詩人:さみだれ | [投票][編集] |
光より遅く
音などは無きに等しく
私は宇宙の外
あなたを知っているけれど
なんにも届かないよ
あなたの伸ばす精一杯の腕では
広すぎて
私の願う幸せでは
広すぎて
星の息づかい
複雑なメロディ
個々の光
その命の尊さを
あなたは臆すことなく
あなたの伸ばす精一杯の腕では
広すぎたけれど
私の願う幸せでは
足りないほど
あなた方は素晴らしい
私は宇宙の外
光に託し
この詩を捧ぐ
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病人が死に
馬鹿が死ぬ
孤児が死に
志願兵が死ぬ
ビジネスマンが死に
大統領が死ぬ
兄が死に
弟が死ぬ
殺人犯が死に
役員が死ぬ
クラスメイトが死に
先生が死ぬ
実験体が死に
助手が死ぬ
天才が死に
教祖が死ぬ
建築家が死に
隣人が死ぬ
若人が死に
漁師が死ぬ
宇宙飛行士が死に
詩人が死ぬ
健康優良児が死に
市長が死ぬ
障害者が死に
キチガイが死ぬ
タレントが死に
子供が死ぬ
移民が死に
画家が死ぬ
そして私たちが死に
その次が死ぬ
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馳せる気持ちはよそに
砂浜に腰を下ろし
海を眺める君こそ
孤独であると言えよう
瓶の中の手紙を読み
人知れず夢を見る
刹那の千を思う君こそ
孤独であると言えよう
世界の果てなどない
そう信じていてなお
沈む日に終わりを見る君こそ
孤独であると言えよう
君は賢くもあり
愚かでもある
息苦しい夜なら
窓を開けて
その目に写るものに
躊躇いなく美しいと感じたなら
君は孤独であると言えよう
君と同じ人がいても
それは変わらない
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あらゆる言葉が嘘
偉い人や
綺麗なもの
"眠たい"
彼女はそれだけ言うと
もうずうっと起きなくなった
空回りした優しさや
それを食っては罵声を浴びせるもの
彼女がずうっと起きていられるほど
楽しい世界じゃないのなら
いらないよ
全然
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私は死んでいる
そう思わなければいけない
プログラムされた
どこかのメガネ野郎に
機械的に
消化されていく毎日
生きて残すものなどない
あるとすれば
あなたを愛さなければいけない
このプログラム
この基板だけ
あ、
風がびゅうっと吹いた
木の葉が囀り
車が走り抜けた
私は信号を送り
右手を動かした
それは風を感じたいと
望んだからだろうか
何とは知らず待っている
冷たい手
私は死んでいる
そんなことを言われた
成長もなく
忘れることもない
少し回路をいじれば
簡単に消える
少し回路をいじれば
簡単に眠れる
ただ自分ではどうしようもない
だって死んでいるから
ああ
それはもしかしたら
ものすごく幸せかもしれない
私が機械化されていないなら
ものすごく幸せかもしれない
なのに
あなたは言う
人間だったらよかったのに
と
私の許容量を
遥かに越えた思想
その回路に代わるものが
あなたには何だとわかるのだろう
私はあなたを愛さなければいけないのに
それが果たせない
私のプログラムでは
それが果たせない
死んでいる
のか
生きている
のか
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砂漠の底
人魚たちが誇らしげに
崇めている蠍
毒の抜けた
優しい蠍
そこは夜明けの世界
夕焼けの郷
セレナーデが終わらず
気球ってやつを
人魚たちは知らない
夢にも見ない
空から出ることは禁じられて
夢にも見られない
そこは失われた世界
ついに歴史を失い
セレナーデが終わらず
まだ
まだ終わらず
私たちは気味が悪いほどたくさんのことを知っていて、それを当たり前だと決めてかかる
太陽があることはもちろん、風や海やコンクリートや
星の位置や食べられるもの
悪いことや良いこと
私たちは気味が悪いほどたくさんのことを知っていて
平然とそれを口にしたり行動に移したり
認識したり
血液の成分や家屋の建て方、友達や世界の広さ
言葉の壁、月があること
私たちは気球ってやつを知っていて
空から出ることもできる
あらゆるものを崇め
あらゆるものが許された
なのに
あの砂漠の底からは
セレナーデが終わらず
ずっと前から
絶え間なく聞こえている
まだ
まだ聞こえている
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君の部屋に
恒温の廃人
毛細血管
潰されてる
窓は開けて
風を通し
夢に野良を
連れてくる
愉快なゲーム
盤上の悪魔
傾く迷路
混沌の最中
君はカセット
伸びたテープ
誰かのせいか
ただ弱いだけか
待ちなよオマエ
変幻のくせに
居座りやがって
宇宙人の話
長々と聞いた
君の脳は
堕落しきって
冥界の門
黄泉比良坂
セールスのチラシ
溜まってる
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くじらがいました
大きくてお腹の白いくじらです
手はふわふわと水をかき
いわしたちはくじらのかげに隠れて
口をあんぐり 呆けていました
くじらのそばには魚がいません
みんな怖くて逃げていきます
くじらはとてもさみしくて
また 悲しくて
太陽が見えないほど
ふかくふかくもぐっていき
わんわん泣きました
岩かげにかくれていたタコは
なんだなんだ!とびっくりして
こっそり顔をだしてのぞきました
大きなくじらが大きな声で
わんわん泣いていたのを見て
タコは長い足を一本だして
くじらの体をなでました
くじらの体はとてもあたたかく
優しい気持ちが伝わってきました
タコはくじらが泣き止むまで
ずっとそうしていました
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蝶は言った
絶望ってどんなもの?と
ある花の
生まれたての種子が
車に潰されたり
土のない地へ飛ばされたり
そうして太陽が照りつけ
小さな旅の走馬灯の終わりに見る夢
その反対だよ
蝶は言った
どこまで行けばいいの?と
どこに行かなくてもいいし
どこに行ったっていい
命がある限り
それは君の自由だ
ある花は行った
別の空が見たい、と
子供たちはスコップで花を掬った
それをバケツにいれて
町中駆けずり回った
帰ってくるなり庭に出て
花をプランターに植えた
蝶は言った
悲しいね、と
ある花は応えた
そうでもないよ、と
私は添えた
生きると言うことは、
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よく生きていたと思う
この異常な脳みそで
よく生きていたと思う
この歪な姿で
よく生きていた
本当に
私は無様です
形、色、音、感性
私は無様です
その他とても美しいとは言えないもの
運命がある
私の海、山、空、町
運命がある
錆びていくアルミニウム
とてもさみしくていい
君の笑顔も、新しい
とてもかなしくていい
よく生きていたんだから
お願いします
私を闇の中に放り込んで
蓋をして、錠をかけ
私の名前を消してください
あらゆる人の正常な脳みそ
その隅に眠る私を
私の名前を消してください
どうかお願いします