ホーム > 詩人の部屋 > さみだれの部屋 > 新着順表示

さみだれの部屋  〜 新着順表示 〜


[413] 夜明け
詩人:さみだれ [投票][編集]

その世界には何人かの友達がいた
好きだと思った子に話しかけることもできた
街を歩いた
グループで歩いていた
楽しそうに"どこに行こうか"なんて
その世界に"俺"はひとりじゃなかった
とてもいい気分だった
ずっといたいと思った

目が覚めると俺はひとりだった
仕事に行かなくちゃいけない
そうだ、仕事に行って
帰ってご飯を食べて
風呂に入ってテレビを見て
ああそうだこの世界には友達がいない
好きだと思った子に話しかけることもできない
さみしい、と心から思った


2012/03/07 (Wed)

[412] バブルの心
詩人:さみだれ [投票][編集]

触れたら弾けてしまう
バブルの心は軽いんだよ
移り気でもあるんだよ
息できるほど空気はない
バブルの心は苦しいんだよ
戸惑ってるんだよ

砂漠で彼女を見つけたら
抱き締めるでも水をあげるでもない
夜が来るまで影を作るよ
風に飛んでいかないように
前を歩きながら

人は勝手に名前をつける
バブルの心が答えないのをいいことに
触っては去っていく
触れたら弾けてしまう
バブルの心は軽いんだよ
そこにあるのも忘れるくらいに
小さなものなんだよ


2012/03/06 (Tue)

[411] 月世界
詩人:さみだれ [投票][編集]

彼は月世界から来たんだ
だって肌は白いし
言葉は通じないし
ふわふわ浮いているようだったし
女の子たちは彼に近づけなかったんだ
彼の声はひどかったからね
歌うにはあまりにも不格好だったよ

彼はいつも欲しがっていたんだ
マリンブルーの宇宙カクテルってやつをさ
海の中にありながら星が散らばっているなんて不思議だろう
大人たちは彼に言えなかったんだ
彼の知能は決してよくはなかったからね
接するのが難しかったよ

彼はバンドを組んだ
やはり歌い手は彼だったよ
おまけにギターまで弾いていた
観客は誰一人笑わなかったんだ
だけど聞いてもいなかったんだ
彼の詩はつまらなかったし
バンドは息がバラバラだったし
地球で暮らすにはあまりにも酸素が濃すぎたんだ

彼は月世界から来たんだ
それはもう嘘幻のような世界だってさ
その世界で別れた恋人の話を
彼は誰にも秘密にしていた
最後の時まで秘密にしていた


2012/03/05 (Mon)

[410] スープと垣根
詩人:さみだれ [投票][編集]

ゴミ山であなた生まれていたら?
大層自分を可愛がるでしょうね
生まれる前から温かくしてた?
そうだから他人を気にしてばかり
自分は安全地帯にいる
でもね一歩踏み出してごらん
ブレーキの壊れた誰かに
君の安全は壊されるのです
いとも簡単に壊せるのです
自分というものは


窮屈な部屋で
縮んだお下がりのシャツ着て
通販で頼んでおいた温かい人間(なりは化け物)
愛するという建前で食べてしまうんだ


よその国であなた生まれていたら
きっと知らんぷりできたでしょうね
あなたの隣で起こる奇跡や不幸
あなたの一万キロ隣で起こる神秘や絶望
こんなところに生まれてきたばかりに孤独だ
いつまでとぼけてるつもり?
かっこつけたって建前だよ
いつまでとぼけてるつもり?
曖昧なままにしておいて踏み倒すの
なかったことにしておくのです



2012/03/04 (Sun)

[409] リグレット
詩人:さみだれ [投票][編集]

私は星になりたい
あなたの星座の一番輝いてるやつ
手を伸ばせば届きそうなくらい
明るいのがいいな


俺は月になりたい
君の星座のすぐそばに居座ってやる
かき消さないほどの明るさで
君に見えるほどの明るさで


だったら私は太陽になりたい
あなたの知らない時間を過ごすの
そしてたまにあなたと会って
こんなことがあったんだよって


だったら俺は鳥になりたい
君に贈り物をするんだよ
うんと高くまで飛んで
こんなものがあるんだよって


なら私は空になりたい
そうすれば夜でも会えるでしょ
あなたが気持ちよく飛べるよう
晴れていたいな


俺は海になりたい
君がどれだけ泣いてもいいように
でかい水溜まり作って
光をあげるよ


うん




2012/03/02 (Fri)

[408] 悪魔の鏡
詩人:さみだれ [投票][編集]

悪魔の鏡
天まで届け
割れることなく
終わる物語だったなら
君が裸足で
駆けることもない
森の中を
さ迷うこともない

悪魔の鏡
欠けたひとつに
心惑わされても
優しさひとつで
溶けてしまうさ
春が来ること
知っているのさ

悪魔の鏡
天まで届け
君が雪を嫌わぬように




童話「雪の女王」より

2012/03/02 (Fri)

[407] 帰ろうよ
詩人:さみだれ [投票][編集]

ひとつ
海に帰った
泡が消えてなくなる頃
またひとつ
砂の中に隠した
足跡が消えてなくなる頃
全部
海の真ん中
楽しかったこと
辛かったこと
嬉しかったこと
唇を噛んだこと
好きだったこと
恥ずかしかったこと
安心したこと
胸が締め付けられたこと
永遠に続くこと
頬を湿らせたこと



全部
海の真ん中

2012/03/01 (Thu)

[406] アストロ
詩人:さみだれ [投票][編集]

彼女は色を変えて
悲しいけど涙を降らせて
長い長い冬を
ただただ手を温めて
終わるときを待っていた

彼女は時折影を指して
"君は楽しそうだね"
手を広げて
抱き締めてあげたいけど
"触れられないよ"

彼女は毎日のように
決まった道をなぞることしかできない
生まれたときからそうだったなら
生まれたのはどこなのだろう
人知れずそこにあって
消えていくだけなの?

彼女は熱を帯びて
楽しいけど手を振って
裏返しにした気持ちの奥
ただただ胸を押さえて
再び会うときを待っていた



この切なさを
人は拾えるだろうか
この美しさを
讃えられるだろうか

2012/03/01 (Thu)

[405] 幸福の座標
詩人:さみだれ [投票][編集]

幸せって孤独だね

自分以外のそれを知る術がないんだから

今、あなたが抱いているその猫はどう思ってるかな

今、あなたと歩いているその犬はどう思ってるかな

今、あなたとメールしているその人はどう思ってるかな

今、あなたに育てられてるその花はどう思ってるかな



幸せって孤独だね

誰もみんな心を知らないんだから

ただ無邪気に幸せを求めるだけだから



幸せって孤独だね

その上で幸せを妬むんだ

何も悪いことじゃないよ

その上で幸せを求めるんだ

いつか終わると知っていながら





2012/02/29 (Wed)

[404] ベーゼ
詩人:さみだれ [投票][編集]

寝ても覚めても
あなたが笑顔を絶やさぬよう
歩いても止まっても
あなたが涙をこぼさぬよう

暗い夜にも太陽を
あなたが穏やかな気持ちでいられるよう
冷たい朝にも月を
あなたが昨日を忘れぬよう

静かなるときも忙しいときも
あなたが愛するものを愛せるよう

くだらない世も拙い詩も
あなたが息を止めないよう
聞こえなくても聞こえても
あなたが信じるものを信じられるよう

私はあなたに寄り添おう

2012/02/29 (Wed)
941件中 (531-540) [ << 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 >> ... 95
- 詩人の部屋 -