ホーム > 詩人の部屋 > 山崎 登重雄 の部屋 > 息を止めて苦しくなって

山崎 登重雄 の部屋


[6] 息を止めて苦しくなって
詩人:山崎 登重雄 [投票][得票][編集]


劣等感を一枚 手首に押し当てて
名曲の最後みたいに 余韻を奏でる

赤い涙は口元から こぼれ落ちて
はねた雫が乱反射して 黒い虹が見える

親父が遺してくれた 目を閉じる薬
御袋が遺してくれた 夢を見る薬

流れ出る僕の代わりに 安い酒で
噛み砕いては胃袋に 注いで

ゆっくりと 時間が
止まるまで すべてが

自分を許せないとき いつもそうしているだけさ
生まれ変わりたくて 繰り返す儀式

こんなはずじゃなかったって
ぽつりと つぶやく

ぼやけて 何も見えない
吸い込まれてく 音のない世界

もう僕の姿は 誰にも見えない
もう僕の声は誰にも とどかない

この命 行いのすべてを
淡々と闇に暴かれて 裁かれる

すべてが終わる そのとき
静かに鐘が 鳴りわたる

人はきっと 決まった尺で生きている
もがいても足掻いても 収まるだけ

何も残らない なんにもなかった
自分の首を締めたら ただの終わり

伝えたいこと たくさんあった
やらなくちゃいけないこと ばかりだ

見続けた夢を 諦められない
もっと君のそばに いたいよ

ああ やっぱり未練があふれる
後悔よりももっと あふれる

ごめんね親父 ごめんね御袋
まだ再会には 早すぎるよね

倒れていたからだを 抱きかかえて
頑張れよって生きなくちゃって 揺り起こして

熱いコーヒーとタバコ
熱い風呂とメシ

あふれだす言葉
叩きだす詩

時間がくれば自転車にまたがって
今日も仲間が待つ店で

中年の臭い汗をかきながら
下品なジョークで恥をかきながら

働いて働いて
自分も現実も笑い飛ばして

残りの尺が どれだけあるのかわからないけど
生きる 僕は生きる

2009/09/22 (Tue)

前頁] [山崎 登重雄 の部屋] [次頁

- 詩人の部屋 -