詩人:さみだれ | [投票][得票][編集] |
世界の終わりがきた
何も知らされていない男は
記念すべき雑貨屋のオープンを迎えた
しがない老婦人が外から中をうかがっただけ
飾った風船もしぼんでいった
そう 世界は終わったのだ
ニュースを見ていた彼女は慌ててバーに駆け付けた
恋人は笑うばかりで指輪をストローで弄んでいた
彼女は決めた
もっと華やかな町に行こう
そして焦がして煤となった心を
もう一度固めよう、と
そう 世界は終わったのだ
湖で泳ぐ父子は初々しい
母はオレンジを剥きながら二人を見守る
狼でさえ見ているしかできない幸せ
もうすぐ夕立が降り雨の匂いに胸を踊らせる
そう 世界は終わったのだ
時計塔から針は姿を消し
代わりに人々は恐怖するのだろう
たったひとりそれを喜んだ
郵便配達人は最後の手紙を女の子に届けた
しわくちゃの手紙を読んだ彼女は
海へ走り、祈りを捧げた
そう 世界は終わったのだ
パーティーの準備を始めよう
あの子をうさぎ小屋から出しておやり
みんなで楽しく踊りましょうよ
おいしいケーキも作ったんだから
ニュースなんて見てないで
素敵な歌を聞かせてよ
そう 世界は終わったのだ