詩人:さみだれ | [投票][編集] |
ある日、それは言いました
「言葉を大事にしなさい」
ある一人の感情が
その他大勢の価値観を引っ張る世の中において
そんな話は聞くだけ無駄でした
退屈が言葉を生み出し
それに他人が価値観を孕ませ
そしてそれが悪魔の子であると知れば
優しい言葉で毒を飲ませ
死産させます
賢者たちは生まれた言葉を天秤にかけ
小さく軽いものはみんな
海へと投げ捨てられました
それは言いました
「言葉を大事にしなさい」
そう言って不適切な言葉を切り伏せ
血の海となった床を満足そうに見つめます
ある者にとってそれはとても理想的な世界でしょう
ある者にとってそれはひどく恐ろしい世界でしょう
ある者にとってそれは至極当然のことで
ある者にとってそれは異質なことでしょう
ある日、それは言いました
「言葉を大事にしなさい」
そういってまたひとつ
ことばがしにました
"言の葉"