| 詩人:さみだれ | [投票][編集] |
お楽しみ会
椅子とりゲーム決勝戦
ファイナリストの少年は
集会のときいつも先頭だった
少年は給食の牛乳を残さない
それなのに整列のたび腰に手をあてていた
その日少年はツいていた
三十人の猛者どもを蹴散らし
死闘の果てにたどり着いた椅子
その椅子はおそらく近い未来博物館に飾られることになる
決戦の場に似合わず
軽快な音楽が流れる
始まった
少年は相手の動きを窺った
視線、間合い、息づかい、
嵐の前の静けさか
ギャラリーは固唾を飲むことも躊躇われる緊張の中にいた
少年は思う
この戦いの果てに何があるのだろうか、と
少年は無駄な思考を叩きだし、集中した
"考えるんじゃない!感じるんだ!"
学校側の理不尽な扱い(集会の件)が走馬灯のように
そしてその先にあるものを少年は見た
そのとき少年は初めて無我の境地へと達した
ピタッ
まさに一瞬の出来事だった
光のごとく神速で誰も終わったことをすぐには認識できなかった
そう、ただひとりを除いて
栄光の玉座に腰を据えた少年はまさに王と呼ぶにふさわしい貫禄を見せつけていた
祝福と賛辞の中先生は言う
「背の順に並んでくださーい!」
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彼はギターを弾いた
左手は踊るように
右手をリードした
ホールにいる連中は
宇宙をさ迷っている
"あいつは本物だ!"
ブロンドの男は指差し叫んだ
彼はそれに見向きもせず
壁に張られたインディーズのポスターを
じっと見つめていた
ロックンロールは転じて
自己の破壊を意味する
彼もまたそうだった
彼の頭は名声と薬でヤられていた
ホールにいない連中は
きっと悪態をついている
"あいつはイカれてる"
眼帯をした女は中指をたてた
彼はそれに気づきもせず
最後のリフを決めた
彼のステージには
誰も上がることができなかった
彼を愛した少女は
父の書斎で見つけた38口径を彼に向けた
ホールにいる連中は
彼に釘付けだった
"私を見て"
彼はギターを弾いていた
細くしなやかな指で
人々を魅了した
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銀色の船が月の裏側を通過した
先生は創世記の話ばかりするけど
窓の外では不可思議な未来が語られている
隣の席の子は教科書を忘れて
仕方なく机を寄せあっている
校庭には太陽の使いがやってきて
知らないこと大声で教えてくれてる
僕たちの頭の中には五時間目の小テストのこと
堪りかねて太陽の使いは校庭を焼いてしまった
デパートの屋上付近で
UFOが信号を発した
僕たちの知らない色
隣の席の子は足をバタバタさせているし
先生は黒板にわけわからない持論を書き並べているし
五時間目の小テストのことを考えると胃が痛くなるけど
銀色のちかちかした船には胸が踊るよ
月の裏側には何があるのか
窓を蹴破って見に行きたいね
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男の子は帰ってこない
オレンジの服を着ていたの
それは澄んだ瞳で
世界を旅したいと言っていた
おかしいね
気持ちは雲の上を飛んでいるのに
渡り鳥みたいに楽しそうなのに
女の子はいつの頃だって
青い靴を履いていたよ
これひとつで世界は変わると
アスファルトの上を滑っていた
おかしいね
気持ちはじっと座っているのに
円の中で座っているのに
世界が僕に旅させてはくれないし
君がそこにいても世界は変わらないし
世界はじっとしている
あなたが歩くまでは
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今、夜風にあたり
月光の影であなたの夢を見ています
それは日に当たることのない儚いものです
あなたのことを心にしまい
何事もなければ長い年月を生きていくことになるでしょう
日を追うごとにあなたは幽霊のように
面影となり、忘れられてしまうでしょう
それでも私はあなたをそばに感じ
最後のときまであなたのことを思い出しましょう
どんなことでも
あなたがいるという事実に繋がるのであれば
私は思い出しましょう
今、夜風にあたり
この夢を見ています
どうか心静かに見てください
どうか
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海を渡るためには船が必要で
船を作るためには木が必要で
木を育てるためには雨が必要で
雨を降らすためには雲が必要で
雲を作るためには大気が必要で
大気を保つためにはたくさんのものが必要で
たくさんのものを作るためには神様が必要で
ならどうすれば神様は生まれるのだろう
海を渡るためには渡る人が必要で
渡る人を生むためには神様が必要で
海を渡るためには神様が必要で
神様を知るためにはどうすればいいのだろう
すべては繋がっているはずなのに
伝っても伝ってもわからない
人間は無意識に神様に近づこうとしている
そんな気がする
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煙草をくわえ
逆流する時間をぼんやり見ている
木々は枯れては葉をつけ
枝を落とし
やがて新芽になる
コーヒーの渦は分解され
それぞれがあるべき場所に還る
ただ煙草をくわえ
その異常さを疑いもせず
そう他人事のように
あるいは時空間の神のように
また始めればいいさ
気が遠くなる年月を
無限ほどにある一瞬を
また始めればいい
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夜には泣いていいと
誰かが言っていた
そして流れた涙が
チカチカ光だして
人ははじめて永遠なんてないんだと知る
あの星だって
そのうちなくなってしまう
でもただなくなるんじゃなくて
生まれ変わるんだろう
この涙も
明日の朝には渇いて
見えなくなってしまう
永遠なんてないはずなのに
永遠に続くようなこと
一瞬でしかないはずなのに
永遠に続くようなこと
変わらずにありたいと思うこと
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例えば私がここにいないとして
あなたは声が出るのを堪えて泣くだろうか
私のことを何もかも忘れてしまっても
おぼろげな私を信じてくれるだろうか
あなたはそんな世界を生きてくれるだろうか
例えば私がここにいないとして
私はあなたに何ができるだろうか
声をかけることも触れることもできず
あなたの悲しみを感じていると信じ込むことしかできない
あなたは目に見えるものを愛しているだろうか
私は思うよ
いつかこの感情や視界
風のにおい
あなたの生きる世界
その境界
または向こう側
私は思うよ
あなたの尊さを
その素晴らしさを
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死ぬことは怖い
じゃあ生きてることは?
何食わぬ顔でテレビを見ているあなた
あなたの瞳には死者のテロップが流れる
死ぬことは怖い
それをあなたは思い出してる?
あまりにも感覚がないものだから
死んでいるんじゃないだろうか、と
これっぽっちも疑わなかったから
生きているんじゃないだろうか、と
それでいいんだよ
ただたまに思い出してほしいだけだよ
生と死は仲良く
あなたの隣に寄り添っている
それの手を握ってあげてほしいんだよ
死ぬことは怖い
だからこそ生きようとする努力をやめてはいけないし
今を大切にしなきゃいけない
あなたが死ぬことを怖れているなら