何もない空間
鳴り響くは一つだけ

閉じ込められた亡者の嘆き
生ある者が死者の烙印を捺され

出口のない空間を削れた爪で
カシカシと引っ掻き続ける

右斜め上に何があるのか
君の視線に合わせてみるけど
僕には何にも見えなくて

右斜め上に誰かいるの？
君は微笑んでそこを見ていて
僕にはやっぱり見えないよ

右斜め上で視線を交わらせてみたいけど
君はいつしか視線を外すから
いつも最後は僕が空中を見ているんだ

君で埋まる発信履歴

君で埋まる着信履歴

君で埋まるメールフォルダ

君で埋まるデータフォルダ

全ては君が支配している

君の携帯はきっと私が支配しているだろう

あなたの紅を頂戴
脈打つ心臓や流るる血液
その唇や粘膜、内臓も

全てを頂戴
噛み砕いてあげる
そしてあなたは私だけのものになる

護ろう
私の姫を

私を愛さずとも良い
けれど護らせてくれ

貴女は私の唯一の
可愛い姫だから

はらはらと舞い落ちる
音もなくただ静かに

頼まれたわけでもなく
ただ景色を白く染める

冷たい雪を疎みながらも
誰もが本気で疎まない