詩人:人魚日和 | [投票][編集] |
「もしもし?」
相手は父親だった。
実家に帰りはするけどめったに口をきかない父が、
めずらしい
何事かと聞く前に
病院に行ったのか、
母親のなった病気と似た症状だ、
仕事や他の用事より優先しろ、
すぐに病院に行け、
いい病院がどこか、
などをたどたどしくしかし一方的に話続けた
圧倒されながらもじわじわ嬉しくなり唇の端が上がり、同時に母が病気のときどれだけ心配していたのかが伺えた
私が一言「行くよ」と言えばこの電話を切るのがわかった
私はあえて相槌をうち続けていた
何度も何度も話を繰り返す父
最後に私が「じゃあ、明日の朝に行くよ」と言った瞬間ホッとした声に変わった。
私が「ありがとう」を言おうとした瞬間電話は切れた。
不器用な父親の精一杯の優しさ。
よし、今日は早く寝なきゃ。