詩人:さみだれ | [投票][編集] |
幻は言った
"もう戻れない
君の言う時間や距離は遠すぎるの"
朝明け方の雀のように囁いて
どうしたって喜べない
だから夜のままで
"月と太陽は会えないの"
君が月か
俺が太陽か
わからないと悩んだことは
無駄だったのか
消えかけてる
はじめからいなかったように
いっそ俺も幻でありたい
はじめからいなかったように
"バイバイ"
幻は言った
楽しかった夕焼けの終わりに
"お父さんいないの"
幻は言った
静謐な部屋の前で
"ずっと一緒にいようね"
幻は言った
星明かりの中、手を握って
それから…──
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やりきれない気持ちをよそに
乳房にかじりつく
世界を呪った
強い人は弱くない
弱い人は強くない
だから、食べる
くだらない日常を背に
首筋に歯をたてる
鬱陶しい!
それが本音
君たちを見る僕たちの本音
つまらないでしょ
笑っている間は何もかも忘れて
泣いている間に反芻するんでしょ
世界なんて…
そんな鼓動が空を伝って
聞こえてきたらどうしよう
世界なんて、壊れてしまえば…
そんな絵空事が地面から這い出て
足を掴まれたらどうしよう
世界なんて、壊れてしまえば、壊れてしまえばいい、いらないいらない、全部いらない!
泡まで持っていかれたよ
持っていけよ
やりきれない気持ちをよそに
手を絡ませる
世界を、呪った
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目の前に見えるものすべてが
目に見えて美しくなった!
へんてこな笑顔も
愛せるようになった
それって素晴らしいこと?
素晴らしいこと!
誰かがそう言うんだもん
僕を作ったロボットが
僕に作られてる花が
聞こえないふりしながらも
こっそり笑ってる
そんな君たちは悪だ!
それって悪いこと?
教えてよ…誰かさん!
足跡がついたよ
立ち入り禁止の芝生に
美しさを奪った?
悪いことをした?
神様はどうして自由なの
どこにもいけない僕たちは何なの
誰かが言うんだもん
決められたことは守りなさい
僕は何にも決められない
何にも言えないんだよ
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虹色の光
白い大理石の雲
歩くたびに花をそえて
前には男の子が
後ろにはお婆さん
隣には愛しい人の影
太陽は遠いまま
月だけが近くなる
呼んでる
海の底から
その声に背を押され
歩いてる
空の果てまで
身を焦がして
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届いてるかな
僕はもう送ったよ
誰にも言えない
心を少し欠いて
傷つけるかもしれない
誇りになるかもしれない
その胸にちゃんと届いてるといいな
謝ってるんだ
ほらここに紙コップが
声を詰めてるんだ
仕掛けは秘密だよ
これまでのこと
これからのこと
全部届いてるかな
もっとたくさん出せたらいいのにな
心が見当たらなくなるくらい
欠けたって送りたいんだ
もう読んでる頃かな
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ビー玉の中に
取り残されたまま
いつもの言葉も
言えなくなったまま
アスファルトばかり
歩いていたら
死んでしまうかもしれないんだ
夜の部屋はさみしい
君の背中をさするよ
どこか遠くへ
行けたならと願うけど
ビー玉を覗けば
取り残された僕が
いつもの景色に
溶け込もうとしてる
目に見えないものまで
映そうと躍起になって
くたびれて眠るんだ
夜の部屋はさみしい
君の気持ちも変わってく
幸せってなんだろう
問いかけることも忘れて
僕ら混ざってるんだろう
ビー玉の中で
いつものように
約束して守るんだ
そうやって夜を越すんだろう
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帆を張って
海を渡って
国境も越えて
青空をなぞって
心を捕まえて
逃がしてあげよう
いつか地面を歩くだろうから
嵐がきたって
海を渡って
飛んでった気持ちを
追いかけるように
涙だって
青空に吸い込まれて
小さな不安だって
風に乗って
高らかに歌おう
いつも希望だけは捨てないできたから
ざわめく波を
受けとめて
さりげない風を
受けとめて
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星になった
暖かい青に
隣に寄り添って
眠る青に
音は聞こえない
触れもしない
ただ包むように
溶けるように
星になった
冷たい赤に
隣に寄り添って
歩く赤に
どれだけ地球から
離れていったとて
引き合ってる
手を繋いでる
星になった
たくさんの中のひとつに
心があるから
ちゃんとわかる
君の重力も
その輝きも
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お気に入りのチョッキ
似合わないなんて嘘
そんなこと聞いてる暇なんてないんだから
ほっといて!
急がなきゃ遅れるんだ
お茶なんか飲んでる余裕なんてない
ほらまた時間が一秒
進んで戻らなくなった!
革靴が固くて
擦れて痛いけど
そんなこと気にしてちゃ
走れないんだ
間に合えばいいな
間に合うんだ絶対
間に合うために今
急いでるんだから!
ちょっと通してよ
お願いだから
お気に入りのチョッキ
誰が引っ張ったの!
ああ、もうこんなときに!
止まらないでよ!
ああ、もうこんなときに!
早く飛んでって!
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夢を見ていたような
淡い光の靄
目は覚めている?
手は動かないのに
今なら言えるよ
好きだと言えるよ
だけども口が
動かせないんだ
ただの物体
存在するだけ
それを認める
他者がほしいだけ
夢なら覚めていいよ
深い闇の懐
もう眠っている?
応答もないのに
息は続いてる
心は生きてる
だけども君が
見えてないんだ
夢を見ていたような
淡い光の靄
触れた手の行方
深い闇の懐
目は覚めている?
好きだと言える
だけども君が
そこにいないんだ
だから口が
動かせないんだ