街には気の早いアヴェ・マリアが流れてて ほんの少し前まで暖かくまだ秋が負けないように頑張っているのに 港には光に溢れた 青色のツリーがあった その前に座って ただ 何をするわけでもなく あなたの声が聴こえたかのように やっぱり声が聴きたくて ツリーの周りを目を閉じて一回り もし この場に貴方がいたら 何て言うのかしら 何をしてくれるのかしら そっと目を閉じて キスをせがむように 爪先立ち 青色の影だけは 私の影にキスをくれるのに 私は一人で空回り
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