詩人:ℒisa | [投票][得票][編集] |
ターンテーブル脇の
銀色のクローゼットから取り出した葉っぱを
煙にして吐き出す父親
右肩の骸骨兵のタトゥーはいつも
私を怖い目で見ていた
四畳半の部屋から
逃げ出した私を
突き落とす為だけの
十一段の階段
意地悪く燃え盛るストーブは今も残る右膝の火傷
弱虫だった私は
怖くて泣く事も
出来なかった‥
教室の窓際の席
机の上の落書き
下駄箱の中の体操着
校庭の池
池の中の鯉
池の中の私
弱虫だった私は
怖くて泣く事も
出来なかった‥
逃げ込んだ神社裏の
公衆便所の中で
お稲荷さんに
お祈りをした
『このまま誰も
私を見つけませんように‥』
弱虫だった私は
怖くて泣く事も
出来なかったから‥
だけどあの頃の私は
今の私の様に
泣き叫んで自分の躰を傷付ける様な事は
決してしなかった
初めてママが
作ってくれた
可愛いウサギの手提げ袋
まだ小さかった手で
焼却炉の片隅に
投げ込まれた
その手提げ袋の汚れを叩いていた頃の
私の手はこんな風に
自分の躰を剃刀で
切り裂いたりなどしなかった
弱虫だった私は
怖くて泣く事も
出来なかったけど
泣く為じゃなく
笑う為に
ちゃんと
生きていた