詩人:胡桃(くるみ) | [投票][編集] |
聖なる夜に旅人は
寂れた教会へ行きました
疲れた顔の神父がひとり
祈りを捧げておりました
旅人は神父に近付くと
鋭い刃物を押し当てた
神父はすっかり怯え
涙を流して命乞い
そんな神父の腕の中
娘がひとりおりました
娘に刃物を向けたらば
少しも怯えず可愛く笑う
娘はめくらの可愛いこ
疲れた神父の可愛いこ
鋭い刃物で娘の目玉
えぐり出したる旅人は
不思議なことに旅人の
刃物は紅くならなくて
見ればめくらの可愛いこ
大きく目開きぱちくりと
可愛い声で笑っている
見える見えると喜んで
気付けば旅人は姿もなく
神父は夢かと疑った
けれど娘の声だけが
夢でないこと告げていた
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