詩人:中村真生子 | [投票][編集] |
お盆でお休みをしていた
ボランティアのカフェを再開。
間があいたせいか
「なんか調子出ないね」と
話していたのもの束の間。
やってきた
常連さんの子どもたちから
たくさんの元気をもらう。
いつの間にか
みんな調子を取り戻し
いつものように店じまい。
いつものように家路へと向かう。
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空の太陽。
川のアメンボ。
岸のクモ。
彼らは奏でる
それぞれの音楽を…。
太陽は宇宙に
七色の光を放って…
アメンボは水面を
透明な波紋で飾って…
クモは大地に
銀色の巣を輝かせて…。
奏でられた音楽が
輪と和を描きながら
夜明けの地球に響きあう。
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うだるような暑さの中に
開け放たれた窓から
涼しい風がやってくる。
ほんの一瞬…。
風は言う。
「お前を暑さで焼いたりはしない」
「だからもう目覚めよ」と。
うだるような暑さの中で
目を覚ます。
胸の上には
読みかけの『コタムリト』。
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早朝、岸辺に佇む。
1日目は日の出の
美しさに心奪われる。
2日目は水面と足元に
虫たちの営みに出会う。
3日目は川底に
砂模様の魚を見つける。
4日目は山並みの
美しさに魅せられる。
同じ頃
同じ場所に佇みながら
心に映る風景は
少しずつ違ってくる。
第一印象から細部へ
細部から深部へ
深部から全体へ。
印象は少しずつ食べられ
心の一部となっていく。
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夜明けは思い出させる
初めての頃を。
その柔らかな光で
少しずつ世界を染めながら…。
夜明けは思い出させる
初めての頃を。
そのきらめく光で
すべてをときめかせながら…。
初めての頃
朝日が大地を染めるように
心はバラ色に染まった。
初めての頃
朝日が川面を輝かせるように
心はキラキラと輝いた。
夜明けはいつも思い出させる
初めての頃を。
そこに佇めは惜しみなく。
夜明けはいつも
初めての夜明けだから…。
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母なる大地から
生まれたばかりの太陽は
赤子のごとく瑞々しく…。
やがて高みを目指して
父なる空へと駆け上がる。
幼子のように瞳を輝かせながら…。
そして先祖の眠る彼岸へと
伏し目がちに沈んでいく…。
その間に
生きとし生いける
すべてのものを育みながら…。
だたそれだけを
毎日毎日行うことで…。
鳥は舞い
魚は跳ね
あるものは糸を垂れ
またあるものは走る。
刻みこまれた
子守唄をそれぞれの胸に…。
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鼓動に似たリズムで
踏みならすは聖なる大地。
身も心も捧げるために…。
鼓動に似たリズムで
踏み鳴らすは己の心。
聖なるものに近づくために…。
踏み鳴らせ
踏み鳴らせ
光のごとくたゆまなく
風のごとく大らかに
雨のごとく激しく…。
踏み鳴らせ
踏み鳴らせ
聖なる大地に届くまで
己の胸に響くまで
それが互いにこだまするまで…。
鼓動に似たリズムで
踏みならすは聖なる大地。
人は
それぞれの大地で
それぞれの祈りを捧げながら
人になっていく…。
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昨日から久しぶりの雨。
大地の草木が
庭の花々が
瑞々しさを取り戻す。
机の上のポトスの、
新しい葉先にも水の粒。
雨は外にだけ降るものでないことを、
大気を潤すことで
すべての生き物に注がれることを、
一粒の水滴を結んで
教えてくれる。
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ほったらかしにしていた
小ぶりのトマトが3つ。
サラダに入れようと
トンと包丁を入れる。
酸味を帯びた
青くさい匂いが広がり
ミルク色の霧のように
懐かしさが立ち込める。
去りゆく夏が懐かしいのか
それとも遠い日に
畑でもいで食べた思い出か…。
夏休みに出会った友に
さようならを言う日のような、
しまって忘れていた
子どもの頃の宝物のような、
トマトの匂い…。
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海のそばの空き地の
咲き誇る露草の陰から
鈴虫たちの大合唱。
互いの季節を祝うように…。
銀色の羽色が
羽花の青の中にとけていく…。
しばし立ち止まり
祝いの末席に加えてもらう。
朝が明けていく…。