詩人:善田 真琴 | [投票][編集] |
人臭き
気配も妖し
花弁を
震はせ喋る
夜桜の群れ
左様ならと
手を振る稚児に
然り気なく
染井吉野が
頬笑み返す
土の中
秘め事めきて
根を絡め
契りも堅き
桜木二本
その下の
土に埋もれし
人あるを
誰かと問はば
花のみぞ知る
ぬばたまの
夜半の夢路も
はるさめの
花を腐せる
音にしぞ聞く
草枕
旅に眼を病み
闇の中
瞼伏せれば
花は盛りに
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パリパリと
ポテチを食べる
音がして
ふと目覚めれば
そこにいた人
間がもてず
何処へ行くの?
と尋ねれば
小倉に帰ると
朗らかな声
久々に
海が見たいと
山口の
幡生の町に
行って来たきみ
バンセイは
はたぶと読むの
笑いつつ
教えてくれた
さも得意気に
ガタゴトと
揺れる電車は
旅の空
それであなたは
何処まで行くの?
博多です
そして明日は
長崎へ
ふらり宛て無き
一人旅です
明日また
幡生に行くのと
あわてんぼ
メガネ忘れた
取りに行かなきゃ
海底の
トンネル抜けると
きみの街
名残惜しさに
言葉途切れて
それじゃと
先に降りてく
窓越しに
手を振るきみに
またねと呟く
また会える
そんな気がして
幡生へと
予定を変える
気紛れな旅
6月の
潮風薫る
漁村には
人影もなく
カラス一匹
砂浜に
風吹き抜ける
振り向けば
麦わら帽の
きみをみつけた
どうして?と
驚いた顔
照れ笑う
それが見たくて
ここに来たんだ
保母さんで
子供の話
ばかりして
かきくけクッキー
歌ってくれた
歳月は
夢の旅路に
今頃は
お元気ですか
しあわせですか
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咲く花に
きみの面影
尋ねつつ
漫ろに歩く
哲学の小道
緊張と
不安を共に
分け合って
お喋りをした
名も知らぬ人
乞い願う
袖触れ合うも
他生の縁
募る想いを
抑えかねつつ
境内に
探す姿は
幻の
影さえなくて
独り佇む
早鐘の
胸が高鳴る
南禅寺
見覚えのある
後ろ姿に
偶然の
数を指折り
繋いでは
一度きりと
結んだ縁
定めなく
巡る現世は
風の色
前に何処かで
見かけたような
縁あれば
また逢えるよと
アドレスも
聞かず別れた
花見小路で
春の日に
眠る来世は
花の色
次も何処かで
巡り逢えたら
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作品
「眠る来世は花の色」より
空青く
彩る景色は
花の色
街に息づく
春を感じて
懐かしく
囁く音色は
夢の色
古い石段
苔むす呼吸
艶めいて
小袖に匿す
肌の白
見初めた影は
紅の傘
鳥居下
巡る現世は
風の色
前に何処かで
出会ったような
参道の
土産物屋の
手鏡に
心時めく
貴女想えば
偶然の
数を指折り
繋いでは
一度きりと
結んだ縁
離れても
同じ夜空に
同じ月
今宵貴女も
見ているかしら
夢うつつ
眠る来世は
花の色
次も必ず
見つけておくれ
原詩/枝豆さん
編歌/不肖善田
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「怪之句 影女」より
影のみが
ひとがた模して
現れん
袖触れ合うも
魔性の餌食
追えば逃げ
逃げれば祟る
影踏みの
戻る術なき
六道の辻
衣衣の
一夜の契り
目醒めれば
温もり冷めし
夢の枕に
餓鬼畜生
阿修羅ともなれ
みゃあと鳴く
舌舐めずりの
黒猫一匹
原句/妙鈴堂殿
編歌/不肖善田
【脚注】
「六道の辻」
@六道へゆくという辻。
A昔、京都鳥辺山の
火葬場へゆく辻の名。
「衣衣」(きぬぎぬ)
衣を重ねて共寝した男女が
翌朝めいめいの着物を着て
別れること。また、その朝
(以上、広辞苑より)
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闇夜でも
彼は届ける
白雲の
羽衣を着た
君を照らして
尽きるまで
燃やし続ける
その命
与えることを
生き甲斐にして
あの人が
近くいると
輝ける
そのあの人に
私はなりたい
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くもり空
きみが陰って
見えるのは
ぼくが湿気て
いるからだよね
晴れた空
にっこり笑みが
溢れくる
降れば降ったで
苦笑うけど
苔色の
お気にの傘が
差したくて
土砂降りの中
外に出てゆく
濡らすなら
濡れてもいいよ
風邪を引く
そんなひ弱な
体じゃないし
お天気は
変えれないけど
気持ちなら
どうにでもなる
かかって来いや
どんよりと
淀んだ雲の
その上は
瞳閉じれば
何時だって晴れ