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さみだれの部屋  〜 新着順表示 〜


[395] 無題
詩人:さみだれ [投票][編集]

死を受け入れられるとき
影を潜めるのです
その幾つかの高らかな塔は
天国に届くことなく
影を潜めるのです

終わったことを喜ぶとき
影を潜めるのです
久遠の楽園の下に広がるは
与えられた概念に苦しむもの
それらは息を潜めるのです

暗くなりはじめました
迷子の案内は10分おきに聞こえます
照明がひとつ
店がひとつ
影を潜めるのです
それでもなお続くアナウンスに
誰が気づいたでしょう
みな影を潜めるのです


2012/02/15 (Wed)

[394] 無題
詩人:さみだれ [投票][編集]

ぜんまい仕掛けの猫が一匹
ちっとも進まないのに歩いています
一メートル先のにぼしに
食らいつこうと懸命に
ぜんまい仕掛けなものだから
ついに止まってしまいます
回してあげて、と祈る私は
幽霊のような神様です
しかしどうしてか全能ではありません
なので人間を作りました
あの猫が止まらないようにぜんまいを回してあげましょう
神様の命令は絶対なので
人間は仕方なくぜんまいを回しました
猫がまた歩み始めましたが
やはりちっとも進みません
私は人間に言います
猫のお尻を押してあげなさい
神様の命令は絶対なので
人間は仕方なくお尻を押します
しかし人間は意地悪でした
猫は大好きなにぼしの前
あと一歩だというのに届かず歩き続けます
私は人間に天罰として
空腹を与えました
同時に優しさも与えました
そしてようやく猫はにぼしにありつけたのです


2012/02/14 (Tue)

[393] 無題
詩人:さみだれ [投票][編集]

詩に焼き付ける言葉の一つ一つが
蛍光灯の前で踊っている
はしっこで立ちすくんだ言葉は
主役になれないと家で泣いていた
それを見た言葉の重鎮は
詩をひとつ見せた
古い時代の叙情詩は
輪になって踊っている
火の下で手を繋いで

泣いていた言葉は泣くことをやめた
言葉の重鎮は言う
"神様が変われば人も変わる
ただ忘れてはならないのが
私たちはどれほど長い月日が経とうと
変わらず伝えられていく
今日のことも
人が生きてさえいれば
お前たちはいつか幸せになれる
いつか主役にもなれるだろう
お前の存在こそが欠かせない詩だ"

詩に焼き付ける言葉の一つ一つが
豆球に照らされ踊っている
輪になって踊っている


2012/02/14 (Tue)

[392] 無題
詩人:さみだれ [投票][編集]

他人を解することができない
だって私しかいないんだもの
心の中
投げ渡された紙くずに
書かれた言葉を燃やしてやる

どれだけ着飾っても無駄だよ
だって私にはわかるんだもの
頭の中
差し出された手の醜さに
心からの皮肉を込めて握り潰してやる

この詩が何であれ
私のもの
誰がどう望もうと
つまらない白紙よりはよっぽどマシだ
くだらない妄言なんて永遠に空をさ迷ってろ

2012/02/07 (Tue)

[391] 無題
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銀河の隔たりが
そのまま私たちの心となり
星の生まれる様が
そのまま私たちの産声となった
重力すら飲み込む恋をしてる
あの輝きの向こうで
ひたむきに愛することで
私は一等星となる
優しさひとつで
星座にだってなれるし
太陽にだってなれるかもしれない
ただ涙が落ちるのを
掬ってやれないだけだ

あなたと手を取り合うことで
ひとつの輝きとして認められ
私が歩み寄るだけで
たくさんの傷を与えるけど
いつか年をとって
誰も傷つかない場所で
ひっそりとまた次の生を思うんだ
卵の中で静かに待つんだよ
似たような卵をいくつも重ねながら
生まれるんだよ
どこか銀河の端で

2012/02/06 (Mon)

[390] 無題
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遠い秋の頃
訪れる冬に躍る胸もない頃
夢を見ていた
懐かしい未来の夢を
たくさんのことを真似て
自分らしさを得た頃
銀世界から誰かが語りかける
その声が怖かった
ただ逃げたかった
だから殺してほしいとせがんだ

その場しのぎの優しさが役に立たないことを
私は知っている
遠い秋の頃
訪れる冬に抱く腕もない頃
祈ったよ
優しくできるように
冬が過ぎて
春が駆けていき
夏がすがる
二度目の秋にはわかったよ
優しさなんてものは
自分のためでしかないと
知ったんだよ

2012/02/03 (Fri)

[389] 世界が終わる夜に
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夕暮れのバスに乗って
虹のふもとで降りましょう
白い犬が尻尾をふって
"三日月みたいだね、君は"
ペルシウス腕まではまだ遠いから
少しだけ目を閉じて
あなたのことをひとつ
そうひとつでいいのです
心静かに祈りましょう
年老いた星が最後に輝いたとき
人工衛星は家に帰りました
手を繋いで一緒にいたのは
三日月みたいな子
気持ちがばれるようになったら
たどり着いたってこと
青い光
赤い暗がり
白い幻
黒い時間
太陽が振り向けば
紫の絨毯広げて
隣の犬や猫や恋人を誘って
太陽が微笑んだら
もうおやすみしましょう
いけない僕らはおやすみしましょう

2012/02/02 (Thu)

[388] 無題
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クマさんは考えました
"あれ?もしかして生きることって食ったり寝たり交尾するだけじゃないのかも…"
クマさんは今年で10歳になります
みんなからはクーちゃんと呼ばれ慕われています
クマさんは聞いてみました
「佐々木さん。生きることって食ったり寝たり交尾する以外に何かあるの?」
佐々木さんと呼ばれたアライグマは"何言ってんだ"とばかりにため息をつきます
「あのなぁ、そんなこと考えてても仕方ねぇだろ。人生ってのは何にも考えず、本能のまま生きるのが一番。それが生きることだバカ野郎」
クマさんは首をかしげます
「だとしたら、僕は損をしてるのかな」

そこは檻の中
動物たちが与えられた明日を生きる世界
クマさんは15歳になるまで考えました

2012/01/30 (Mon)

[387] 無題
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魔法が解けたら
カラスが空へ
夕焼けの方へ
飛んでいった

星がポツリと
いつの間にか
最初からいたかのように

瞳の中には
あの人魚の鱗が
涙を流すように
海へ向かうように

魔法が解けたら
子供たちは走って
見守ることもできずに
いつも
月がきらりと
輝き出した
最初から輝いていたかのように

明日がどうか
終わりませんように
ひとつ祈って
消えていく

2012/01/28 (Sat)

[386] 無題
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羊が黒いのに変わったとき、私は眠った
おそらくキリのいい数字だったのだろう
夢の中ではいよいよ世界の終わり
夜明けと共に魂ばかりが漂流するらしい
季節はわからない
花を知らないから
太陽が沈み、月に祈りを捧げ
一日を終える
そればかりしか私にはできない
インスタントは苦手だ
世間でいう正確な時間を知らないから


羊の代わりに音楽をかけた
その時初めて私は世界と繋がった
あなたと同じ時間になれた
夢の中では相変わらず世界の終わり
魂には意思だけがあり
それ以外には何もない
悲しい物語だった

2012/01/28 (Sat)
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