詩人:さみだれ | [投票][編集] |
まず卵を割ります
片手で割るとよりいっそう美味しくいただけます
次に砂糖を大さじで適量加えます
甘ければ甘いほど美味しいので"糖尿病にしてやるぜ!"くらいがおすすめです
フライパンに油を
もちろんIHです
熱したら卵を投入します
その前によくかき混ぜておきましょう
何回かに分けて投入すると綺麗な層になります
厚くすればするほど喜ぶでしょう
最後に斜めに包丁を入れて切ります
より厚く見せる演出です
お好みでマヨネーズや醤油をかけてお召し上がりください
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最短距離で家に帰る
その間に彼女はレイプされた
気が狂いそうなほど長い時間
彼女は快楽と憤怒と悲哀と絶望を──
それは10分だ
君たちが次の教科書を出して
友達と他愛のない話をする10分
君たちが喫煙所でタバコをふかしている10分
君たちが夢から覚められず起きるのが遅れた10分
僕が最短距離で家に帰る
その間 わずか10分
彼は飛び降りるだけの勇気を絞り出した
彼女は鏡の前で自分の顔を呪った
どこかの国にミサイルは落とされた
小さな子供が飢えて死んだ
君たちは昼休みまでの時間を気にした
あなたは好きな人と手を繋ぎ歩いた
どこかの宇宙で分子が散った
僕らはフォークダンスのために輪を作った
お前は交通事故に遭い片足をなくした
それは天を仰ぎ手を伸ばした
それは10分だ
私たちは閉じ込められている
時間の檻に閉じ込められているのだ
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彼女の細い指がしなやかに伸びて
猫は顎を引き身構えた
彼女の指は機械のように生気をなくし
止まっていた
それはひどく寒い日のことだった
人類は移住する星を探していた
大気、温度、水
すべて同じというわけにはいかない
しかし、人類は探していた
少しでも可能性があるならシャトルを飛ばした
その結果多くの人が行方不明となった
そして彼はスープを飲む
日常を端から眺めながら
彼の目には忙しく生き急ぐ人たち
その凡庸を嘆いていた
今までができすぎていたんだ
彼だけがただ
私の愛する人は
星の海、その対岸にいる
彼女が何をしているか
どんな気持ちでいるのか
ここにいる私にはわからない
そこに飛び込むだけの勇気が欠けていた
このさみしさを吐露するだけの勇気はあったのに
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私は女という生き物が嫌いです
特にバンドをしてるのは嫌いです
詩を書いてるのも嫌いです
タバコ吸うのも嫌いです
イチャイチャしてるのも嫌いです
馬鹿なふりするのも嫌いです
とにかく嫌いなのです
男も嫌いです
特にチャラチャラしたのは嫌いです
何人の女と寝たか話すのは嫌いです
くさい話をするのも嫌いです
強いのも嫌いです
弱いのも嫌いです
とにかく嫌いなのです
ちなみに犬は好きです
ただあまり吠えられると怖いです
しっぽを追いかけたり
太ももにしがみついてきたり
なんだかわからないけれど
犬だけは好きです
猫は嫌いです
すぐに逃げられます
爪も痛いです
なついてくれません
だから嫌いです
けれど星は好きです
たくさん出てるときはもっと好きです
ひとつでも好きです
見つけられたとき安心するから好きです
海は嫌いです
泳げないから嫌いです
吸い込まれそうで怖いです
私は私を好みません
あなたを好いているからです
私は私を嫌いません
人が嫌っているからです
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"詩人さながら"
頭の中
幽霊たちの酒場
大統領は言うよ
"すべての民に祝福を"
それは詩人さながら
十数人の拍手と票を
チップもまた
屋上で世界を見た
それは神さながら
命をも選べそうな
そう
今夜の晩飯をどうしようか
私はまだ決めていない
だから神よ
一緒に考えよう
"詩人さながら"
精神病のマウスたち
夢まではわからない
ただそこにいて
そうしているだけ
私はあなたなどわからない
恋の悟りなどわからない
人生の辛さなどしったこっちゃない
私は窓越しに
あなたを見ているにすぎない
それ小鳥さながら
衰えた羽は籠の中で広がることはない
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飛び出すバネがない
やわらかい風も
僕の後ろにあるはずの夢、希望、幸せ
君の姿、明日、どこへ
作り出す素材がない
あるはずのものも
君たちが"ない"と言えば
簡単になくなる
僕の後ろにあるはずの夢、希望、幸せ
深い眠りのあとの君の声
生きていく時計しかない
つまらないアラームと
君たちが"ある"と言った
単純なもの
僕には"ない"すごく単純なもの
僕の後ろにあるはずのもの
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世界の終わりはあっけない
つまらないほど淡々としている
生きている者の感情を
ひとつ、ひとつと奪っていく
なぜこんなにも物悲しいの?
この感情もさっさと持っていきなさい
世界の終わりはあっけない
汽車に揺られながら
来ない便りに郷愁も重ね
夜はずっと続くようだった
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衛生軌道上に出現した!
それはまさに神の顕現
私たちの父でもあり母でもある
さあ讃えよ!
私たちはついに救われるのだ!
飢餓、貧困、戦争、汚染
私たちはついに救われるのだ!
さあ跪け!
我らが主に敬意を表せ!
逆らうものは絞首台に
貶すものは断頭台に
私たちは救われるのだ!
飢餓、戦争、汚染、差別
私たちはついに救われるのだ!
神よ!
唯一つあなただけが神であり
私たちの父でもあり母でもある
私たちは讃えます
どうか幸せをお与えください
世界の終わりに希望を!
ついに
私たちは救われた
救われたのだ
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くすんでるぜ
めそめそすんなよ
いい加減顔あげろよ
もったいない生き方すんなよ
くだらないぜ
うじうじすんなよ
目を開けてろよ
"眩しくて眠たくなるよ"
それでいいんだよ
つまらないって言うならさ
楽しいと思える心を
忘れたって言うならさ
それは違うと言うよ
それは作り出したんだよ
つまらないやつがさ
オリジナルを忘れたわけじゃないだろう
あのとき涙を流しながら書いた詩を
"忘れるわけがないだろう"
それでいいんだよ
いいね
輝いてる
そう言われるくらい
お前は頑張れる
きっと
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魂を臆することなくひっぱたいた
世界は目眩のような
曖昧なものに成り下がった
だけどそれも一瞬
ほんの一瞬だった
お前たちは知らない
快楽に喘ぎ苦しむがいい
絶望のぬるま湯に溺れるがいい
見果てぬ夢を恥じればいい
気持ちは高かった
成層圏なんかもう見えないほどに
生物のいない
素敵な夜
この体が意味を持たない
だから死んでも無駄
あなたたちは誰かがいるから死ねる
そうでしょ?
誰かの言葉に傷つき死ぬ
誰かが葬式をしてくれるから死ねる
誰かに愛されているから死ねる
誰かのそばに行くために死ぬ
この素敵な夜
そんなものはない
必要ないんだ
命なんて概念は
魂に鍵をかけた
その鍵を砕いた
見果てぬ夢
世界は目眩のような
夕暮れの光の中