詩人:中村真生子 | [投票][編集] |
吹雪いていた雪が
ぴたりと止んだ。
積もった雪の上を歩くのは
いつもより何倍も疲れるが
ありがたいことに
冷たいけれど穏やかな闇に包まれる。
暑くなってきて
コートの前を開ける。
町に入ると歩道の雪がかかれており
その上を導かれるように
そこへと向かう。
千回以上は通ったその場所へ。
初めの頃は建物をめざし
やがてそこにいる人をめざした。
今はただそこへと向かう。
すでにそこにいる自分を
体が追いかけていくように。
雪道をそこへと向かう。
膝近くまで埋もれ歩いたありし日を
懐かしく思い出しながら。
そこへと続くこの道は
それからどこへと続くのだろう。