| 詩人:さみだれ | [投票][編集] |
私は言う
これが本能なのかしら、と
鏡の前の鏡の中の鏡の自分が
まるで生きている
今に出てきそうなくらい
その息や髪の揺れ
瞳孔、首筋
話してみるとね
すごく優しい
すごく偽善的なの
私はいつ
眠りについただろう
壁の前の壁の向こうで壁の染みが
まるで生きている
蛇のようにとぐろを巻いて
バターのように溶けていく
その時間には
孤独にビクッとする
今まで何時間こうしていただろう
これじゃまるで死んでいる
死んでいるじゃない!
"あなたは一人じゃない"
私はこんなに苦しい時間
悪魔に連れ去られて
ひとり小屋に入れられて
光もなく
音もなく
体温さえわからない
"手をとってくれ"
それは壁から伸びてくるの?
"あなたは素晴らしい"
誰もいない誰のためにもならない
この時間から逃れられない私は
まるで死んでいる
いつか何かに殺されている
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つれないね
どこかよそよそしい
黄昏のよう
どこかたどたどしい
波打ち際
スコップがゆられて
君はうつむき
水平線へ
ゆれないね
なんだかぎこちない
ブランコのよう
どこか落ち着かない
街灯の下
ベンチに縛られた
君はうつむき
胸の中
躍る夢を
見られずに
アスファルトの色
涙の色
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アホな女
アホな男
アホな老人
アホな子供
アホな犬
アホな金魚
アホなすずめ
アホな神様
頭でっかち雲の上
意識過剰ほしの集団
コンビニ、カラオケ、クラブにホテル
アホな幽霊
物音忍ばせ
真っ赤な電車
終電逃し
朝まで奔走
乗客道連れ
そんなアホなと
血管沸騰
これは恋だと
決めつけました
ダッチワイフが
決めつけました
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さて
共感したがりのあなた
あなたの心に形があるとすれば
それは他人とはまた違っている
ほんの少しの違いでも同じだとするあなた
あなたの器は大きいのでしょうか
それとも個性を欠いただけでしょうか
あなたは流行り廃りにひどく敏感になりすぎて
ついに個性を失ってしまう
あなたは万人の群れの
同じ色の
たくさんの米粒の
それはもう目立たない
いてもいなくても気にならないもの
そんなあなたに共感しようものなら
私はこれから先あなたと同じ色になってしまう
それだけは死んでもイヤだ!
/境界をなくした
誰かが線を踏んで
かき消したんだ
無理やりひとつになろうと
それはレイプのようなもの
殺人より忌み嫌う
誰かが入り込むんだ
共感共感共感共感共感共感共感共感共感共感共感共感共感共感共感共感共感共感共感共感共感共感共感共感…
ある朝目を覚ますと
隣に猫がいた
黒くて爪の長いやつ
そいつは目を覚まして
"にゃ〜"って鳴く
私はゴロンと背を向ける
背を向けた私の背中に爪を立てる
これは何だろうか
"共感して"と
私に言うように
猫のほうに向く
そして一言「おはよう」とだけ返した
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君は夜明け
明星のように
揺らしても落っこちない
ただそこにいて
僕を見てるだけ
たくさんの人の群れ
君に似た人はいない
大好きだったあの心が
雲に隠れて
僕は夕暮れ
水面のプリズム
触れるだけで散ってしまう
ただここにいて
思うだけ
とめどない時間の中で
声が聞こえ続け
忘れてはいけないあの心が
風に流されて
君は真昼の太陽に
僕は真夜中の月に
銀河なんてちっぽけなもの
僕らはそんな遠くない
大好きだったあの心も
枕元に置いて
ただそこにいて
いつかを夢見て
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長い時間をかけて
愛は培われるの?
なら僕にはもう時間がないよ
早く目を覚ましてよ!
瞼を閉じれば
君が見えるんだよ
そうすることで耐えてきたんだよ
星のように見えないところで
生きていられたらって思うよ
それでも僕は星が見たいし
星がなきゃ死んでしまうんじゃないかって思うくらいさみしい
夢が将来のことを指しているんなら
やっぱり君は夢の中だよ
その寝顔をそばで見ることさえ叶わないんだよ
朝日を見ると心が痛んで
帰る場所を見失って
このまま時が過ぎてしまえば
忘れるんじゃないかって!
僕が本当に書きたいのは
夢から覚めた君との現実
ありふれた恋愛を書きたいんだ
それを詩だと自信をもって
君にいつか読んでもらうんだ
君がなんて言うか聞きたいんだ
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この灰からたくさんのおもちゃが出てくるといいな
それがすべての子供たちに行き渡るといいな
意地悪な子も
臆病な子も
病気の子も
わんぱくな子も
これ以上ないくらいの
笑顔を見せてくれよ
その背にたくさんの
宝物を背負っていけよ
君たちは世界一だ
その未来を見せてくれよ
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ジャーヘッドは凱旋し
子供たちはバッジをまじまじと見つめ
君たちはテレビの中に
戦争の終わりを見た
ギター片手に酔いつぶれ
ろくに歌えない愛の詩を書く
表現のない詩と
感情のない音と
君たちはそんなもので
世界は素晴らしいと言う
彼女が鏡を磨くのはなぜ?
きれいな自分を見たいんじゃない
自分とともに何があるかを見たいんだ
神様は野良犬のようだったよ
居場所を与えてもらう相手がいないのさ
君たちは雲の向こうに
楽園があると信じたいだけ
それはとても平和とは言えない
それは愛と呼ぶには残酷だ
君たちは目を開けたふりをして
本当は眠っているんだ
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夢の端っこで
膝を抱えて座っている
チューリップの名札
握っても形は崩れない
あなたは僕を知らない
こんなちっちゃな僕を知らない
この僕に話しかけてごらんよ
きっと泣いて抱きつくぜ
夕暮れに顔もおぼろげになっていく──
あなたは僕の夢のあちこちにいて
僕が見つけるといつもすぐどっか行って
顔は覚えてないけど
なんとなくいつも"いる"ってわかるんだ
きっとあなたは幽霊なんだ
それかただの人見知りだ
目を覚ますと夜になってて
カエルがたくさん鳴いている
近所のおばさんよりも長話だ
ふとあなたがいないかと
部屋の中を見渡した
それから窓を開けたり
昔のことや明日のことを思ったりして
やっぱりあなたは"いない"んだ
騒々しいカエルの宴に
もの悲しさを感じた
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私の目が見えなくなったら
世界は変わってくれる?
僕の詩がつまらないままでも
世界は変わってくれる?
悪意のない平和がほしいと
ヒーローごっこのあと少年は言った
善意のない戦争なんていらないと
大人たちは銃を手に言った
何にもいらないの!
傷だらけの彼女は言うんだ
何もかも与えてほしい!
夢を見る彼は言うんだ
何もかも得られる世界なら
今また少し目が悪くなった
世界は相変わらず騒がしいな
そして相変わらずつまらない詩
それでも世界はちっとも変わらない
ほんの1センチだけ動いてみる
夜の暗闇をゴーゴーと唸る化け物
1分目を閉じて開いてみる
見慣れた窓
その向こうに広がる光明
手を上げて見つめてみる
指の数も長さも変わらない
詩を書く心だけが位置をずらした
それでも世界は変わらない
何一つ変わりない