詩人:さみだれ | [投票][編集] |
今、夜風にあたり
月光の影であなたの夢を見ています
それは日に当たることのない儚いものです
あなたのことを心にしまい
何事もなければ長い年月を生きていくことになるでしょう
日を追うごとにあなたは幽霊のように
面影となり、忘れられてしまうでしょう
それでも私はあなたをそばに感じ
最後のときまであなたのことを思い出しましょう
どんなことでも
あなたがいるという事実に繋がるのであれば
私は思い出しましょう
今、夜風にあたり
この夢を見ています
どうか心静かに見てください
どうか
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海を渡るためには船が必要で
船を作るためには木が必要で
木を育てるためには雨が必要で
雨を降らすためには雲が必要で
雲を作るためには大気が必要で
大気を保つためにはたくさんのものが必要で
たくさんのものを作るためには神様が必要で
ならどうすれば神様は生まれるのだろう
海を渡るためには渡る人が必要で
渡る人を生むためには神様が必要で
海を渡るためには神様が必要で
神様を知るためにはどうすればいいのだろう
すべては繋がっているはずなのに
伝っても伝ってもわからない
人間は無意識に神様に近づこうとしている
そんな気がする
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煙草をくわえ
逆流する時間をぼんやり見ている
木々は枯れては葉をつけ
枝を落とし
やがて新芽になる
コーヒーの渦は分解され
それぞれがあるべき場所に還る
ただ煙草をくわえ
その異常さを疑いもせず
そう他人事のように
あるいは時空間の神のように
また始めればいいさ
気が遠くなる年月を
無限ほどにある一瞬を
また始めればいい
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夜には泣いていいと
誰かが言っていた
そして流れた涙が
チカチカ光だして
人ははじめて永遠なんてないんだと知る
あの星だって
そのうちなくなってしまう
でもただなくなるんじゃなくて
生まれ変わるんだろう
この涙も
明日の朝には渇いて
見えなくなってしまう
永遠なんてないはずなのに
永遠に続くようなこと
一瞬でしかないはずなのに
永遠に続くようなこと
変わらずにありたいと思うこと
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例えば私がここにいないとして
あなたは声が出るのを堪えて泣くだろうか
私のことを何もかも忘れてしまっても
おぼろげな私を信じてくれるだろうか
あなたはそんな世界を生きてくれるだろうか
例えば私がここにいないとして
私はあなたに何ができるだろうか
声をかけることも触れることもできず
あなたの悲しみを感じていると信じ込むことしかできない
あなたは目に見えるものを愛しているだろうか
私は思うよ
いつかこの感情や視界
風のにおい
あなたの生きる世界
その境界
または向こう側
私は思うよ
あなたの尊さを
その素晴らしさを
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死ぬことは怖い
じゃあ生きてることは?
何食わぬ顔でテレビを見ているあなた
あなたの瞳には死者のテロップが流れる
死ぬことは怖い
それをあなたは思い出してる?
あまりにも感覚がないものだから
死んでいるんじゃないだろうか、と
これっぽっちも疑わなかったから
生きているんじゃないだろうか、と
それでいいんだよ
ただたまに思い出してほしいだけだよ
生と死は仲良く
あなたの隣に寄り添っている
それの手を握ってあげてほしいんだよ
死ぬことは怖い
だからこそ生きようとする努力をやめてはいけないし
今を大切にしなきゃいけない
あなたが死ぬことを怖れているなら
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少しずつ陽は落ちていき
あなたの表情も曖昧に
つられて笑ってみたけど
あなたは頬を膨らませていた
気持ちは前のめりに
襟を引っ張られて転ばずに
世界はこんなに広いのに
目の前の石ころを気にしなきゃならない
暗くならないうちに
晩御飯の買い物を
暗くならないうちに
あなたの好きなものを作ろう
私は未来を夢見
あなたはそれをやめた
今日感じることを
明日には感じられない
夜と呼ぶには明るすぎ
あなたは瞳から光を失う
目に見えて信じられる今を
私は大事にしなきゃならない
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三日月のように
ひっそりと
朝を待たずに暮らそう
お気に入りの星を
週に一回決めて
あとはあれこれ星座を作ろう
シリウスのように
互いの重力を
近づきすぎず
かつ離れすぎないように
衛星からは見えない
「町の明かりに埋もれた私たちを
見つけることができないんだね
ここだよーって手を振ったら
喜んでくれるかな?」
満月のように
明々と
朝を待ちわびて君は眠る
青い蠍の目は
暗がりに衛星を見つけ
衛星は軌道を逸れず
君を見ている
太陽に目を向けた
君を見ている
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愛しているからこそ
胸が裂けるほどの寂しさを覚えるのでしょう
大切だからこそ
なくなったときの悲しみは
悲しみと呼ぶには優しすぎるのでしょう
必要だからこそ
絶えずその目に映したいと思うのでしょう
恋というものは過程に過ぎないのです
完成しようと一人努力するものです
愛というものは霞んではならないものです
見失ってからではもう遅いものです
信じているからこそ
肌に感じるほどあなたが近いのでしょう
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心は鉛色の谷を見下ろし
今に砂漠の風に背を押されんとしている
あなたはひたすらに無垢であり
私の手を取って心から支えてくれる
魂が黄金の海原に流され
二度と帰らないその時まで
清められた小川を傍に
遠くからはコムメルシの音楽が聞こえる
心は掬い上げた水を口にし
いよいよ銀色の渡し舟が目の前に現れる
あなたは谷を渡るため
最後の手助けを私に施してくれたのだ
あなたのみが持ちうる私への心が
脈をうち、さらに深く呼吸する
銀色の舟は心をあの時の街まで誘い
そしてあなたはそこにいて
しかも私を抱きしめ
小さく微笑みかけてくださる
待ち人は帰った!
あなたのいるそこへと帰ったのだ