詩人:Tommy | [投票][編集] |
その約束、ちょっとキャンセルさせてもらえません?
行くって言ったはいいものの、
楽しそうとは言うものの、
5時集合とは言うものの、
夜から晴れると言うものの、
友達多くは見えるものの、
やっぱりキャンセルお願いします。
だって夜から晴れるのなら、私は銀閣見たいもの。
改修工事で見れなくても、
巡回ルートが混んでても、
今、銀閣見たいもの。
ダメだと言われる筋合いない。
私は行きます銀閣寺。
私は私、あなたはあなた。
次、都合があうまでは、
お互い勝手にいきましょう。
ダメだと言われる筋合いない。
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僕が欲しいと言えば、
君はいらないと言う。
かわいいねと言えば、
そうでもないと言う。
僕が美味しいと言えば、
君はまずくて食べれないと言う。
僕が面白い映画だねと言うと、
あんなのどこがいいの?と言う。
つまらないと言うと、
あなたには感性がないのねと言う。
好きと言えば、心がこもってないと言う。
何も言わなければ、もう嫌いなのねと怒る。
相手になれば、うっとおしいと言う。
相手にならなければ、
どうしてかまってくれないのと言う。
何か喋ると、黙って聞いてと言う。
何も喋らなければ、真剣に聞いてるのと怒る。
流行りの格好をすると、
自分がない人と言われる。
流行りの格好をしないと、センスがないと言われる。
いつも一緒にいると、
飽きると言われる。
しばらく会わないと、
浮気してるのと言う。
わがままを言うと、
自分勝手と怒る。
わがままだなと言うと、
なによこれくらいと怒る。
さよならと言っても、
君は答えない。
何度呼び掛けても、
君は黙って眠っている。
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ここにはもう居られない。
あっちの方に行きましょう。
行けないのか、行かないのか、どっちなんだ。
とにかく、あっちの方に行きませんか。
それから考えましょう。
臆病が鳴く前に。
僕の声が聞こえるうちに。
そうだよ。急かしてるんだよ。
ここでウダウダ言ってても、仕方がないから。
とにかくとりあえず、
行きましょうよ。
あっちの方に。
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ざらざらだ。
ノドの奥にひっかかる。
はきだせないし。
飲み込むにも、
いつになるんだろう。
ノドを通っていく感覚が
ある。
とても変だ。
これは、変な感じだ。
ああ。
髪型がきまらない。
いつものようにいかない。
イヤホンの中の虫、
潰れた。
六畳一間にセミのこえ。
持ち上げたガラスのコップがビショビショだ。
コースターがひっついてきた。
のみこめるかな。
トマトジュースが青い。
なんどでも感じる。
そのたびに飲み込む。
恥はしない。落ち込まない。
コースターが、ポロっと。
地べたに落ちるのを目で追った。
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ああ。
今見えた。
呼ぶ声の色が。
薄く青みがかった緑だ。
夜が明ける前みたいな色だ。
耳の奥の熱いものが
常温に戻っていくみたい。
顔だけがほてってる。
今、たった今見えたんだ。
何にみえただろう。
間違いない。
鍵盤をたたく音じゃない。
夜泣きの声に近い。
雨の音じゃない。
雲が割れる音に近い。
いったい、いつわかるんだろう。
理解するのは、いつだろう。
たぶんきっと、
雨がやんで、
雲の切れ間に日がさして、
あの子が泣きやんだころに近い。 近い。
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もう一回あえたら、
今度はミッシェルや、椎名林檎の話をしたいよ。
道路の溶けた雪が、
弱い日に照らされてるのでも見ながら、
暖かい喫茶店の中で、
名前もしらないブルースが流れてる。
しってる?
