冬の海よなぜそんなに嘆くのだ。白しぶきを天まであげて。眩い光に満ちた春が愛しいのか。爽やかな風が走る夏が愛しいのか。思い出が静かにこだます秋が愛しいのか。冬の海よなぜそんなに嘆くのだ。白しぶきを天まであげて。いいえ、春が愛しいわけではあません。いいえ、夏が愛しいわけではあません。いいえ、秋が愛しいわけではあません。こうして嘆かざるを得ない冬が愛しいくてたまらないのです。
[前頁] [中村真生子の部屋] [次頁]