詩人:さみだれ | [投票][編集] |
森の奥で
眠っている子
その首には
レイをしてる
知らない動物が祝福した
知らない幽霊がアーチで道を作った
さぁ行くんだよ
手をとって
木漏れ日から抜けて
森を背に
いってきます
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レコードの針が
飛び出す頃には
私はきっと
変わっているはず
手の中の本が
破れないように
優しくそっと
ページをめくってる
この物語が
終わる頃には
雲が白みはじめて
色んなことが見えるはず
レコードの針が
飛び出す頃には
私はきっと
帰ってくるはず
明るいときには
読めない心も
今夜はきっと
読めるはず
その物語が
終わる頃には
みんな起き出して
色んなことが見えるはず
だから
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涙は地下に
乾いた唇は海に
キスはだめ
命を削るわ
ごめんね
あなたのために泣けないの
つまりあなたは悲しく映らないの
喜びは屈折し
感情はバランスを無くし
繋ぐのは嫌
この手はあなたのものじゃないの
私のための手なんだから
出番を終えた雑貨
新しいものはそこに
いつもそう
魂なんてないのね
ごめんね
あなたがいなくてもいいの
だってあなた幽霊みたいなものでしょ
いるときはいて
いないときはいない
むなしい生き物なのよ
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散らばった本
晒された月の痴態
うっとうしいカーテン
緑の曲線
与えられた赤と
掘り起こした青で
夕日を沈めた
今日も会いに来る
ひとりきりの逢瀬
抱擁する
一緒にいよう、と
タナトス
夢や現実を剥がしてくれ
理想や虚言を裁いてくれ
ことあるごとに僕を
抱きしめ惑わしてくれ
タナトスよ
確かな実像をあやふやになるまで粉々に
僕を星だと罵り
その身を寄せてくれ
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自分には何もないんだろう
生きてる価値すらないんだろう
死んでいいなら、いいよ殺して
夜が明ける前に
心がちぎれるよ
体から、ゆっくり
それは魂?
星になるんだろうか
認められることも認めることもなく
与えられることも与えることもなく
壁が迫る夢と
鳥を撃った音と
水面を跳ねた石が
笑いにきた
理想や現実が
泣きついてきた
悪いけど
全部、ゆめ
見たことない、ゆめ
詩人めいた、ゆめ
死にかかった、ゆめ
恋をしたような、ゆめ
番狂わせの、ゆめ
闇のような、ゆめ
幸せだった、ゆめ
傷のついた、ゆめ
光るような、ゆめ
羽が生えた、ゆめ
落ちるだけの、ゆめ
帰りたい、ゆめ
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単純なことは寝かしつけよう
難解な言葉忘れてしまおう
単純な心遊びに連れていこう
難解な僕はお留守番さ
もぬけの殻
自由だ
単純なことは寝かしつけよう
難解な言葉はベッドの下
単純な心窓を叩いてる
もぬけの殻
自由だ
テレビの前
断続的な赤、青、緑
単純なことが落ち着いてくれない
難解な言葉クローゼットの奥
単純な心
今にも怒り出しそうな
単純な心
今、もうシーツに包まって眠った
眠った
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世界地図の真ん中
飛び出した僕ら
太陽が笑う
無謀だ、やめときな
丈夫な船と
いくらかの食料
いつだって僕ら
帰ってこれるさ
簡単な旅
光の航路
見送りも後腐れも
置いていくんだ
最高の旅
コンパスはプリズム
なんてことはない
いつだって帰ってこれるさ
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鏡の中
眠らず独り言
楽しかった?
奴は言う
しみったれた顔
月は半分
片方の目が睨み
もう片方は闇の中
閉じられた窓
それは背景
虹色の蛇
それは輪郭
開けて出られない
鏡の中
飛び散る破片
欠けた奴
ない
言葉もない
眠りもしない
朝が来るまで
息を止めて
ねぇ
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弟は生まれたばかりの
純粋無垢なその手を伸ばす
君は遠くへ
庭も川も国も越えたところへ
向かうのだろう
姉は夜な夜な泣いてる
階段の下で歯を食い縛り
あなたは閉じ込められてる
ように思っているけれど
大切だから開けられないんだ
母は布団の中で
おかえりと呟く
あなたは夢の中で
穏やかに暮らしてる
夕日のさす部屋で
父は毎朝ココアを
僕に差し出し家を出る
誰より長く外にいて
誰より大きなその手で
スプーンを回す
ああ、あれはたぶん
生まれてくる前の記憶
僕が生きた匂い
君の声やあなたの仕草
忘れちゃいけない
そんな気がするだけ