詩人:さみだれ | [投票][編集] |
鏡の中
眠らず独り言
楽しかった?
奴は言う
しみったれた顔
月は半分
片方の目が睨み
もう片方は闇の中
閉じられた窓
それは背景
虹色の蛇
それは輪郭
開けて出られない
鏡の中
飛び散る破片
欠けた奴
ない
言葉もない
眠りもしない
朝が来るまで
息を止めて
ねぇ
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弟は生まれたばかりの
純粋無垢なその手を伸ばす
君は遠くへ
庭も川も国も越えたところへ
向かうのだろう
姉は夜な夜な泣いてる
階段の下で歯を食い縛り
あなたは閉じ込められてる
ように思っているけれど
大切だから開けられないんだ
母は布団の中で
おかえりと呟く
あなたは夢の中で
穏やかに暮らしてる
夕日のさす部屋で
父は毎朝ココアを
僕に差し出し家を出る
誰より長く外にいて
誰より大きなその手で
スプーンを回す
ああ、あれはたぶん
生まれてくる前の記憶
僕が生きた匂い
君の声やあなたの仕草
忘れちゃいけない
そんな気がするだけ
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踊るような
湧き上がるような
虚ろになった
満腹になった
つれないね君も
でかすぎる夢を抱えるばかりに
小さすぎた妖精や
風のような踊り子を見失う
のらないね君も
でかすぎる夢を抱えるばかりに
空を飛んでるUFOや
闇のような怪物に触れられない
本当はもっともっと見えてたのに
遊んでるような
転んでるような
つぶれてるような
穴が空いたような
蔑ろにした
呼吸を止めさせた
つれない君
のってよ
もっともっと触れてよ
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夢見ていよう
いつまでもそのままに
空があるなら
夜も朝も来るから
夢見ていよう
楽しいことも忘れて
悲しいことも埋もれて
幸せな時間だけが
永遠に続くように
それでも君は
いつまでもそのままに
幸せもツキがないときも
大切にしてる
夢が終わる頃
何が待ってるのだろう
変わってしまっても
変わらないものがあるから
夢見ていたいと思う
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日向ではしゃぐ子供
まっすぐな流れ星
音をいくつも探して遊んでいる
陰で見守る大人
屈折する星屑
音をたてずひそやかに遊んでいる
線の上で飛んでる誰か
瞬く星空
音を大切に仕舞って遊んでいる
もう夕日が沈んだよ
雲が見えなくなったよ
ヘッドライトが邪魔して遊べない
ベッドの中で抱いた
ロボットの角が
音をたてず突いてくる
テーブルの上に並べた
夕食の残りが
音をたてず冷めていく
平らな世界に座って
ジグザグになぞった
星が音になって遊んでくれる
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くだらない
その愛欲を捨てたらもう
君は書けなくなるんだろう
くだらない
生きる喜びを見いだしたらもう
君はここには来ないだろう
価値を与えようと頑張ってみても
最初からあるんだよ
価値は
魂をすり減らして
だんだん虚無に近づいて
ついにひとつの感性を失う
おそらく俺はもう頭がどうかしてる
キチガイの懺悔
滑稽でしょ
生まれたての魂を
欲しがるあまり
ないことを悔いたわ
俺の肉を新鮮なうちに
しゃぶしゃぶにでもしてくれ
残った骨を揚げて
皿まで舐めてくれ
たぶん俺はもう頭がどうかしてる
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いくつも言葉を並べた
それなのに
たった一言が並ばない
出来上がりは見えてるのに
簡単な話
心が反対に引っ張ってるから
行きたいのに行きたくないと
子供みたいに駄々をこねるから
もう昨日は終わった
今日が始まってる
たった一言が並ばないせいで
すべての言葉が散らばった
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あの子が手を振っている
遠い日の夢の面影を背に
僕はどうしよう
何か言わなくてはいけない
踵を返して消える前に
何か言わなくては
だけど川があって
虫の声がうるさくて
太陽が嫌というほど近くて
蜃気楼のように
空を漂流する雲が
あの子をさらっていく
王子様でもない
不審者でもない
ただの雲が
あの子をさらっていく
だけど今
サンゴの森は祭りの時期で
どうやっても僕の声や
僕の体は思ったように進まない
そのうち月が巡って
一瞬の内に旅立つのだろう
あの子を見失って
後悔ばかりが巡るのだろう
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寂しくなったら
枕元のイヤホン
アルペジオのイントロ
黙りこむ室外機
そろそろ天使が
虹色の羽の天使が
やってくるころだろう
窓から飛び降りて
ティンカーベルが撒いた光の粒
ああ飛べるんだっけ
どうでもいいことばかり増えて
飛んでるんだっけ
知らぬ間に覚めていた
薄明かりの中
誰にも言えない胸の内
保存しておこう
だってこれから
虹色の羽の天使が
窓からそっと
やってくるのだから