詩人:康介 | [投票][編集] |
ねぇ 先生
どうして僕が
たった6歳上のあなたを
先生って呼び続けたかわかりますか?
情けないけど僕はあなたの名を呼ぶことが
とても照れくさくて
いつも『先生』のまま
ねぇ 先生
先生に報告することがあるのです
先生との一番最初の約束ちゃんと守りましたよ
僕 今年高校卒業したんです
停学も補習も留年も一度もしないで
無事大学生になれました
どこの大学だと思いますか?
先生の通ってた大学
先生には会えないけれど
先生の軌跡を辿ればきっと
先生を感じることができるから
ねぇ 先生
今何を想っていますか?
いつものように笑顔でいてくれていますか?
思い出に残るあなたの笑顔が
僕を今も支えています
いつも笑っていてくれることを願う
心だけでも僕のそばで
詩人:康介 | [投票][編集] |
血液のように体全体にひろがって
幸福感と昂揚感がすべてを満たす
確かめなくたってわかる
あの人が傍にくればすぐにわかってしまう
どこにいても
あの人の気配だけは必ず
どんなときだって
あの人の気配だけは必ず
こんな特別な力を持っているのは
私を魅了している あの人だろうか
あの人に恋している 私だろうか
詩人:康介 | [投票][編集] |
ずっと一緒
そうやって唱えれば
思い出だって
記憶だって
約束だって
色褪せることはないと
永遠は存在すると
信じてた
でも
変わっていくことが
生きていくことなら
なんて
なんて残酷な優しさだろう
どうして
人も想いも縛れないんだろう
生きるとはなんて残酷だろう
なんて苦しいのだろう
なんて悲しいのだろう
なんて寂しいのだろう
それでも唱え続ける僕は
なんて愚かなのだろう
詩人:康介 | [投票][編集] |
なぁ 母さんとやら
一度もあなたに向かってそんな風に呼んだことはなかったけれど
ひとつだけ ききたいことがある
僕を産んで 後悔してませんか?
産まなきゃよかったと思いませんでしたか?
僕はさ あなたがいなくてもそんなに寂しくはなかったんだ
でも
一度でもいい
一度でもあなたに名前で呼んで欲しかったんだ
嘘でもいい
本心じゃなくてもいいから
産んでよかった 生きてくれてよかった
そう 言って欲しかった
生まれてよかった
そう思える自分になりたい
写真に残るあなたの笑顔をみる度に思うんだ
あなたが命を賭してくれた分 僕は生きようって
母さん
僕を産んでくれてありがとう
詩人:康介 | [投票][編集] |
父からのハッピーバースデイ
義母からのハッピーバースデイ
兄からのハッピーバースデイ
姉からのハッピーバースデイ
義兄からのハッピーバースデイ
友達からのハッピーバースデイ
先輩からのハッピーバースデイ
恩師からのハッピーバースデイ
直接やメールや電話や手紙で伝えられる今日は
僕にとってバースデイでしかなくて
今日はあの人の命日だから
ハッピーじゃねんだ
ハッピーにはなれないんだ
うまく笑えないよ 楽しめないよ
ありがとうって言いたいのに
ありがとうとは言えないんだ
詩人:康介 | [投票][編集] |
自分はいつもいつも加害者だと
自分はいつもいつも悪者だと
それがどうしたと彼女は言った
部屋は吹雪で揺れて
僕はストーブに火をつけたくて
でも彼女が融けてしまうから
スイッチを押す手を引っ込めた
自分はいつもいつも邪魔者だと
自分はいつもいつも迷惑者だと
それでもいいと彼女は言った
僕は何を言いばいいのかわからなくて
彼女を抱きしめたくて仕方なかったけど
熱をもつ僕は彼女に触れることすら許されなくて
抱きしめるべき手を引っ込めた
自分はいつもいつも嫌われるけど
自分はいつもいつもそれに耐えてきたけど
君にだけは嫌われたくないと彼女は言った
熱と寒さに震える僕を
彼女は優しく抱きしめた
涙を流すように少しずつ
彼女の存在は融けて消えていった
僕は消えた彼女を掬おうと
冷たい水溜り手を伸ばして
その濡れた掌で冬の空を抱きしめたんだ