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中村真生子の部屋


[88] 万華鏡
詩人:中村真生子 [投票][得票][編集]


母から譲り受けた水屋の上の

ペン差しの中に

埃をかぶった万華鏡が一つ。

ビーズや折り紙は入っていない

景色を楽しむための

テレイドスコープだ。

いつからここにあったのだろう。

なにげに

手に取って埃を拭き

部屋の中や庭を見てみる。

見慣れた風景が

パターンになってアートを描き出す。

見慣れた風景の

見慣れぬ風景に

しばし居ながらにして旅をする。

薄曇りの春の朝に。

*水屋=茶箪笥


2012/04/25 (Wed)

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