詩人:さみだれ | [投票][編集] |
それでは私は毒にまみれて歩くことにします
優しさなどとはほど遠いあなたの手を払い
私は危険物を振り撒き歩くことにします
何せ私は詩人でありますので
そういった生涯を苦く思いもしますが
何せ私は詩人でありますので
高尚な御方にはおよそ検討もつかないでしょうが
何せ私は詩人でありますので
小垂れの薄汚い不恰好なコートは
人を寄せ付けない安心感がありまして
脳がとても冴えるのです
あらゆることが複雑化した時世に
このような因子があっては
あなたにしてみれば邪魔で
目の毒 さあ臨終か
しかしながらあらゆることが複雑化しておりますので
あらゆる複雑な過程を踏んでからでないと
どうしようもないのです
何せ私は詩人でありますので
あなたにお力添えすることはできませんが
何せ私は詩人でありますので
詩を書くことにいたします
良い気晴らしにでもなりましょうか
私の毒は
気を悪くするでしょうか
私の毒も
やはり複雑ですので
さて、
私はこれから詩を書くことにいたします
よければご一緒にいかがでしょう
何せここには詩人しかおりませんので
詩を書くこと以外には何も成せません
少なくとも私は
詩人:さみだれ | [投票][編集] |
人間として当たり前に
私は私の思想を持ちます
人間として当たり前に
あなたはあなたの視野を持ちます
人間として当たり前に
僕は僕の意識を持ちます
人間として当たり前に
君は君の感性を持ちます
人間として当たり前に
俺は俺の価値観があります
人間として当たり前に
あんたはあんたの立場を持ちます
人間として当たり前に
我は我の心を持ちます
人間として当たり前に
汝は汝の魂を持ちます
しかし
人間として当たり前に
お前はお前の理屈を持ちます
が
私たちには意地の悪い野心家でしかありません
悲しみから優しさが生まれるのであれば
あなたにいつか悲しいことが起こりますように
私は人間として当たり前に
何もないところからでも優しくなります
人間として当たり前に
彼らは彼らに愛情を捧げます
”誰かが”ではありません
詩人がいないことを私たちの所為にしてはいけません
人間として当たり前に
私たちは私たちの歴史を考えなければならない
その先のことを
人間として当たり前に
君たちは君たちの信念を持ちます
意思を
純朴を
生死を
憂いを
中和し合うのです
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本当って何
世界の理なんか転がってたっけ
神様になれる思考なんて
神様は持たせてくれなかったのに
本当ってどこで手にはいるの
いつ芽生えるの
知ってることなんて
雀の涙ほどなのに
本当ってあるの
目を凝らしても
見られるものなんて
限られているのに
本当って
誰にでも与えられるの
神様は平等ではないし
いつも自分を見てはいないし
本当って何
どうして本当なの
認められたものだって
怪しいのに
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自分がわからないよね
自分を見ていないものね
他人からも逃げて
一人になってから
”僕が神様だ”
そう言って泣くのね
可哀想ね
だって差し出されるはずだった手が
ないんだもの
助けてほしかった心が
死んでいくんだもの
都合の悪いことは聞かないで
人間でいましょうよ
悲しみより先に伸ばす手こそ
人間の優しさでしょう
妬み蔑み羨む心を
悪いと思わないで
立派な人間になりたいね
神様なんかより
ずっと優しい
この手があるからね
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そぼ降る雨の
涙にも似て
無垢な心に染み入る
その水玉が許せない
あなたの心
いよいよ斑に
一色がいいの、と
自ら染まる
春の世の
望みかそけく
混濁の心に聞き入る
その本質がかき消され
あなたの心
不安に囚われ
知らなければよかった、と
慟哭する
その愚かさが
魂の一柱となり
あなたを成している
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白き月影の
微笑みにも似て
焼けた空を思い
胸を押さえる
あなたの心
まだ願い
ひとりではないね、と
その手をとる
触れる陽光の
微睡みにも似て
さんざめく春の始まり
音が止む
あなたの心
やがてほつれて
幸せになろう、と
たまに思える
その単純さが
魂の片隅にあり
あなたを支えている
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彼はぜんまい仕掛け
ブリキの真似事
音が軋んでも彼女は
油をささない
よくできたカラクリは
長く動いてる
だから僕もきっと
よくできてる
彼女は猫の被り物
自由に生きてる
声をあげたら彼は
餌を与える
とても賢い動物は
長く生きてる
だから私もきっと
長生きできるの
目が覚めたら嫌だ
僕は人間じゃない
よくできたカラクリだ
私は猫でいたい
目が覚めたら最後
二度と戻れない
人間じゃ嫌だ
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ガラスの靴がないわ
誰が隠したの
彼から唯一もらった
大事な宝物
夕べ下駄箱の中に
確かにいれたわ
今日の朝には消えて
ずっと探した
けれどガラスの靴はないわ
誰かが隠したの
彼に知られる前に
見付けておかなきゃ
私は彼が好きよ
彼も私が好き
夕べ確かに言ったわ
"幸せにする"と
ガラスの靴がないわ
誰が隠したの
妬むなら妬むがいいさ
大事な宝物
机の下 引き出し カーテンの裏
全部見たけどどうも
ここにはないわ
今もガラスの靴はないわ
誰も知らないと言う
彼に気づかれる前に
見付けておかなきゃ
私を好きでいるうちに
見付けておかなきゃ
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声が聞こえていました
枕元で囁くそれは
次第に遠くなり
いつまにか聞こえなくなりました
その頃には
夢で夜を見ることも
愛おしいと思うことも
すっかりなくなり
ただ一日の終わりを目指し
生きていました
(私は素晴らしい人間とはほど遠い
ただの野良犬です
嫌なものから逃げて
好きな人に媚びる
ただの野良犬です
この遠吠えは
人間だった頃を思いだし
懐かしさに震えた喉が
夜の闇に引っ張られて生まれたものです
もしも
私の声が夢の途中に聞こえたなら
聞こえないふりをしてください)
気持ちは向いているけれど
心は到達しているけれど
魂はそばに寄り添うけれど
声だけが聞こえません
枕元で囁くような
眠りの詩を
読んでください
一日の終わりに
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星の目を覗きましょう
あなたが無垢であるうちに
うんと遠くを目指しましょう
あなたが希望を持つ限り
月の峠を越えましょう
あなたが歩む強さを知り
下り坂を駆けましょう
あなたが喜ぶ幸せを知り
火星の海を泳ぎましょう
あなたが呼吸を得るために
木星の雲を払いましょう
あなたが自分を恥じぬように
土星の輪にまじりましょう
あなたが他人を怖れぬように
さらに遠くを目指しましょう
あなたが輝く
その星の背へ