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善田 真琴の部屋  〜 新着順表示 〜


[47] 電子瓦版
詩人:善田 真琴 [投票][編集]


江戸にて四つばかりなる女児、高層集合住宅八階の手摺りより過ちて墜落するも、顎に擦過傷負ふのみにて命に別状無かりし由。母君の束の間目を離せし隙に女児の姿なかりければ、慌てて下を見渡すに、我が娘の泣きつつ歩き居るを見付けたり。取るものも取り敢えず下に駆け降りて問ひ聞けば、ただ「落ちにけり」と泣く泣く語るばかりなり。

九死に一生を得て命助かりしは、落ちにける中途にて木の枝々に当たりて、力削げ弱まりたるが幸いしたるにやとぞ。親は如何ばかり肝を冷やし、また安堵致したる事にや。親子と云へば、片身に虐待し更に殺害と辛く暗き事ばかり多き世に、久方ぶりに聞く心嬉しき話にこそとて。

思はざる
禍さへも
福となし
いよよ深まる
親子の絆

2012/08/13 (Mon)

[46] 言霊の幸ふ国
詩人:善田 真琴 [投票][編集]


初秋の蒼穹に、一筋の飛行機雲白く細く棚引く様を、一人の稚児眺め居りしが、ふと魔が差しにけむ、「落ちよ」と呟きぬ。然れど何事も無く、長閑なる秋空に百舌鳥一羽翔び去る許りなり。

さても明くる日。家内にて大人共言ひ騒ぐやうなるを、問ひ尋ぬれば、「昨日、飛行機の墜落して数多の人亡くなりぬれば」とぞ応ふる。稚児驚きて只管黙し居るを、「あな、心根優しき子なめり」とぐるりは受け止めにけれど、その日より稚児は貝となりぬ。

月日は百代の過客にして、光陰は矢の如く、幾星霜経たるにや、吉野の山に高名なる荒修行者ありて、名をば貝の行者と号するありけり。その唇は上下を針と糸にて縫ひて口開かず、その声を聞き知る者無し。

「件の稚児これなり。かくてもあられけるよ」と巷間に俗人どもの僻事弄び噂するやうなれど、「そらみつ大和の国は押し並べて、太古より言霊の幸ふ国なれば、謹み深きも是また本朝の美風・美徳なり」と年寄共の語りにきとぞ。


言霊の
幸ふ国の
もののふは
多くを語らぬ
大和魂

2012/08/12 (Sun)

[45] 戯れ唄
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来し方、人に語り散らせし言の葉ども、或は己の為せる由無し事の草々、後々に思ひ返せば白波の、夢は現つにうち洗はれて、浮かぶかと思へば、かつまた沈みて、我ながら傍ら痛く面目なき事こそ多く侍れ。

三つ子の魂とかや、三千世界に生を受けて、最初の過ちはいづれ尽くると定まりたるに逆らひて、泣き泣き生まれ出でたる咎なれや、慾に駆られて身を焼きて、得られぬ苦しみ、得らるれば失ふ恐れに、双六の上がる伝なく下りる術なき人生遊戯、心に安棲の住処とてなし。

六道に
五里霧中で
四面楚歌
三千世界に
二物無きひと

2012/08/11 (Sat)

[44] One
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この世は
ぼくが思ってる程
複雑じゃなかった
好きと嫌い
ただそれだけ
今は無理でも
あした融け合えるといいね

あの世は
きみが畏れる程
酷くはないのかも
ひとつに混ざる
ただそれだけ
今は哀しくても
また巡り逢えるといいね

※さよならは辛いけど
産まれて来た時と同じ
不安で泣いてるばかり
でも今は笑うこと覚えて
新しい一歩踏み出せる

始まりと終わり
ただそれだけ
遣る瀬ないけれど
何時かまた逢えるといいね

※繰り返し

…融け合ってひとつになる


Orig=G

2012/07/11 (Wed)

[43] 近江紀行
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菅笠に
手甲脚絆
草鞋履き
徒歩にて回る
さざ波街道

彦根城
遠く仰ぎて
独り往く
井伊家の薫陶
香る城下を

長浜城
太閤殿の
膝元で
守られ眠る
寝袋の中

賤ケ岳
古戦場にも
陽が落ちて
風切り歩く
月をお供に

湖に
迫り出す鳥居
波荒く
新羅恋しや
白髭明神

夕暮れの
人も通はぬ
山道に
骨と化したる
屍あはれ

草枕
仮寝に波の
子守唄
近江舞妓の
真砂の浜で

大津まで
足を引き摺り
十三里
草鞋ほつれて
裸足も同然

行き遇へば
知らぬ同士も
ご挨拶
近江の衆の
習ひ尊し

豆潰れ
汚き我の
足裏も
手当て厭はぬ
茶店の老女(おみな)

木漏れ日や
今津の細き
旧道に
鴉の骸
艶青く光る

若夏の
風車街道
橋の上
うち捨てられし
大魚一匹

新品の
草鞋一足
うどん屋の
寡黙な亭主
「使え」と差し出す

控え目で
折り目正しき
近江衆
古き日本の
仕来たりを継ぐ

膳所に降る
雨に芭蕉の
墓濡れて
夢駈け巡る
元禄の頃

2012/04/27 (Fri)

[42] 沖縄紀行
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幾筋も
髭垂れ下げて
老榕樹
仙人然と
鎮座まします

身を任せ
子らのジャングル
ジムと化す
木漏れ日眩し
ガジュマルの下

妖怪の
キジムナーを
俺見たと
ガキ大将の
言ひ張りし嘘

2012/04/24 (Tue)

[41] 雨音あまねく
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万象に
落つる雨音
相和して
優しき春の
調べとぞ聴く

新緑の
葉に落ち撥ねて
弾かるる
雨の滴が
伝へる波動

雨止んで
音無き音に
冴え返る
極楽浄土
かくやあるらむ

2012/04/22 (Sun)

[40] もののふ
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仄暗き
庵に煌めく
愛刀の
播州長船
則光の銘

袈裟斬りの
空切る音も
凄まじく
業火の如き
煩悩を断つ

御簾越しに
轟き渡る
鳴る神も
いざ斬り捨てむ
降りてみよかし

2012/04/22 (Sun)

[39] 瀬田の唐橋
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春雨に
瀬田の唐橋
眺めつつ
来ぬ人を待つ
白傘の人

唐崎に
風吹きあへず
舞ふ花の
目蓋閉づれば
この胸に散る

淡海の
湖面に銀の
矢波立て
季節外れの
野分過ぎ之く

字余りの
下手な優しさ
持て余し
言葉足らずの
心が凹む

2012/04/22 (Sun)

[38] 白装束のカラス
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小賢しく
皺枯れし声で
厭はるる
鳥に一画
足らざる烏

羽繕ふ
姿形は
違はねど
カアと一鳴き
真白き烏

吉凶の
いずれか知らず
今朝も見し
白き烏の
行く末あはれ

2012/04/21 (Sat)
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