詩人:さみだれ | [投票][編集] |
深い海の底で
骨になったあなたに寄り添う
私は透明な体で
ふたりしていないもの同士だねって
私だけが笑うの
どこにも行けなくていいよ
どこでだって幸せだよ
そう言っていたあなたの笑顔を思い出して
私の心はひとつ大きく鼓動して
ずっとこの海を波になって泳いでいく
二人の代わりにずっと
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囁いて
赤い空が降ってくるんだ
私を
家がカタカタ泣いて
呪う
誰か明かりを持っている
繰り返し
繰り返し祈ったよ
返してほしいと
願ったよ
タナトスは窓の外
私は笑っている
だからもう
いいんだよね
泥水が
脳を蹂躙して
赤い空は手の届くところへ
手の形は
変わらないよね
みんなと
何も変わらないよね
星がきれい
飲み込んだ主体を
吐いては噛み
飲み込んでは吐く
恋人は笑った
存在はなく
呟く
凪ぎに彼女はいない
呼吸
呼吸
ブレーメンの勇気を
夜明けに
私は
生きているだろうか
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世界が変わるよりも
花が咲くことを喜んでいる
息をしている今を
忘れるほど君を見ている
拙い言葉を海に放とう
浮いてきた言葉を掬い上げよう
そこから選んだものだけで
僕だけの船にしよう
世界が終わるよりも
生まれる奇跡を思っている
声に出せるだろうか
目の前で笑う君を見ている
やわらかい気持ちだけを
両の手のひらに包んだなら
あけ渡す瞬間だけを
二人の世界にしよう
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ただひとり
私は誰を愛する?
脳にマグマが
あの子を溶かす
幸せな事象を
忘れたままに
神様に
すがる豊かなもの
妬ましく
斧を振り割った
ただひとり
彼女は誰?
閉じ込めて
笑うのは誰?
私は信じる
愛の尊さを
幸せになるための
孤独な目論見を
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言葉を持たないままでいられたら
あの女の子はあんなに泣きはしなかっただろう
感情を持たないままでいられたら
きっと世界はこんなに美しくはなかった
私が人であり続けるために
泣いてみればいいのだろうか
私が人であり続けるために
高いところから見える限りの世界を見ようか
そうして知った心は
糸のように細くて
まっすぐに暗闇の向こうまで伸びて
それが唯一無二の
私だけの形だと知って
ようやく生きることができる
言葉を持つことができたから
あの男の子は泣きながら謝ったんだ
感情を持つことが嬉しかったから
ずっと世界は美しくあり続けるんだ
その心を抱きしめていたい
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息もできない時間の海
白い光の泡
海底都市は寝静まったまま
君とひとりぼっちでたゆたう
握る手もない時間の海
一際輝く大きな泡
うねりをあげる潮の中
穏やかに待ち続けている
本当はとてもさみしくて
溺れてしまいたいのに
本当にずっとそばにいたくて
手を伸ばしてみたんだよ
呼吸を覚えた途端
輝く光の泡を追って
足掻いて見つけた夜は
君とひとりぼっちで泣いた
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声にならない叫びが言葉だと知った
夢の夜
雨の中の人は何を見ていただろう
それは僕じゃなくて
僕が拒んだ他人だったのだろう
夢の終わり
声もでない静寂とともに
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世界はひとつじゃない
私はひとつじゃない
だからあなたはそこにいて
そんな風に笑うんだ
ごめんね
なんにもできなくて
まだイキテイルナラ
ふたりで笑おう
ひとつになって
世界にとけよう
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虹色の輪郭に目を輝かせて
ふたりは夜の街の上
手をとり回りながら
滑るように 鳥のように
離れていく 営みの音、光、遠く
夢を見る
虹色の輪のもと
ふたりは夜を追い越して
たどり着く暁闇を前に眠るだろう