詩人:さみだれ | [投票][編集] |
詩に焼き付ける言葉の一つ一つが
蛍光灯の前で踊っている
はしっこで立ちすくんだ言葉は
主役になれないと家で泣いていた
それを見た言葉の重鎮は
詩をひとつ見せた
古い時代の叙情詩は
輪になって踊っている
火の下で手を繋いで
泣いていた言葉は泣くことをやめた
言葉の重鎮は言う
"神様が変われば人も変わる
ただ忘れてはならないのが
私たちはどれほど長い月日が経とうと
変わらず伝えられていく
今日のことも
人が生きてさえいれば
お前たちはいつか幸せになれる
いつか主役にもなれるだろう
お前の存在こそが欠かせない詩だ"
詩に焼き付ける言葉の一つ一つが
豆球に照らされ踊っている
輪になって踊っている
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他人を解することができない
だって私しかいないんだもの
心の中
投げ渡された紙くずに
書かれた言葉を燃やしてやる
どれだけ着飾っても無駄だよ
だって私にはわかるんだもの
頭の中
差し出された手の醜さに
心からの皮肉を込めて握り潰してやる
この詩が何であれ
私のもの
誰がどう望もうと
つまらない白紙よりはよっぽどマシだ
くだらない妄言なんて永遠に空をさ迷ってろ
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銀河の隔たりが
そのまま私たちの心となり
星の生まれる様が
そのまま私たちの産声となった
重力すら飲み込む恋をしてる
あの輝きの向こうで
ひたむきに愛することで
私は一等星となる
優しさひとつで
星座にだってなれるし
太陽にだってなれるかもしれない
ただ涙が落ちるのを
掬ってやれないだけだ
あなたと手を取り合うことで
ひとつの輝きとして認められ
私が歩み寄るだけで
たくさんの傷を与えるけど
いつか年をとって
誰も傷つかない場所で
ひっそりとまた次の生を思うんだ
卵の中で静かに待つんだよ
似たような卵をいくつも重ねながら
生まれるんだよ
どこか銀河の端で
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遠い秋の頃
訪れる冬に躍る胸もない頃
夢を見ていた
懐かしい未来の夢を
たくさんのことを真似て
自分らしさを得た頃
銀世界から誰かが語りかける
その声が怖かった
ただ逃げたかった
だから殺してほしいとせがんだ
その場しのぎの優しさが役に立たないことを
私は知っている
遠い秋の頃
訪れる冬に抱く腕もない頃
祈ったよ
優しくできるように
冬が過ぎて
春が駆けていき
夏がすがる
二度目の秋にはわかったよ
優しさなんてものは
自分のためでしかないと
知ったんだよ
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夕暮れのバスに乗って
虹のふもとで降りましょう
白い犬が尻尾をふって
"三日月みたいだね、君は"
ペルシウス腕まではまだ遠いから
少しだけ目を閉じて
あなたのことをひとつ
そうひとつでいいのです
心静かに祈りましょう
年老いた星が最後に輝いたとき
人工衛星は家に帰りました
手を繋いで一緒にいたのは
三日月みたいな子
気持ちがばれるようになったら
たどり着いたってこと
青い光
赤い暗がり
白い幻
黒い時間
太陽が振り向けば
紫の絨毯広げて
隣の犬や猫や恋人を誘って
太陽が微笑んだら
もうおやすみしましょう
いけない僕らはおやすみしましょう
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クマさんは考えました
"あれ?もしかして生きることって食ったり寝たり交尾するだけじゃないのかも…"
クマさんは今年で10歳になります
みんなからはクーちゃんと呼ばれ慕われています
クマさんは聞いてみました
「佐々木さん。生きることって食ったり寝たり交尾する以外に何かあるの?」
佐々木さんと呼ばれたアライグマは"何言ってんだ"とばかりにため息をつきます
「あのなぁ、そんなこと考えてても仕方ねぇだろ。人生ってのは何にも考えず、本能のまま生きるのが一番。それが生きることだバカ野郎」
クマさんは首をかしげます
「だとしたら、僕は損をしてるのかな」
そこは檻の中
動物たちが与えられた明日を生きる世界
クマさんは15歳になるまで考えました
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魔法が解けたら
カラスが空へ
夕焼けの方へ
飛んでいった
星がポツリと
いつの間にか
最初からいたかのように
瞳の中には
あの人魚の鱗が
涙を流すように
海へ向かうように
魔法が解けたら
子供たちは走って
見守ることもできずに
いつも
月がきらりと
輝き出した
最初から輝いていたかのように
明日がどうか
終わりませんように
ひとつ祈って
消えていく
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羊が黒いのに変わったとき、私は眠った
おそらくキリのいい数字だったのだろう
夢の中ではいよいよ世界の終わり
夜明けと共に魂ばかりが漂流するらしい
季節はわからない
花を知らないから
太陽が沈み、月に祈りを捧げ
一日を終える
そればかりしか私にはできない
インスタントは苦手だ
世間でいう正確な時間を知らないから
羊の代わりに音楽をかけた
その時初めて私は世界と繋がった
あなたと同じ時間になれた
夢の中では相変わらず世界の終わり
魂には意思だけがあり
それ以外には何もない
悲しい物語だった
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人間はみんな心に化け物を背負っている
化け物を抑えつけるだけで精一杯の毎日を送っている
人間はみんなその化け物がいつ暴れだすか恐れている
牙を向いて心が食いちぎられないように餌を与えながら
笑っているんだろう
血の涙を流しながら
黙ってそこに座っている
人間はみんな化け物の名前を知らない
たくさんの言語、文化、学問が生まれたというのに
名前で呼ぶことを恐れている
人間はみんな化け物を見たことがない
それぞれがそれぞれの好きなようにイメージすることで
化け物を恐れないように
子供の頃に見た夢の中で
化け物は何も言わず
ただ飲み込もうと
俺を取り込もうと
泣くことも忘れて逃げていた
今日、化け物に水を遣った
化け物はやはり何も言わず
昨日、化け物に目を遣った
化け物はやはり何も言わず
ただ静かに俺を飲み込んでいる
ゆっくりと
確実に
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悪魔の尻尾をもった子供は
夜が明けないうちに魔王にさらわれるよ
知らない部屋の中で
友達になれそうもない猫が丸まって
行き場のないさみしさが
いよいよ羽を生やしたよ
飛べるほど部屋は広くないし
声を出しても猫は喋らないし
角が生えたら終わりだよ
もう元には戻れない
魔王はそんな頃合いを見計らって
外へ放り出すんだ
それはだだっ広い大地と
ひたすら夜ばかりが続く世界
こんなところじゃなかった
悪魔のような子供は
もう元には戻れない
この世界の楽園には程遠い
見知らぬ地へ去っていったよ
僕らの声も聞かず
去っていったよ