あの曲、実はカバーなんだよ。
もしもう一回あえたら、
もっといろんな話をしたい。
ウッドストックのビデオの事や、
最近読んだ本の事や、オノヨーコや、
好きな言い回しの事や、
70年代の事や、
今はまってる事や。
あう事は、もう無いけど、
いつか偶然、
もし、
どっかであう事があったら、
その時は
いろんな話がしたいよ。
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遠くまで架かる橋が、
じっとこっちを見ているような気がした。
昨日の夜に夢を見ました。
ローストチキンを食べる夢。
冷えきっていて、
とてもまずかったのを覚えている。
そっと髪を撫でる指。
暖かいのを覚えている。
ずっと気になってた、
おとといの
テレビに出てた女優の名前。
小さい頃見た、
よくわからない不安の正体。
全部が本当で、
もしかしたら、
半分は嘘なんじゃないか。
油性のナメクジが這う。
遠くの方のビルの配列が変わる。
嘘をつく口をつむぐ。
全部本当でしたと、
鉄塔がうなる。
文字を打つ画面の点滅が
なにかの虫に見えた。
改札の、
流れ出てくるサラリーマンに、
僕は違和感を覚えた。
これは、
グレーだ。
染み込んでいくように溶ける、
グレーだ。
ナメクジの這ったあとが、
グレーに照らされて、
くっきりと浮かび上がった、
ように見えた。
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僕は走る、走る、走る。
夜の油ノ小路。雨上り。
濡れたアスファルトに、オレンジや緑
ネオンライトのそれぞれ。
車が通るたびに跳ねる、
ジェリービーンズのかけら達。
高架下、最終電車が通る音。
工事中のライトが、
僕の顔を照らしては消える。
ゴーっと電車が
向こうの方に吸い込まれていくみたいだ。
はぁっと大きくととのえた息が、
白く噴き出て儚く消え、
たたん、と高架下に余韻だけが残った。
透き通るような冷たい空気が、
暖まった僕の体を、徐々に冷やしてゆく。
オレンジ色の街灯が、
濡れたアスファルトに溶け込んでいる。
猫背の僕は、ひどく丸まった自分の体を
初めて意識した。
すっと背筋をのばす。
ぽきっと小さく音がして、
僕がうっと言うと
白い息が少し漏れた。
向こうから、
ザァっと水溜りを蹴って、
空車のタクシーが通りすぎる。
僕はもう一度背筋をのばした。
今度は鳴らなかった。
相変わらず、工事中のライトが回っている。
僕はくるりと方向を変えて、
高架下を抜け出た。
ズッと鼻をすすって、
僕はまた走りだした。
僕は、走る、走る、走る。
夜の油ノ小路。雨上り、
ジェリービーンズが跳ねる。
工事中のライトが、ひどく気になって
ちらっと後ろを振り返る。
誰も通らない信号機が、
チカチカと青から赤に変わるのが見えた。
ついさっきまでいた所が、
もう見えなくなってゆく。
たえまなく出る白い息が、
僕を邪魔した。
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いったいどこに向かうんだろう。
誰かが僕を裏切らない。
女の子がクリームの乗った何かを食べていた。
誰かが死んで、誰かが生まれた。
その子には名前がついた。
その日その人の名前が残った。
ラジオでとても綺麗な曲をきいた。
でも僕には痛々しくて泣いてるようにきこえて
僕はたまらなくて、
耳鳴りをならして、
その声を消した。
誰かと見つめ合うということは、
誰かを無視するということ。
ぬりつぶれた隣の犬の目が、じっとこっちを見てた。
ぜんぶ自己満足だと
線路の石が跳ねた。
ロウソクから溶け落ちたロウが、
舞い上がって雪になった。
まちがって、
無くなって、
落ち込んで、
また何かを貰う。
隣の犬がクスッと笑う。
女の子が何かクリームの乗ったものを食べた。
電信柱がグニャっと折れて、
朝五時半に烏が舞った。
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伝えたい、
からよく聞いて。
つま先で歩かない。
背が高くみえるけど、しんどそう。
鬼、畜生とは遊ばない。
ん?
もっと楽に。
枯れ木も山のにぎわい。
枯れ木ばっかりの山って、
つるつるの山より、
いくらかにぎわって見えるって、
知ってた?
でも、僕なら いいや。
つるつるの方が、まだマシだ。
なんか、
さみしかったり、しんどかったり、
むりして合わせてんなら、
それ、きっと枯れ木だ。
ほんとうは、
いらないものばっかりだ。
どっちか、もう決まってるはずだ。
後押しいるなら、
してあげる。
枯れ木はもういい。
全部、すてちゃえ。
つま先だけで、歩かない。
鬼、畜生とは遊ばない。
ん?
もっと、
楽に。