| 詩人:さみだれ | [投票][編集] |
星になった
暖かい青に
隣に寄り添って
眠る青に
音は聞こえない
触れもしない
ただ包むように
溶けるように
星になった
冷たい赤に
隣に寄り添って
歩く赤に
どれだけ地球から
離れていったとて
引き合ってる
手を繋いでる
星になった
たくさんの中のひとつに
心があるから
ちゃんとわかる
君の重力も
その輝きも
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お気に入りのチョッキ
似合わないなんて嘘
そんなこと聞いてる暇なんてないんだから
ほっといて!
急がなきゃ遅れるんだ
お茶なんか飲んでる余裕なんてない
ほらまた時間が一秒
進んで戻らなくなった!
革靴が固くて
擦れて痛いけど
そんなこと気にしてちゃ
走れないんだ
間に合えばいいな
間に合うんだ絶対
間に合うために今
急いでるんだから!
ちょっと通してよ
お願いだから
お気に入りのチョッキ
誰が引っ張ったの!
ああ、もうこんなときに!
止まらないでよ!
ああ、もうこんなときに!
早く飛んでって!
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夢を見ていたような
淡い光の靄
目は覚めている?
手は動かないのに
今なら言えるよ
好きだと言えるよ
だけども口が
動かせないんだ
ただの物体
存在するだけ
それを認める
他者がほしいだけ
夢なら覚めていいよ
深い闇の懐
もう眠っている?
応答もないのに
息は続いてる
心は生きてる
だけども君が
見えてないんだ
夢を見ていたような
淡い光の靄
触れた手の行方
深い闇の懐
目は覚めている?
好きだと言える
だけども君が
そこにいないんだ
だから口が
動かせないんだ
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日向は遠い
敷居の向こう
誰かが過ぎれば
行けるのかしら
瞼を閉じた記憶
嘘でもいいから
もう一度だけ
星が見たいの
奪った光の数
誰にも知られないように
ポケットの奥へ
仕舞いこんでた
でもまだ足りなくて
誰かが過ぎるのを
指をくわえて
待っているの
日陰は涼しいけど
思い出にはならない
誰の胸にも
輝きはしない
奪った光の数
数えることもやめた
伸ばす手だってもう
疲れてしまったの
足を止めた記憶
嘘でもいいから
もう一度だけ
星が見たいの
眩しくないだけ
優しくなりたいの
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楽しいことはあっという間に
嬉しい気持ちを連れ去って
悲しいことは永遠に
さみしい気持ちを伴って
喜ばしい朝の匂いも
いつからか鉛の空気
うだるような暑さの中
風がいつもより近く感じる
楽しいことはあっという間に
悲しいことは永遠に
見えないものはすぐ後ろに
聞こえたものはすぐそばに
いつかの夢は眠らずに
今日のことは忘れずに
嬉しい涙は半分に
さみしい背中はひとつに
楽しいことはあっという間に
溶けて明日に沁みていく
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耳障りな音もない
目が乾くこともない
気持ち悪い汗もない
寒さも暑さもない
その夜には光が射して
空気のように漂う心
その頬には光が映って
行き交うものは何もない
ただひとつになったから
この世界はふたりのもの
さみしい気持ちも悲しい思いも
音もなく窓から去っていく
その夜には光が射して
もう光に溶け込んで
その髪には星を散りばめ
きらきらと輝いていた
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窓を叩く朝焼けを
鳥がなだめる晴れた日も
屋根に落ちた雨粒を
蛙が掬いとる曇り空も
拾うには遠すぎる
思いでの回廊を歩き
また君に出会うことがあっても
何色にもなれる鏡じゃなくていい
どんな色が綺麗かなんて悩まなくていい
僕の心を疑ってもいい
皺だらけになっても笑いかけてくれる
そんな君だからいいんだ
窓にすがる夕焼けを
烏が慰めるノスタルジーも
窓にすがる月影を
太陽が抱く夜のことも
捨てるには近すぎる
よくできた望遠鏡を覗き
また君に出会うことがあるなら
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夜が明ける頃に
おわかれをしよう
喧嘩してても
泣いてても
離れたらきっと
変われるよきっと
機嫌をとることも
好きになってもらおうとすることも
しなくてすむんだろうな
朝がわからなくなる頃に
よろしくの握手だ
心を探るような
見定めるような
そんな手じゃきっと
つまらないよきっと
仲良くなりたいんだよ
見てほしいから
おどけてみせるけど
これは違う
こんなの自分じゃない!
駄々をこねて求めている
涙を流して崩れていく
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君が無くした彼は
ひどくやつれたなりをしていた
気づいてなかったの?
幸せという言葉を彼が嫌っていたこと
君が愛した彼は
魂の抜けた人形のようだった
知らないとは言わせないよ
彼のものをすべて奪い取ったのだから
君は彼の目になれる?
なって幸せを見つけられる?
だめだよ
君の心も彼にしなきゃ
怖いだなんて
君は彼を愛していないの?
彼のことを知りたくはないの?
君が忘れた彼は
ひどくやつれたなりをしていた
荒んだ心か空っぽの心か
彼は生きた心地はしなかったのかな?
君はもちろん幸せだろうね
彼を忘れた君は
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自殺志願者の心の隙間に
手を入れて言うんだよ、君は
「死なないでね」って
それがまさか自殺志願者の心に毒のように浸透していくなんて
君は思ってもいなかっただろう
「めんどうね人間て」
そうだね、なんて賛同してしまえば僕らは恋に落ちてたのかな
だから今、君は数字以上他人以下
僕にとっては閻魔さま
はたまた神様なのかもね
そんなことが当たり前のように
記憶にこびりついていたら
君と僕の関係なんてものも
もっと早くからわかっていて
君の言葉に従いながら
生きたり死んだり楽にできたのに
「ふふっかわいいね」
とりあえず今だけは死んでも楽かな
「一緒にいようね」
とりあえず今だけは生きても平気かな
太陽のような微笑みもまた
赤い満月のような影に吸い込まれて
コウモリの羽を生やしたそれは
ゆっくりゆっくり長い爪を
心臓に見立てた心に突き入れていく
甘い蜜の夕焼け味を体に行き渡らせて
「ね、約束よ」