ホーム > 詩人の部屋 > さみだれの部屋 > メトロポリス

さみだれの部屋


[809] メトロポリス
詩人:さみだれ [投票][編集]

彼は意思を頑なに守った
堅牢なバリケードに囲われ
金剛鋼の鎧を纏い
黙って目を瞑りながら
人は彼を引きずり込もうと
火を投げ入れたり
罵倒を浴びせたり
かと思えば流暢に世辞を述べたりもした
しかし彼はぴくりともせず
そのうち「あいつは死んでいるんじゃないのか」と
噂されるようになった

彼は意思を頑なに守った
川の流れにも動じず
どんと居座る大岩のように

人の流れの中に籠城しなければいけない
それは何を守るためか
人と手を取り合って生きなければならない
なら振り払われた手はどうなるの
意思をもって引き金を引いたあなたは
意思なんて持っちゃいない
仲良しごっこはもうたくさんだよ
有刺鉄線の向こうで
彼は静かに涙を流す

2014/04/30 (Wed)

前頁] [さみだれの部屋] [次頁

- 詩人の部屋 -