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中村真生子の部屋


[149] 転がる石
詩人:中村真生子 [投票][得票][編集]


山を離れた石は

勢いよく転がり始めた。

尖った角が山肌にぶつかると

思わぬ方向に転がり

違う角をぶつけた。

そしてまた思わぬ方向に転がり

また違う角をぶつけた。

石は飛び跳ねるように

転がっていった。

「なんて気まぐれなやつなんだ」

見ていた木が言った。

石は痛かった。

石はいろんな角を

何度も何度もぶつけた。

やがて角は角でなくなり

石はころころと

気持ちよさそうに転がった。

もう痛みを感じなかった。

あの夢のような日々が

そうさせてくれていることを

石は知っていた。



2012/06/29 (Fri)

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