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さみだれの部屋


[911] 無題
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幻想は雲の間に見える
たった一粒の星に等しい
私の世界にはもう
それは見えないのだろうと思う
月の位置も知らないのだから
君の表情などわかるはずがない
ここには私だけがいる
ただ
ただ

続きを失った物語は土に帰る
種にもなり得ないだろうに
見つからないように息を潜め
覗きこめば死んでしまいそうで
だからもういいんだ
ひとりきりでいいんだ

君の声がする
それは言葉だろうか
なんでもいい
寝たふりでもしていよう

幻想は雲の間に見える
一粒の星に等しい
私の手にいっぱいになるには
とても小さすぎた
それを大切にするために
君の手が必要だったんだ

魂魄の長い旅路が終わる
君の声が
ずっと聞こえていた

2017/05/29 (Mon)

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