詩人:さみだれ | [投票][編集] |
それは君だ
他人を拒めなかった君だ
理想を追うことをやめた君だ
悲しみを拭いきれなかった君だ
他人を受け入れられなかった君だ
無いものにすがった君だ
現状に喜びを見いだせなかった君だ
これを読んでしまった君だ
着痩せした君を測り間違えたのは君だ
誰のせいにもできない
してはいけない
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白い原稿用紙に
とりあえず名前を書いた
浮いた鉛筆が
意地悪く僕の右手を刺す
どこからか花の匂いがする
だからなんとなくそれを書いたんだ
今じゃなくていい
いつの日にか見てほしかった
積み重なる消しゴムが
嬉しそうに僕の右手にしがみつく
閉じられたドアから音はなく
だからなんとなくそれを書いたんだ
(君は願います
いつか素晴らしいものにしたいと
生活も心も目に見えないものも
痛々しい傷を増やしながらも
君は願うのです)
白い原稿用紙に
とりあえず題を書いた
芯の折れた鉛筆が
嬉しそうに僕の左手から去った
何かしら書いてみたい
だからなんとなくそれを書いたんだ
(詩)
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波にかき消された言葉
砂に埋もれた指先
太陽が隠れるたび
こっそりとキスをした
思いのすべては隠しきれなくて
あなたは時折うつむくけれど
選び抜いた気休めで
僕はあなたの手に触れるけれど
星が繋いだ言葉
涙も見つかりにくい夜
風が頬を撫でるたび
肩を寄せあった
願いのすべてを聞き入れてはくれなくて
あなたは時折うつむくけれど
選りすぐりの気休めで
僕はあなたの手に触れるけれど
一日待ったかいがあった
そう笑う日が来るだろう
雨の中に佇むよりも
ずっとよかったと思える
言葉はいつも曖昧すぎて
あなたは時折うつむくけれど
言わなきゃならない一言で
僕はあなたの手に触れるけれど
世界にたったひとつの願いで
あなたが幸せになれるように
僕は流星に託した
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私の最愛の人は
いつも私の記憶の片隅で眠り続けています
揺すっても頬をつついても
決して起きてはくれません
私が浮気をしようものなら
あなたは飛び起きるでしょう
私を見つけ叱るでしょうか
私があなたを忘れたら
あなたはもう目を覚ますことなく
じっと動かないままに
私はいつか結婚をするでしょう
子供ができて
仕事もして
充実した日々を過ごすでしょう
そのときにあなたはどこにいるのでしょう
私の頭の中ですか
私の腕の中ですか
私の最愛の人は
いつも私の記憶の片隅で眠り続けています
彼女がそこにいるかぎり
私は貞操を守るでしょう
これは誓い?
ただの妄言なら
いつか消えるでしょう
いつか
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人を嫉んだり
羨ましがることがないように
シャボンに映る幻影を
風が針のように
裂いてくれるでしょう
それを私たちは決して口にはできない
高いところはそういうところ
シャボンがもしも届いたら
息を吹いて遠くへ追いやり
風に裂かせて
知らぬふりをするのでしょう
自分で吹いた泡に
人の影が映ることを
嫌うこともあるでしょう
シャボンの中に入れたなら
心にそっと聞くといい
風が針のように
空気を逃がしてしまわぬうちに
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"嘘が下手なあなたが好きよ"
俺は知ってるんだよ
君が虚言癖だってこと
だから俺は言うんだよ
"そう言ってくれる君が好きだ"
私、本当は知ってるんだよ
あなたが虚言癖だってこと
だから私は言うの
"ありがとう"
だから俺は言うよ
"こっちこそ"
好きなのかな、本当は
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夕暮れの子供たちは
楽しそうにバイバイする
風がどこからともなく
子供たちの足を速くさせる
息を切らせながら
走る姿に
草花は嬉しそうに揺れる
明日は何して遊ぼうかな
なんでもいいや
なんでも
恋慕う情も
怒りも恥ずかしさも
悲しみも
川の向こうに広がるセンチメンタルも
すべて思い出にして
生きていくのだろう
その毎日が
幸せでないとしても
その思い出が
幸せに繋がるのだと
そうやって生きていけたら
幸せなのかもしれないと
ならばそうあってほしいと
願う
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かじりつきたい
赤い林檎
まるで太陽になりたがってる
子供だね
夢ばかり見て
僕たちにも見させてくれる
楽しいことも
映るのでしょう
悲しいことも
輝くのでしょう
寂しいときは
生まれるのでしょう
嬉しいときは
笑うのでしょう
今日はどんな物語を
窓のそばで話してくれるのだろう
かじりつけば
どんな知恵を授かるのだろう
そこには月読霊が
眠らず僕たちを見ててくれる
まるで母のように
そばにいてくれる
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何でもないと
突き放してまで
得たいものは何
どうかしてる
頭の中
痛々しい妄想
想像がやりたがってる
有名を真似したがってる
息を止めたままの
溺れたようなはなたれ小僧
どうでもいいと
引きこもってまで
見たいものは何
なんかしてる
夢の中
騒々しい迷画
想像がやりたがってる
過去を塗りたがってる
息の仕方も忘れた
ベッドの中で
いついつまでもわからない
枕もペチャンコ
涙の海に
よだれの川も
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世界から扉がなくなりました
みなさん泥棒です
はたまたサンタクロースです
脱獄するかのごとく外出し
ロケットランチャーでただいまです
恋人はスカートの丈を気にしながら
恋人の家に招かれます
しかしお父さんが庭の土の中から這い出てきたので
恋人はふられてしまいました
世界から扉がなくなると
デメリットもあるのだなぁと
老人ホームの梅の木を見ながら
おじいさんは言いました
もうおじいさんほどの年になると
なかなか部屋から出ようとしません
点検口から顔を出したヘルパーは
グラスファイバーにまみれた食事を差し出します
世界から扉がなくなった!
もう教室は不良たちで溢れかえり
窓という窓
天井という天井
床や壁までも壊しまくり
校長は修繕費のことで頭がいっぱいです
しかしある人は言うのです
(もし扉があったら
みんな鍵をしてしまうでしょ?
だから私、今の世界が好きよ
色んな苦労をして
人や物事に会えると
なんだかそれらがすごく特別なように感じるし
鍵をなくす心配もないし
それに──)
世界から扉がなくなりました
今日もガラスの割れる音が
遠くから聞こえてきます