詩人:さみだれ | [投票][編集] |
彼女は僕の背中に寄り添い
丸くなって眠っている
トラックの荷台の中
頼りなさげなこの世界で
妹なのだろうか
そんな愛情がある気がする
また恋人だろうか
そんな愛情も混在している
彼女のほうに寝返り
腕を回して包んでやる
鼻が擦れ合う距離に顔があり
僕は目をつむる
唇に何度も柔らかい感触
彼女は悲しいのか
そんな感情が流れ込んでくる
幸せなのかどうか
彼女も僕もわからないでいる
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人を愛する心が
コーヒーを温めたら
あなたの傷んだぬいぐるみが
あなたを愛してくれたら
もっとあなたを愛せるのにと
そうでなきゃ愛せないのか
今日の終わりに囁く
自然に手を重ねる
ずっと一緒にいよう
冷めたコーヒーと
湿ったたばこが
あなたのぬいぐるみを汚して
それで満足する
愛することは
心を変えるけど
それが愛というのなら
ぬいぐるみを治そう
あなたを愛するために
ぬいぐるみを治そう
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光景は時として視界を塞ぎ
やがて訪れる雷雲を
風に撫でられながら知る
行き先を告げず飛び出し
その時開け放した扉を
今さらながら心配する
太陽は海を伝い現れた
誰もがその光景に気付かず
息をしながら眠っていた
しかし今!
朝の静けさに言い知れぬものを悟り
少女は男のそばで目を覚ます
なぜ在るのか
この上ない寂しさを少女が身に纏ったとき
光景は光のもとに移り変わり
優しく太陽が風が少女を撫でるのであった
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世界は愛に溢れている
そうあなたは知っている
雲が隠れるほどの涙を
どうか流さないで
いつでもあなたの耳に
楽しいことや素敵なことを
世界は愛に溢れている
苦しくはないよ
イヤホンも夜の闇も
ぬかるんだ泥も
それらを捨ててこその
僕とあなたなのだから
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夜がない幸せを
ずっと欲しがった
朝なんて来なくていいと
ずっと呪っていた
見なくていいものを見ることが
一番苦しくて
見たいのに見られないことが
怖くさせる
心は暗くならず
むしろ明るく照らされる
そこにあるものが嫌で
逃げ道を探す
誰かのために夜があるなら
誰かのために昼がある
だからどちらかを捨てて
生きることができる
でもどちらも知らぬ間に
手に入れてしまうものだから
今悩んでいる
思い出したくはないんだよ
だから昼をくたくたになるまで生きて
夜死んだように眠りたい
こんな詩を書くことも
夜のせいにして
叩きつけたいんだよ
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前の馬車が遠すぎて
いつまでたっても追いつけない
君が振り向くことはない
僕が振り向くことも
世界がこんな風に回るから
会えないんだとしたら
世界が回るより速く
君に追いつけばいい
なのにずっと追いつけなくて
夢でも見ているような
遠い幻影
安くないチケットで
世界は回り続けてる
止める人はもういない
君が振り向くこともない
それはたぶんいいことなんだろう
だから僕は振り向かず
追いつこうと走ってる
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することがない
そう言って天井ばかり見る
あなたの生活は見た目にはとても退屈そう
でも心の中では
渦を巻くようにのみ込まれ
砂の山にさらに砂をかけ
とても苦しそうなのです
誰も知らないあなた
あなたは救いを求めてくる
本当のことを言わない
それでどうして救えるのだろうか
頭の中では
楽しいことを夢想し
でも心の中では
羽が生えることばかり願うのでしょう
人間であることを
生きていることですら愚かだとする
なにものも、生きていない、ということを
知らないというのに
あなたは眠りにつく
夢の中では
たくさんのものや
たくさんのことが待っているのです
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虹はどこにあるんだろう
あの夢の女の子はどこだろう
心はどこにあるんだろう
そして胸が痛むのはなぜだろう
あなたを思うこと
心はどんな形だろう
雨を吸ったシャツ
あたたかいお風呂
そしてまた夢を見るんだろう
虹はまぼろし
昨日の雨が今日になってうれしくなった
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カウチに腰を沈め
来るはずのない客を待っていた
それは黄金のステッキを持ち
白い羽に憧れた同志だ
今となっては喋ることもままならない
痛ましい姿
救いを求めるのであれば
救わなくてはならない
まだ無垢で美しいその手では
できることなど少ない
心の中なら何とでもなるさ
そうもならない現実に生きているのだろう
積み重なった感情が
私をカウチに縛りつける
消えてくれない暖炉の火
安心して眠ることもできない
今、ノックが聞こえた
そんな夢を見たのだろう
白い羽が見えたような
たぶん、もう私は眠っている
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窓ガラスにすがりつくカーテン
外に出たいと泣きじゃくってる
パタパタするのが嫌なのか
君はカーテンを外してしまった
"風と恋人だったんだ"
そう言おうとしたけど言えなかった
小さい頃にカーテンに包まって
窓の外を見ていた
たぶんそのときの僕とカーテンは
同じ気持ちだったんだと思う
風が入るのが嫌なのか
君は窓を閉めてしまった
"たまには換気しようよ"
そう言ってまた窓を開けた