詩人:さみだれ | [投票][編集] |
生きることを求めたのは
きっと神様ではない
お母さんでも
近所のおばさんでもない
生きることを求めたのは
最初から最後まで私だったのだと
私の産声をもうみんな忘れたかもしれない
死にたい気持ちを連ねた詩は完全に削除されたのかもしれない
愛する人に与えられた喜びを置いてきちゃったかもしれない
そしてまだ私は失っていくばかりだろうけど
今日誰かが気づかせてくれるかもしれない
生きることを求めたのは
最初から最後まで私だったのだと
みっともないけど
あなたがいなければ
こんなことにも気付けない
そんな偶然が
さりげなく私を支えている今日を
生きたい
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色めく記憶の中に
穏やかな眼差しがあって
さりげない指の動きが
僕の胸をついた
「地球のはしっこが好き」と
君は決まって
夜の終わりに不意に口にする
この瞬間の星がどれほど綺麗だったか
言葉にできれば
声に出せたら
抱きしめたいのに
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凹凸のない大地が
私たちを平等にするのだろうか
嘘偽りない本心が
私たちを豊かにするのだろうか
欠けてしまった悲しみが
私たちを優しくするのだろうか
日を数える暁が
私たちを導いてくださるだろうか
とうに違えてしまった道を
世界は決して正してはくれない
とうに違えてしまった道を
私たちは思い出すばかりで
星がひとつ消えたとて
もう気付けないほどの時が
私たちを酔わせているのだろうか
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するりと指の間を抜ける
理論上の愛
満月の縁を転がり続け
みるみるうちに痩せていく
そして今日
星になった 君が揺れていた
そして今日
君になった 星がからからと笑う
確立された未来
執行される情の処罰
目尻から伝う本心
君の周りを転がり続け
みるみるうちに痩せていく
そして今日
花になった 君が揺れていた
そして今日
君になった 花が涼しげに笑う
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赤く燃ゆる海
漁船の波紋
夏鳥は故郷を求め
長く飛びつづける
うすら紅の頬に
笑窪を浮かべて
風に願わくば
今、凪ぐようにと
私は星よりも軽く
思いはせるばかり
“昨日までの明日“が
今日であればと
防波堤の彼方
揺れてうち消えていく
夜を嫌うように
逆光についぞ消えていく
赤く燃ゆる海
夏鳥は故郷を求め
長く飛びつづけるのに
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あなたが豊かでありますように
気負いなく生きられますように
ただひとつの言葉をもって
あなたが微笑みかけてくれるなら
私はもう去ってもよいのでしょうか
ただひとつの言葉をもって
あなたが手を取ってくれるのなら
私はもう去ってもよいのでしょうか
世界などくだらないと
蔑む背に語りかける
昨日優しくしてくれた人の話
それは完成された
ひとつの世界なのでしょうか
あなたが手を取って
引っ張ってくれた世界を
けれど私はもう去ってしまうのでしょう
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魂は夕暮れに佇む
その影を月が踏みながら
吹く風に靡く草の 道連れにと揺れる
メランコリヤの行く果てに
藍色の空あらば
気を付けていかねばならない
今に目が 闇に追いつかなくなるだろうから
そこに身を伏せて
耳を澄ましてごらん
震えているのがわかるだろう
カタカタカタと 泣いているのがわかるだろう
魂は星となり
それは影を潜めた
冷たい風も帰りたそうに
草を掻き分け急いでいるよ
私を道連れに、と 後ろを付いて歩いたんだよ
幻想交響曲 第五楽章
(過去作)
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夜が好き
この虚無感
何もないとは言い切れない闇のなかで
どうして虚無感を覚えるの
私の放った言葉も
見当たらなくなるのに
どうして不十分な優しさを
私の肺に届けるの
躍動しない
この安心感
私は否応なしに真っ黒い服を着せられて
誰にも触れないように歩くの
ぽつりぽつり雨が降り
誰にも見つからないように雨宿りをするの
街灯を避けて ぽつりぽつり
夜が好き
夢のなかでこの星空が見られたなら
この星空は何のためにここにあるのだろう
絶対ではない不安があって
必要としない悲しさがある
私たちのためにこの星空があるのなら
夢のごと素敵なことでしょう
だから私は さみしいのでしょう
夜が 好き
脳が躊躇うのを
楽しいと感じる不気味な夜が
心が重力に捕まって
動けなくなるのがとてもいい
虚無感のなかにあなたを見つけて
その安心感を否定する
この夜が
心底好きなのです
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私が楽しい詩を書いたなら
それは音楽になるのでしょうね
涼しげに野原を駆ける
夏の風を思い出すのでしょうね
あなたの心が荒んでしまって
耳をふさいで いじけているなら
あの楽しかった無邪気な詩もまた
改行だらけの言葉の羅列
私が真摯に詩を書いたなら
それは音になるのでしょうね
潮騒の途切れた間に
この詩があれば嬉しく思う
恋人たちの足音に
この詩があれば嬉しく思う
あなたが聾唖になった日に
この詩があれば嬉しく思う
私が聾唖になった日に
あの詩があれば嬉しく思う
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空を仰ぐ
飛べない鳥たちは
歩いていくこと
決めていたのだろう
その瞳にうつる
雲の影から
一歩踏み出せば
世界は輝くよ
君の嫌いだった
大きな犬だって
そんな世界を
見ていたんだよ
ここで今 うたおう
君の心から
暖かな光を遮らずに
歩いていく道
探しながら
君の好きだった
あの面影から
見えている今を
思いながら