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さみだれの部屋


[642] うつつ
詩人:さみだれ [投票][得票][編集]

痩せた細い指が
月の輪郭をなぞる
その向こうにある星を
見定めるための望遠鏡か
夢との距離を測るつもりか
しかし指は すっと落ち
地面を指したまま
それっきり動かなくなった

あざといものは言う
彼の者の死は非常に残念であったと
それは世論であった
哀悼の言葉を
あらゆる人種の
あらゆる民族が口にした

丸々と太った指が
子供を殴り付ける
他人を顧みず助け合おうと言う
主体性とエゴイズムの狭間で
気持ちよさげに漂っている

彼の者の
痩せた細い指が
あなたの輪郭をなぞる
その奥で生きる心を
捉えるためのルーペか
可能性との時差を測るつもりか
しかし指は すっと落ち
もうあなたの前に上がることはなかった

2013/01/11 (Fri)

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