受話器をおろして外を見るといつもの海。思いのほか青く涙に潤んだようなその色に海の悲しみを知る。夜からはしとしと雨が降り出し朝には風も加わりゴーゴーという音に起こされる。海も空も風も悲しんでいるのだろう。山は閉じこもり姿を見せない。けれど明日には落ち着き寄る辺なき人々の悲しみを受け止めてくれるのだろう。あなたが逝って寄る辺を失った私たちの悲しみを。合掌。
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