の自分が
まるで生きている
今に出てきそうなくらい
その息や髪の揺れ
瞳孔、首筋
話してみるとね
すごく優しい
すごく偽善的なの
私はいつ
眠りについただろう
壁の前の壁の向こうで壁の染みが
まるで生きている
蛇のようにとぐろを巻いて
バターのように溶けていく
その時間には
孤独にビクッとする
今まで何時間こうしていただろう
これじゃまるで死んでいる
死んでいるじゃない!
"あなたは一人じゃない"
私はこんなに苦しい時間
悪魔に連れ去られて
ひとり小屋に入れられて
光もなく
音もなく
体温さえわからない
"手をとってくれ"
それは壁から伸びてくるの?
"あなたは素晴らしい"
誰もいない誰のためにもならない
この時間から逃れられない私は
まるで死んでいる
いつか何かに殺されている
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"殺してください"
彼女は懇願した
私の前に跪き
顔を隠しながら
私は死を選ぶ神ではない
まして人殺しができる人間でもない
"殺してください"
なおも彼女は懇願する
何がそこまで辛いのか
生きる希望はないのか
そう問いかけようも
彼女の耳は隠れて
その背は丸くなって
もし私が悪魔だったなら
彼女の願いを聞き入れてやれただろう
"殺してください"
彼女の声はいよいよか細く
やがて嗚咽しながら肩を震わす
私はただ立ち尽くすのみで
彼女の恥を捨てた姿を
見つめるしかできなくて──
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結婚して8年目になる
子供は小学生になり
母は病気で入院する
指輪は棚の奥で静かにしている
妻は以前に比べ料理が上手くなった
上司は禁煙を始める
そしておじいちゃんが死んだ
世界情勢は相変わらず
遠い国で子供が銃を撃っている
ランドセル、筆箱、ノートに運動靴など
この国で子供に与えられるものだ
妻は毎夜家計簿に目を落とし
ため息をついている
結婚して8年目になる
私は何ら変わりない
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夢
限りなく涙を流し
生きている
最も空に近く
最も海が遠い
私の心は漂う
君の心はしかと根を張り
かつて私を連れ去った悪魔
悪魔は私の心をもう捨てただろう
そこは人知れず雨が降り
そこには君がいることだろう
夢
途方もない時間
脈動する魂
輪郭はおぼろげに
触れるには遠い
私の心は止まる
君の心は風に揺れて
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そしてまた
開けたり閉めたり
覗いたり気にしなかったり
人は喜びのときにも
悲しみを思うものです
昔、飛来した知恵によって
人はそれらがどれほど大事なものか知りました
知りました
私はあなたを殺したい
知恵によって
あなたは人間である前に
ロボットです
神様のロボットです
だから敬いましょう
そうしなければ生かしてくれません
ロボットたちは感情を操作し合います
それぞれがリモコンを持っているのです
電池を買うために日々働いているのです
昔、飛来、した
知恵によって
人は喜びを
悲しみを
怒りを
寂しさを
楽しさを
幸福感を
同時にもつ
人はロボットであり
我々は神を敬い
僕らはリモコンを
新しい電池
新しいボタン
働かなきゃ
楽しい
そう生きろ
神様
昔、飛来した
知恵によって
命とは機関であり
感情は同室して
そしてまた
殺したり愛したり
動いたり死んでいたり
人は喜びのときにも
悲しみを思うものです
人は愛しているときにも
裏切るものです
人は呼吸しているときにも
殺されていたりするものです
リモコンによって
あなたはすべてコントロールされています
あなたはすべてコントロールされています
あなたはすべてコントロールされています
あなたはすべてコントロールされています
あなたはすべてをコントロールされています
あなたはすべてをコントロールされています
あなたはすべてをコントロールされています
あなたはすべてをコントロールされています
あなたはすべてをコントロールされています
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春になったら
桜を見に行こう
弁当持って
木の下で食べよう
夏になったら
海に行こう
新しい水着買って
浮き輪も持っていこう
秋になったら
紅葉を見に行こう
少し遠くまで車走らせて
夕暮れまで見ていよう
冬になったら
雪だるまを作ろう
君の背より高いの作って
傘をさして守ろう
その平凡な毎日を
ときどきの季節を
ふたつとない
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魂を後ろ手に閉めた
敬意なんてありゃしない
その仕草
明日に忘れて靴音鳴らせ
羽なんかありゃしない
ふて腐れた
どす黒い唾を飛ばしやがって
クスリでハイになっちまう
この頃天気がすごくいいわ
彼女、話題を探していた
話さなくては生きていけない?
話さなくては呼吸ができない
そして首を絞められた
落日の見果てぬ夢
私は魂を後ろ手に閉めた