詩人:さみだれ | [投票][編集] |
波にかき消された言葉
砂に埋もれた指先
太陽が隠れるたび
こっそりとキスをした
思いのすべては隠しきれなくて
あなたは時折うつむくけれど
選び抜いた気休めで
僕はあなたの手に触れるけれど
星が繋いだ言葉
涙も見つかりにくい夜
風が頬を撫でるたび
肩を寄せあった
願いのすべてを聞き入れてはくれなくて
あなたは時折うつむくけれど
選りすぐりの気休めで
僕はあなたの手に触れるけれど
一日待ったかいがあった
そう笑う日が来るだろう
雨の中に佇むよりも
ずっとよかったと思える
言葉はいつも曖昧すぎて
あなたは時折うつむくけれど
言わなきゃならない一言で
僕はあなたの手に触れるけれど
世界にたったひとつの願いで
あなたが幸せになれるように
僕は流星に託した
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私の最愛の人は
いつも私の記憶の片隅で眠り続けています
揺すっても頬をつついても
決して起きてはくれません
私が浮気をしようものなら
あなたは飛び起きるでしょう
私を見つけ叱るでしょうか
私があなたを忘れたら
あなたはもう目を覚ますことなく
じっと動かないままに
私はいつか結婚をするでしょう
子供ができて
仕事もして
充実した日々を過ごすでしょう
そのときにあなたはどこにいるのでしょう
私の頭の中ですか
私の腕の中ですか
私の最愛の人は
いつも私の記憶の片隅で眠り続けています
彼女がそこにいるかぎり
私は貞操を守るでしょう
これは誓い?
ただの妄言なら
いつか消えるでしょう
いつか
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人を嫉んだり
羨ましがることがないように
シャボンに映る幻影を
風が針のように
裂いてくれるでしょう
それを私たちは決して口にはできない
高いところはそういうところ
シャボンがもしも届いたら
息を吹いて遠くへ追いやり
風に裂かせて
知らぬふりをするのでしょう
自分で吹いた泡に
人の影が映ることを
嫌うこともあるでしょう
シャボンの中に入れたなら
心にそっと聞くといい
風が針のように
空気を逃がしてしまわぬうちに
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"嘘が下手なあなたが好きよ"
俺は知ってるんだよ
君が虚言癖だってこと
だから俺は言うんだよ
"そう言ってくれる君が好きだ"
私、本当は知ってるんだよ
あなたが虚言癖だってこと
だから私は言うの
"ありがとう"
だから俺は言うよ
"こっちこそ"
好きなのかな、本当は
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夕暮れの子供たちは
楽しそうにバイバイする
風がどこからともなく
子供たちの足を速くさせる
息を切らせながら
走る姿に
草花は嬉しそうに揺れる
明日は何して遊ぼうかな
なんでもいいや
なんでも
恋慕う情も
怒りも恥ずかしさも
悲しみも
川の向こうに広がるセンチメンタルも
すべて思い出にして
生きていくのだろう
その毎日が
幸せでないとしても
その思い出が
幸せに繋がるのだと
そうやって生きていけたら
幸せなのかもしれないと
ならばそうあってほしいと
願う
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かじりつきたい
赤い林檎
まるで太陽になりたがってる
子供だね
夢ばかり見て
僕たちにも見させてくれる
楽しいことも
映るのでしょう
悲しいことも
輝くのでしょう
寂しいときは
生まれるのでしょう
嬉しいときは
笑うのでしょう
今日はどんな物語を
窓のそばで話してくれるのだろう
かじりつけば
どんな知恵を授かるのだろう
そこには月読霊が
眠らず僕たちを見ててくれる
まるで母のように
そばにいてくれる
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何でもないと
突き放してまで
得たいものは何
どうかしてる
頭の中
痛々しい妄想
想像がやりたがってる
有名を真似したがってる
息を止めたままの
溺れたようなはなたれ小僧
どうでもいいと
引きこもってまで
見たいものは何
なんかしてる
夢の中
騒々しい迷画
想像がやりたがってる
過去を塗りたがってる
息の仕方も忘れた
ベッドの中で
いついつまでもわからない
枕もペチャンコ
涙の海に
よだれの川も
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世界から扉がなくなりました
みなさん泥棒です
はたまたサンタクロースです
脱獄するかのごとく外出し
ロケットランチャーでただいまです
恋人はスカートの丈を気にしながら
恋人の家に招かれます
しかしお父さんが庭の土の中から這い出てきたので
恋人はふられてしまいました
世界から扉がなくなると
デメリットもあるのだなぁと
老人ホームの梅の木を見ながら
おじいさんは言いました
もうおじいさんほどの年になると
なかなか部屋から出ようとしません
点検口から顔を出したヘルパーは
グラスファイバーにまみれた食事を差し出します
世界から扉がなくなった!
もう教室は不良たちで溢れかえり
窓という窓
天井という天井
床や壁までも壊しまくり
校長は修繕費のことで頭がいっぱいです
しかしある人は言うのです
(もし扉があったら
みんな鍵をしてしまうでしょ?
だから私、今の世界が好きよ
色んな苦労をして
人や物事に会えると
なんだかそれらがすごく特別なように感じるし
鍵をなくす心配もないし
それに──)
世界から扉がなくなりました
今日もガラスの割れる音が
遠くから聞こえてきます
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時計が動かない
誰のせいでもない
電池を抜けば
がらくたになると
わかっていたのに
彼はいじった
戻らないことも
進まないことも
しなくてすむと
わかっていたのに
ただ在るだけのもの
当たり前のこと
彼は拒んだ
まるで蚊を払うように
地球が回らない
誰のせいでもない
年をとりすぎた
ただそれだけのこと
わかっていたのに
彼は泣いていた
太陽が二度と
部屋の中に
射し込まないこと
わかっていたのに
ただ気にしなかったもの
当たり前のこと
彼は触った
まるでアルバムに触れるように
瞑った目を
開きもせずに
暗いと泣きわめいた
時間もない
わかっていたのに
彼はいじった
まるではじめからそうだったように
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青白い星の夜
彼女は静かに眠っていた
その傍に寄り添って
僕は彼女を見つめていた
世界が止まったように
音は身を潜めて
彼女の言葉だけが
僕の耳に響いた
すべてが始まる瞬間を
すべてが終わる瞬間を
永遠にある時間ですら
彼女は作り出した
青白い星の夜
彼女は静かに眠っていた
さらさらした黒髪も
白い肌も夜に染まっていた
未来が生まれたように
彼女は目を覚まして
その言葉と心が
僕の心に溶け込んだ
すべてが青白い星の夜に
すべてがその手の温もりに
一瞬である時間ですら
僕は信じた
彼女を信じた