詩人:さみだれ | [投票][編集] |
優しい声
窓辺の花瓶
"最後の時間より
最初の時間が好き"
見えない星の
知らない引力
髪がふわり
ひとりきりの喜び
優しい声
聞かせてよ
ひとりきりの喜び
何より好きにならなくてはいけないもの
あるはずだろう
波のような像
泣いているの?
"最後の時間が始まるね"
枕元の時計が
電池を切らしたように
あなたはふざけて疲れた
ピエロのように
眠ったあとに始まるよ
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夕暮れの角砂糖は
コーヒーに溶けていく
夜明けは夕暮れに似て
苦くて飲み干せない味だけど
きっとミルクを足せば
受け入れられるだろう
なのに昼と夜は似ても似つかない
出会うことすら禁じられた
悲しい生き物だね
それはだって僕らが悲しいから
諦めちゃってるから
羽をひろげても
飛ぶことはない空の下
羽を欲しがっても
得られない雲の下
ああ、こんなにも足は泥んこになって
今すぐにでも太陽や月に逃げ込みたいのに
海の音が聞こえる
誰も帰らない夕暮れに
居場所があれば
遠い国に行けたら
好きな人がそばにいたら
もうすぐ夜になる
いつのまにか月が出ている
真っ白なグラニュー糖に
安いダイヤを散りばめて
いつの日か君にあげよう
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いつまでも変わらないで
涙も笑顔も見せて
どこまでも連れていって
足がくたくたになるまで
その頬には慈愛の象徴
優しくなろう
全部包めるくらい
その優しさに見合うほど
優しくなろう
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オレンジジュースの海に
船を浮かべて
詩を書いていた
満月の兎は
それを見て
いつも笑っていた
出来損ないの神様の
玉座に書いた落書きは
詩でもなく愚痴でもなく
ただ美しいものとか
素晴らしいものとか
そんなありきたりなものを
書いたような気がする
グレープジュースの海に
涙を浮かべて
詩を書いていた
太陽の羽が
ふわりと落ちて
これでいいんだ
そう思った
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なんとなく毎日をだらだら生きてるのがね
たまらなくしんどいわけよ
気が付けばなんたらかんたら
そんなことばっかり
できるならエスカレーターとかエレベーターとか
気づくことなく生きていけたら
もう最高だろ
今までそうだったんだよ
先が見える人生だったよ
保育園、友達できるんだ
幼稚園、遠足いくんだ
小学校、卒業するんだ
中学校、卒業するんだ
高校、卒業するんだ
ね、そんな感じだったわけ
それが急に「サバンナだよ。どこにでも行きなよ」なんて言われたら
まぁテンパる
慌てて行き先入力して
ワープしたら最後
死ぬまで続く旅
目標とかない
ただ歩くだけの旅
そんなもんです
私とは
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想像の星に
彼らは生きている
種から生まれた羊の群れや
分裂する草花
蒸気の町
ベッドの中の掟
それが乖離の宇宙にできた
彼らの生活
心はひとつ
神様のものだ
幸せならみんなで踊り
悲しいならみんなで泣く
だから彼らは争わないし
愛することもしない
他人を理解することもしないですむ
自分というものに臆することもない
想像の星に
彼らは生きている
乖離した宇宙に
それらは生まれている
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見慣れた町並みに
影が落ちたの
知らないふりしてたね
つまらなそうにガムを膨らませて
隠した陽の欠片
墓場まで持ってくのかい
だってそうでしょ
あなたがいけないの
私は正しいことを言ってるわ
どうしてわからないの
突きつけられた遺書
滲んだ字だった
その原因を考えず
ただネクタイを締めるのに時間をかけて
大事なことなんて
そこいら中にあるというのか
この世界
その人間
あの心
どうかわそう
そればかり
受け入れる器なんて
他のもので埋まっちまってる
そうだろう?
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人は変わって
僕はいつまで
この場所で変わらずにいるのだろう
夢見ていた
楽しい毎日も
当然のように終わりを告げる
それは夜明けの
明星のように
忘れられてしまうものだろう
この月影を
見ているのなら
声を便りに送ってほしい
手の中に隠れるほど
ちっぽけな光を
集めて君に送るから
人のように
僕の心が
誰かの胸へと向かうのなら
手放せないと
言ってもらえるほど
素晴らしい心に
どうかなりますように
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暗い部屋の中
ふたりきりの夜
誰にも知られない
会話をひとつ、ふたつ
枕元に星を
光を置いたまま
終わることはないと
思っていたのに
世界の心の中
幸せなつながり
終わることはないと
思っていたのに
何かがそっと
幕を下ろしたの
何かがそっと
心を閉ざしたの
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あなたが求めるような恋の詩を
私は書けそうにありません
あなたが感じているような社会のいざこざを
私はよく知りません
あなたが求めるような生活の詩を
私は書けそうにありません
あなたが信じている物語を
私は読めてはいません
黄昏の君を呼び止める
そんな自信があるのなら
呼ぶより先に手をとろう
そんな希望があるのなら
あなたが求めるような悟りの詩を
私は書けそうにありません
あなたが宿している感情を
私はよく知りません
あなたは理解を欲した
私は理解されずに
風にもなれない残り香が
あなたの忘れ物