母から譲り受けた水屋の上のペン差しの中に埃をかぶった万華鏡が一つ。ビーズや折り紙は入っていない景色を楽しむためのテレイドスコープだ。いつからここにあったのだろう。なにげに手に取って埃を拭き部屋の中や庭を見てみる。見慣れた風景がパターンになってアートを描き出す。見慣れた風景の見慣れぬ風景にしばし居ながらにして旅をする。薄曇りの春の朝に。*水屋=茶箪笥
[前頁] [中村真生子の部屋] [次頁]