| 詩人:さみだれ | [投票][編集] |
三日月のように
ひっそりと
朝を待たずに暮らそう
お気に入りの星を
週に一回決めて
あとはあれこれ星座を作ろう
シリウスのように
互いの重力を
近づきすぎず
かつ離れすぎないように
衛星からは見えない
「町の明かりに埋もれた私たちを
見つけることができないんだね
ここだよーって手を振ったら
喜んでくれるかな?」
満月のように
明々と
朝を待ちわびて君は眠る
青い蠍の目は
暗がりに衛星を見つけ
衛星は軌道を逸れず
君を見ている
太陽に目を向けた
君を見ている
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愛しているからこそ
胸が裂けるほどの寂しさを覚えるのでしょう
大切だからこそ
なくなったときの悲しみは
悲しみと呼ぶには優しすぎるのでしょう
必要だからこそ
絶えずその目に映したいと思うのでしょう
恋というものは過程に過ぎないのです
完成しようと一人努力するものです
愛というものは霞んではならないものです
見失ってからではもう遅いものです
信じているからこそ
肌に感じるほどあなたが近いのでしょう
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心は鉛色の谷を見下ろし
今に砂漠の風に背を押されんとしている
あなたはひたすらに無垢であり
私の手を取って心から支えてくれる
魂が黄金の海原に流され
二度と帰らないその時まで
清められた小川を傍に
遠くからはコムメルシの音楽が聞こえる
心は掬い上げた水を口にし
いよいよ銀色の渡し舟が目の前に現れる
あなたは谷を渡るため
最後の手助けを私に施してくれたのだ
あなたのみが持ちうる私への心が
脈をうち、さらに深く呼吸する
銀色の舟は心をあの時の街まで誘い
そしてあなたはそこにいて
しかも私を抱きしめ
小さく微笑みかけてくださる
待ち人は帰った!
あなたのいるそこへと帰ったのだ
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日陰で歌うよスーパースター
前向きな気持ちに憧れて
みんな声を求めてる
あなたの風に吹かれたいんだ!
今すぐ飛び出しておいでよ
日焼けなんて気にしないでさ
もっと声を荒げてよ
あなたのそばに立ちたいんだ!
日陰で歌うよスーパースター
青空を遠目で見つめて
みんなその目になりたいと
だけどあなたの隣は冷たいんだ
高らかに歌えよスーパースター
光の境を飛び出しておいでよ
僕は夢を求めてる
あなたのライトで照らしてよ!
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剥がれ落ちた鱗
空からでも海からでもなく
人の手を伝っては
虹色の輝きは薄くなり
今ではもう
満月に反射することもなくなった
たくさんの人が嘆く
それはね
たくさんの人に出会ったから
そうやってたくさんの人の思い出になって
鱗は影になったんだよ
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夕暮れの町に
忽然と姿を現し
猫に化けて
闊歩するのは
月よりの使者
人は気づかないうちに
心のあり方を書き換えられ
乗っ取られてしまう
その何気ない行動は
支配された証
会話に含まれたそれは
伝染していくだろう
しかしそれは朝焼けには敵わない
目を奪われ
心が分解され
散っていく
人が気づかないうちに
昨日を夢のように思うのは
支配されていた証
心の書き換えによる副作用なのだろう
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北風は冷たくその身に吹き
あなたは海の向こうに思いを馳せた
豊かな心を刈らすことは
今はよくない
あなたは行かなくてはならない
今日買うべきものを買い
食べたいものを食べ
疲れたら眠らなければならない
不確かな明日のことを追いやって
枯れる前に摘もう
今はまだ美しいままの姿で
飾りつけよう
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昼のような喧騒と
夜のような脱力と
風に薫る君の髪のにおいを
書き留めておこう
まだ見ぬ海の向こうに
また太陽が昇っている
胸に抱いた摘みたてのレモン
なくさないようにと
君は過去を思っては
赤い空のふもとで
涙乾かすことも忘れて
揺れる世界を見ていた
僕が夜に生まれたなら
朝まで楽しいお話を
君が昼に生まれたなら
今は眠ってる頃だろう
風が薫る君の夢のなかで
書き留めておこう
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仮面の下に隠した思いなんて
伝わるわけがない
魔法のペンで書いた言葉に
命は宿らない
その心に刺さった針を
見せびらかすばかり
そうして増えた針に
いよいよ身の危険を感じて
いつだってそうだ
肝心なことには見向きもしないで
気の枝を振り回して
楽しいと思わなくちゃいけないと
強迫されてるんだ
さて、ファウストが立ち去ったところで
ようやく舞踏会を再開できる
さぁ、みなさん楽しんでください!
最高の舞台と
最高の音楽
滑稽なるファウストに!
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時計仕掛けの男の子は
朝焼けの頃眠りについて
ぜんまい仕掛けの女の子は
伝う涙に錆び付いて
動かなくなりました
天よりのびる光の手が
大地に根を張る季節にも
電池の切れた男の子は
目を覚ますことはありません
海より流れる白い風が
居場所を作れと言うものの
歯車の止まった女の子が
家に帰ることはありません
人が三回生まれ変わろうと
魂はないと決められた彼らが
死ぬことはありません
人がひとりもいなくなっても
魂はないと知らされた彼らが
生きることはありません
時計仕掛けの男の子は
朝焼けを知らず
ぜんまい仕掛けの女の子の
涙は乾かぬままに
宇宙が果てまで膨らみきっても
魂はないと信じ込んだ彼らが
目を覚ますことはありません