詩人:中村真生子 | [投票][編集] |
昨日、天蓋のように
空を覆っていた黒い雲は去り
青い空の下で木々が輝く。
びっしり纏った雨粒に
光を集めて…。
小鳥たちが遊びに来て
枝にとまると
銀の滴はハラハラと
流れ星のように落ちていく…。
夢の続きを見ているような
雨上がりの朝。
洗われた空気はひんやり涼しく
また少し秋の気配。
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「自由になりたい」と
あなたは言う。
けれど
見たこのない町のように
どんなところかもわからず
目を閉じて
風の囁きを聴く…。
見てきたものの言葉が
聞けやしないかと…。
けれど
行ったことのない町のように
たどり着くべき道を知らず
目を開いて
空の雲を追う…。
見てみたものの地図が
隠されてはいないかと…。
「自由になりたい」と
あなたは言う。
それがあることにやっと思い出して…。
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ビルの4階の窓に広がる
ひとかけらの雲もない青い空。
宇宙へと続く
窓の向こうの大きな窓。
吸い込まれるように
包まれるように
その青に思いを寄せる。
見えないけれど
今もそこで輝いている
満天の星々…。
見えないけれと
今も心を照らしてくれる
逝った人々のように…。
ビルの4階の窓に広がる
ひとかけらの雲もない青い空。
自らへと続く
窓の向こうの大きな窓。
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朝の光に包まれて
深い呼吸をする…。
夕べ消し残した
消すべき気持ちを
その光で消していく…。
生まれたての
やわらかな気持ちを
その光で育てていく…。
朝の光に包まれて
深い呼吸をする…。
朝日よ
今日もありがとう。
与えられた白いページに
さあ、今日の物語を綴ろう。
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敬老の日。
母へのプレゼントは
「トロピカルレッド」という色の口紅。
渡すと
「もうなくなりそうだったので
死ぬまでにもう1本買わなくては
と思っていた」と言う。
使うのは出かける時くらいだが
その回数も減ってきた。
「80過ぎですけど〜」と
お店の人と相談しながら選んだ
ほんりピンクがかった紅い口紅を
母は塗ってみながら
心にも紅をさしているのだろうか。
嬉しそうに顔が輝く。
詰め替え式になっているので
最後の1本と言わず
またプレゼントできればと願う。
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スーパーの陳列ケースで
発見したお宝は
名刀のごとく輝く銀色の秋刀魚。
買って帰り
頭と尾を落とし
三筋切れ目を入れ
塩を振り焼いていただく。
「旨い!」
細胞たちの喜びが
「この命を
決して無駄にはしまい」という
思いになって湧き上がる。
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「あれでもない」
「これでもない」と
迷いながら選んだのは
今までなら
決して選ぶことのなかった
カラフルな花柄。
最後まで競ったのは
今までなら
きっと選らんでいた
アンティーク風な柄。
モノトーンに憧れていた
あの頃…。
光の色で輝く
花たちに出会って
少しずつ心の景色に
色と光を取り戻す。
少しずつ…。
そして昨日
選んだリビングの花柄のカーテン。
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大陸からの乾いた空気が
一緒に秋を運んできた。
庭を見れば
曼珠沙華の群れ。
蕾をほんのり染めて
すくっと高い空を望む。
草むらでは
薄がしなやかな穂を揺らし
日がな虫たちは歌を歌う。
そういえば
昨日からお彼岸。
やっぱり
「暑さ寒さも彼岸まで」。