詩人:さみだれ | [投票][編集] |
銀色の船が月の裏側を通過した
先生は創世記の話ばかりするけど
窓の外では不可思議な未来が語られている
隣の席の子は教科書を忘れて
仕方なく机を寄せあっている
校庭には太陽の使いがやってきて
知らないこと大声で教えてくれてる
僕たちの頭の中には五時間目の小テストのこと
堪りかねて太陽の使いは校庭を焼いてしまった
デパートの屋上付近で
UFOが信号を発した
僕たちの知らない色
隣の席の子は足をバタバタさせているし
先生は黒板にわけわからない持論を書き並べているし
五時間目の小テストのことを考えると胃が痛くなるけど
銀色のちかちかした船には胸が踊るよ
月の裏側には何があるのか
窓を蹴破って見に行きたいね
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男の子は帰ってこない
オレンジの服を着ていたの
それは澄んだ瞳で
世界を旅したいと言っていた
おかしいね
気持ちは雲の上を飛んでいるのに
渡り鳥みたいに楽しそうなのに
女の子はいつの頃だって
青い靴を履いていたよ
これひとつで世界は変わると
アスファルトの上を滑っていた
おかしいね
気持ちはじっと座っているのに
円の中で座っているのに
世界が僕に旅させてはくれないし
君がそこにいても世界は変わらないし
世界はじっとしている
あなたが歩くまでは
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今、夜風にあたり
月光の影であなたの夢を見ています
それは日に当たることのない儚いものです
あなたのことを心にしまい
何事もなければ長い年月を生きていくことになるでしょう
日を追うごとにあなたは幽霊のように
面影となり、忘れられてしまうでしょう
それでも私はあなたをそばに感じ
最後のときまであなたのことを思い出しましょう
どんなことでも
あなたがいるという事実に繋がるのであれば
私は思い出しましょう
今、夜風にあたり
この夢を見ています
どうか心静かに見てください
どうか
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海を渡るためには船が必要で
船を作るためには木が必要で
木を育てるためには雨が必要で
雨を降らすためには雲が必要で
雲を作るためには大気が必要で
大気を保つためにはたくさんのものが必要で
たくさんのものを作るためには神様が必要で
ならどうすれば神様は生まれるのだろう
海を渡るためには渡る人が必要で
渡る人を生むためには神様が必要で
海を渡るためには神様が必要で
神様を知るためにはどうすればいいのだろう
すべては繋がっているはずなのに
伝っても伝ってもわからない
人間は無意識に神様に近づこうとしている
そんな気がする
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煙草をくわえ
逆流する時間をぼんやり見ている
木々は枯れては葉をつけ
枝を落とし
やがて新芽になる
コーヒーの渦は分解され
それぞれがあるべき場所に還る
ただ煙草をくわえ
その異常さを疑いもせず
そう他人事のように
あるいは時空間の神のように
また始めればいいさ
気が遠くなる年月を
無限ほどにある一瞬を
また始めればいい
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夜には泣いていいと
誰かが言っていた
そして流れた涙が
チカチカ光だして
人ははじめて永遠なんてないんだと知る
あの星だって
そのうちなくなってしまう
でもただなくなるんじゃなくて
生まれ変わるんだろう
この涙も
明日の朝には渇いて
見えなくなってしまう
永遠なんてないはずなのに
永遠に続くようなこと
一瞬でしかないはずなのに
永遠に続くようなこと
変わらずにありたいと思うこと
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例えば私がここにいないとして
あなたは声が出るのを堪えて泣くだろうか
私のことを何もかも忘れてしまっても
おぼろげな私を信じてくれるだろうか
あなたはそんな世界を生きてくれるだろうか
例えば私がここにいないとして
私はあなたに何ができるだろうか
声をかけることも触れることもできず
あなたの悲しみを感じていると信じ込むことしかできない
あなたは目に見えるものを愛しているだろうか
私は思うよ
いつかこの感情や視界
風のにおい
あなたの生きる世界
その境界
または向こう側
私は思うよ
あなたの尊さを
その素晴らしさを
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死ぬことは怖い
じゃあ生きてることは?
何食わぬ顔でテレビを見ているあなた
あなたの瞳には死者のテロップが流れる
死ぬことは怖い
それをあなたは思い出してる?
あまりにも感覚がないものだから
死んでいるんじゃないだろうか、と
これっぽっちも疑わなかったから
生きているんじゃないだろうか、と
それでいいんだよ
ただたまに思い出してほしいだけだよ
生と死は仲良く
あなたの隣に寄り添っている
それの手を握ってあげてほしいんだよ
死ぬことは怖い
だからこそ生きようとする努力をやめてはいけないし
今を大切にしなきゃいけない
あなたが死ぬことを怖れているなら
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少しずつ陽は落ちていき
あなたの表情も曖昧に
つられて笑ってみたけど
あなたは頬を膨らませていた
気持ちは前のめりに
襟を引っ張られて転ばずに
世界はこんなに広いのに
目の前の石ころを気にしなきゃならない
暗くならないうちに
晩御飯の買い物を
暗くならないうちに
あなたの好きなものを作ろう
私は未来を夢見
あなたはそれをやめた
今日感じることを
明日には感じられない
夜と呼ぶには明るすぎ
あなたは瞳から光を失う
目に見えて信じられる今を
私は大事にしなきゃならない
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三日月のように
ひっそりと
朝を待たずに暮らそう
お気に入りの星を
週に一回決めて
あとはあれこれ星座を作ろう
シリウスのように
互いの重力を
近づきすぎず
かつ離れすぎないように
衛星からは見えない
「町の明かりに埋もれた私たちを
見つけることができないんだね
ここだよーって手を振ったら
喜んでくれるかな?」
満月のように
明々と
朝を待ちわびて君は眠る
青い蠍の目は
暗がりに衛星を見つけ
衛星は軌道を逸れず
君を見ている
太陽に目を向けた
君を見ている